検索結果 全1008作品 公開年逆順 公開年順 作家名逆順 作家名順 作品名逆順 作品名順

  • ノンフィクション 上村 信太郎 ギアナ高地の秘峰ロライマ探険記

    序 南米大陸の北東部、アマゾン河以北に拡がるギアナ高地の奥は「地球最後の秘境」とも言われているように、スペース・シャトルが宇宙を駆け巡る今日でもなお、文明の光が届かない隔絶された僻地である。 このギアナ高地の奥深く、赤道からわずか五度北に位置しブラジル、ガイアナ、ベネズエラ三国がまじわるところに、インディオが「悪魔の山」と畏れる伝説の山ロライマ(二八一〇メートル)が聳えている。この山は、すでに一世紀も前に英国隊によって初登頂され、その後、コナン・ドイルがロライマをモデルにした小説『失われた世界』を書いたことは知られていても、深いジャングルの中に

  • 俳句 上村 占魚 みそさざい

    とろとろと火を吐きにけり蛇の舌 ◇句集『鮎』より 人の顔見つつたべゐる夜食かな 潮満ちてくれば鳴きけり川千鳥 老鴬や先なる舟は瀬にかかる 球磨川下り 友死すと掲示してあり休暇明 一茶忌や我も母なく育ちたる </

  • 小説 上田 周二 深夜のビルディング

    ぼくは推理小説の翻訳の下請けなどで暮らしているいささか風変わりな中年男である。ぼくの昼間の時間は、殆んど翻訳の仕事でつぶされる。ぼくはTOKYOという大都会の裏町に、亡くなった両親から引継いだ古びた一軒の家を持ち、昼間はそのなかに閉じこもって翻訳の仕事を続ける。ぼくは世間の人たちから変わり者と言われても仕方がないと思う。なにせ、もう鬢に白いものが混じる年齢だというのに妻を娶らず奇妙な暮らしをしているのだから。つまり、昼間は蟄居していて、辺りが暗くなると、夜行性の動物のように外を出歩くのだ。なぜ昼ではなくて夜出歩くのだろうか。人にそう問われたとしても、ぼくはその訳は言うまい。訳を言ったと

  • 上田 敏 海潮音(抄)

    薄暮の曲 シャルル・ボドレエル 時こそ今は水枝(みづえ)さす、こぬれに花の顫ふころ、 花は薫(くん)じて追風(おひかぜ)に、不断の

  • 短歌 上島 史朗 比叡・愛宕嶺

    加茂川にゆりかもめ間近くとびかうは「昔男」の知らざりし景 川岸のバス停に降り暫くをゆりかもめ舞いたつ様を見て佇(た)つ パン屑を投げ与えいし人去りてゆりかもめ所詮は川瀬に泛(うか)ぶ 鴨川のゆりかもめ琵琶湖を塒(ねぐら<rp

  • 評論・研究 城塚 朋和 富岡鉄斎と宜興紫砂器

    初めに 『銕荘茶譜 瓷壷之部』と題され袖珍版(15cm×9.4cm)、四十六頁、四つ目綴の一書、内扉に「周高起伯起原本 銕斎居士訳 宣興瓷壷譜 蕉陰艸堂蔵」とある。 富岡鉄斎が慶応三年(1867)十一月十三日の日付で、明、周高起による宜興紫砂壷(紫泥、朱泥の急須)の創始とその作家列伝を記した「陽羨茗壷系」を抄訳したものである。ただし表題に「宣興(センコウ)」とあるは「宜興」の間違い。 <p

  • 評論・研究 植村 正久 宗教と文學

    宗教の相関する所や広し、文学豈(あに)独り此の関係に漏れんや。されどもヒポコンデル的宗教家は謂(おも)へらく、凡そ文学と称するもの、其の詩たると小説たるとを問はず、宗教思想の鴆毒(ちんどく)にあらざるはなしと。而して俗臭的文学者は謂(おも</

  • 評論・研究 植村 八潮 大学出版部はオールドファッションか

    《目次》大学出版部への注目」大学出版部設立ブームの実態」紙の出版への憧憬」 大学出版部への注目 このところ大学出版部をめぐって、いくつかの話題が提供されている。直近では4月に開催された東京外国語大学出版会の

  • 評論・研究 植木 枝盛 日本國國憲案 附・大日本帝國憲法

    第一編 國家大則及権限 第一章 國家ノ大則 第二章 國家ノ権限 第二編 聯邦大則及権限 竝ニ各州ト相関スル法 第一章 聯邦ノ大則 第二章 聯邦ノ権限竝ニ各州ト相関スル法 第三編 各州ノ権限及聯邦ト相関スル法 第四編 日本國民及日本人民ノ自由権利 第五編 皇帝皇族及摂政 第一章 皇帝ノ威厳 第二章 皇帝ノ権限 第三章 皇帝及皇帝ノ継承 第四章 皇帝ノ即位 第五章 皇帝ノ婚姻 第六章 ...

  • 小説 織田 作之助

    登勢は一人娘である。弟や妹のないのが寂しく、生んで下さいとせがんでも、そのたび母の耳を赧(あか)くさせながら、何年かたち十四歳に母は五十一で思ひがけず妊(みごも)つた。母はまた赧くなり、そして女の子を生んだがその代り母はとられた。すぐ乳母(うば)を雇ひ入れたところ、折柄乳母はかぜけがあり、それがう

  • 評論・研究 色川 大吉 自由民権 請願の波

    馬上の人 河野広中(こうのひろなか)といえば、東北では板垣退助とならぶほどの評判だった。 福島県三春(みはる)の郷士(ごうし)、呉服太物(

  • 小説 新井 紀一 怒れる高村軍曹

    一 消灯喇叭(らつぱ)が鳴つて、電灯が消えて了つてからも暫くは、高村軍曹は眼先きをチラチラする新入兵たちの顔や姿に悩まされてゐた。悩まされてゐた――と云ふのは、この場合適当でないかもしれない。いざ、と云ふ時には自分の身代りにもなつて呉れる者、骨を拾つても呉れる者、その愛すべきものを自分は今、これから二ケ年と云ふもの手塩に

  • 随筆・エッセイ 新井 満 『木を植えた男』と出会って

    ある日のこと、妻が一冊の絵本を持って書斎に入ってくると、こんなことを言った。 「これ面白いわよ、お読みになったら…」 そのとき私は講演の準備をしていたので、今はそれどころじゃないんだと、断ろうとしたのだが、 「感動的なお話なのよ。もう涙なしには読めないのよ。おねがいだから、今すぐ読んでちょうだい。一生のおねがい」 妻はなおもたたみかけてくるのだ。もっとも彼女が言う「一生のおねがい」は、一週間に一度くらいのぺースで耳にするので、あまり説得力はない。しかし、文学にはうるさい方の妻をそこまで感動させた絵本とは、いったいどんな

  • 小説 新井 満 函館

    1 西暦二〇〇〇年の大晦日を、柊真一郎は写真スタジオの中ですごした。どこにも出かけなかったし、誰も訪ねてはこなかった。 写真スタジオの一角が応接コーナーになっていて、テーブルや椅子、ソファー、オーディオ・ビデオのセット、観葉植物といったものが置かれている。その日の午後、柊はソファーに座り珈琲を飲みながら一ヵ月分の新聞に眼を通し、たまっていた雑誌や郵便物の整理をした。 分厚いコンクリート壁に囲まれた写真スタジオの中は、しんと静まりかえっていてもの音ひとつしない。南洋の海底に沈んだ潜水夫みたいな気分だった。ジ

  • 評論・研究 新居 格 文藝と時代感覚

    一 「夢も現(うつつ)も、真

  • 随筆・エッセイ 新島 襄 同志社

    幕政の末路外交切迫して世運(せうん)転(うた)た危殆(きたい)に傾き、人心動乱するの時に際し、襄(じょう)(筆者自身)不肖夙(つと<r

  • 小説 新美 南吉 おぢいさんのランプ

    かくれんぼで、倉の隅にもぐりこんだ東一君がランプを持つて出て来た。 それは珍らしい形のランプであつた。八十糎ぐらゐの太い竹の筒が台になつてゐて、その上にちよつぴり火のともる部分がくつついてゐる、そしてほやは、細いガラスの筒であつた。はじめて見るものにはランプとは思へないほどだつた。 そこでみんなは、昔の鉄砲とまちがへてしまつた。 「何だア、鉄砲かア。」と鬼の宗八君はいつた。 東一君のおぢいさんも、しばらくそれが何だかわからなかつた。眼鏡越しにじつと見てゐてから、はじめてわかつたのである。 ランプであ

  • 小説 森 詠 雄鶏『オサムの朝』より

    修は背中で躍るランドセルを片手で押さえながら畔道を懸命に走った。ランドセルの中の鉛筆箱がかたこととくぐもった音をたてていた。麦の畑を過(よぎ)って走る線路に目をやった。 銀色の日射しが青々とした麦畑一面に降り注いでいた。南からの風がまだ穂のない麦の葉を揺らし、眩ゆい波紋を作って拡がっていく。 「まだ来ねえ」 修は左手の雑木林を窺った。線路はその雑木林のところで、ゆるく右にカーブしながら坂を下り、こんもりと茂った鎮守の森に消えている。機関車

  • 戯曲 森 鷗外 ゲーテ『ファウスト』より

    劇場にての前戯 座長。座附詩人。道化方。 座長 これまで度々難儀に逢つた時も、 わたくしの手助(てだすけ)になつてくれられた君方(きみがた)二人だ。 こん度の

  • 小説 森 鷗外 安井夫人

    「仲平(ちゆうへい)さんはえらくなりなさるだらう」と云ふ評判と同時に、「仲平さんは不男(ぶをとこ)だ」と云ふ蔭言(かげこと)が、淸武一郷(きよたけいちがう)に傳へられてゐる。 仲平の