検索結果 全1030作品 公開年逆順 公開年順 作家名逆順 作家名順 作品名逆順 作品名順

  • 大塚 甲山 冬の蝶・農夫 初出年: 1901年

    冬の蝶 灰色深き冬空の 見る/\雨のこぼれきて 膚(はだへ)に告ぐる寒き日を 覚束なくも飛ぶ蝶よ。 春は菫の花に泣き 夏は小百合の香に酔ひて 闌なりしその夢は 萩吹く風にさめたるか。 つらく悲く淋くて われも泣きたきこの雨よ

  • 土井 晩翠 荒城の月 初出年: 1901年

    春高樓の花の宴 めぐる盃影さして 千代の松が枝わけいでし 昔の光いまいづこ。 秋陣營の霜の色 鳴き行く雁の數見せて 植うるつるぎに照りそひし むかしの光今いづこ。 いま荒城のよはの月 變らぬ光たがためぞ 垣に殘るはただかつら 松に歌ふはただあらし。 天上影は變らねど 榮枯は移る世の姿 寫さんとてか今もなほ <

  • 評論・研究 田岡 嶺雲 嶺雲揺曳(抄) 初出年: 1899年

    人才の壅塞 徳川幕府封建の制度は門閥の弊を養成して、上下人為の分厳に、格卑きものは才あるも用ゐられず、格貴きものは才なきも要路を占むるを得、登門杜絶、人才壅塞(ようそく)せらるゝもの三百年。而して其の弊の極まるや発して維新の革命となる。維新の革命は実(げ)に多く<r

  • 小説 泉 鏡花 凱旋祭 初出年: 1897年

    一 紫紅(くれなゐ)の旗、空の色の靑く晴れたる、草木の色の緑なる、唯うつくしきものの彌(いや)が上に重なり合ひ、打混(うちこん)じて、譬へば大幻燈(うつしゑ)花

  • 小説 広津 柳浪 黒蜥蜴 初出年: 1895年

    一 年齢(としごろ)廿五六の男、風體(ふうてい)は職人。既(は)や暮れんとせる夏の日の、暑熱(あつさ)尚ほ堪へ難くてや、記章

  • 小説 小金井 喜美子 名誉夫人 ヒンデルマン原作 初出年: 1895年

    男女のいひなづけして、未だ婚礼せざるものさしむかひにてあるとき、これに立会ふを名誉夫人とはいふなり。又この篇に絵画の事をいへるうちに、古流新派とあるは、世に所謂印象派の方面より、今までありし流派をすべて古流といひ、おのれが一種の自然を観る法をそなへ、一種の色彩を施す式をおこなふを、新派といへるなり。我国にては、今黒田久米のぬし達、ここに云ふ新派に属し玉へり。これ等の事あらかじめことわりおかでは、この「スケツチ」の味解しがたかるべし。(明治二十八年しも月の末つかた) 君たち二人こゝにあそび給はんほど、しばしかの岡にのぼりて、今の景色をうつさばや、光線の工

  • 小説 石橋 忍月 惟任日向守(これたふ ひうがのかみ) 初出年: 1894年

    第一 憐(あは)れなりけり、天正十年三月十一日天目山(てんもくざん)の一戦、落花狼藉(らつからうぜき)天日(てんじつ<

  • 評論・研究 内田 魯庵 文學一斑 総論 初出年: 1892年

    凡例 一 題して文学一斑といふ。是れ僅に一斑を説きしものに過ぎざればなり。文学は極めて幽奥にして推究する事愈々深ければ愈々尽くる処を知らず。豈(あに)此一小冊子が能く説き尽し得るものならむや。 一 本篇説く処は尋常一様にして、識者既に熟通するの言なれば、遼東の<ruby

  • 小説 矢崎 嵯峨の舎(嵯峨の屋御室) 初戀 初出年: 1889年

    嗚呼(あゝ)思ひ出(いだ)せばもウ五十年の昔となツた。見なさる通り今こそ頭(かしら)に雪を戴き、額に此(この)様な波を寄せ、貌(かほ<

  • 評論・研究 志賀 重昂 「日本人」が懐抱する処の旨義を告白す 初出年: 1888年

    円錐形の鎮火山、秀然として海を抜き、屹立(きつりつ)一万余仭、千年万年の氷雪、皚々(がいがい)として其(その)峰嶺に堆積するものは、実に富士の峯に非(あら)ずや、而{しか}して幾多の山系之と綿亙し<r

  • 小説 饗庭 篁村 當世商人氣質(抄) 初出年: 1886年

    當世商人氣質自叙 錦織(にしきおり)なす花の都に軒を並べての繁昌。いつも変らぬ其家かと見れば主人大半非なりといひし白楽天の憾(うらみ)にも似て四代五代と一つ暖簾(のれん)</r

  • 小説 野上 豊一郎 お菊さん(抄)(ピエール・ロチ『マダム・クリザンテエム』より) 初出年: 1885年

    リシュリウ公爵夫人に 公爵夫人、 此の本を非常に敬虔な友情のしるしとしてお受けください。 私は此の本をあなたに捧げることを躊躇してゐました。題材がふさはしいものに思へなかつたからです。けれどもその表現法に於いて私は決して悪い趣味に堕しないやうに努めました。さうしてそこまで達せられたことを望んで居ります。 これは私の生涯のうちの或る一と夏の日記です。私は少しの変更も加へず、日附さへそのままにしました。それは、私の場合に

  • 随筆・エッセイ 前島 密 漢字御廃止之議 初出年: 1866年

    国家の大本は国民の教育にして其教育は士民を論せす国民に普(ひろ)からしめ之を普からしめんには成る可く簡易なる文字文章を用ひさる可らす 其深遠高尚なる百科の学に於けるも文字を知り得て後に其事を知る如き艱渋(かんじふ)迂遠(うゑん)なる教授法を取らす渾(

  • 評論・研究 あきとし じゅん 高橋和巳における狼疾

    1 かなり以前から高橋和巳の文学の特質において、心のなかに蟠(わだかま)っていることがある。いったいかれは、だれの影響をもっとも受けていたのであろうか。いうまでもなく、これまでの高橋和巳論は、その多くが性急に埴谷雄高を結論的に導きだしているが、かれの憂鬱なる作品を前にしたとき、はたしてそう結論づけていいものかどうか、はなはだ疑問である。 高橋和巳自身、比較的早く「近代文学」の読者として、第一次戦後派作家に親近感を覚えたといっているこ

  • あきとし じゅん 断章

    淡紫色の同情を 芝居気よく紙背 に書き記し繰戸 を抜け廃品を回 収した情夫の色 めき尊属殺人は 死刑または無期 懲役という怯懦 の葉ふたつ母の 日に薬籠さげて 挽歌流れる色擂 りの盆供養に煙 管を硯池に敲き 落し墨はねて人 質となった疫神 をせせ笑い聖母 の散歩はたちま ち般若吸血

  • 小説 つかだ みちこ 休暇に

    夕方、いつものように、僕の所に、学校の友人がやって来た。僕たち二人は、数ベルスタ(ロシアの里程。1ベルスタは約1067メートル)離れた同じ村に住んでいて、ほとんど毎日のように顔を合わせていた。ブロンドの好男子で、その優しいまなざしで、娘っ子たちを少なからず、うっとりと夢心地に誘うことだってできた。僕はといえば、彼の落ち着いた態度とか、その冷静な判断といったものにひきつけられていた。 その日、友人は何か心にかかることがある、というように見受けられた。地面をじっと見つめたまま、興奮した面持ちで、自分の足を鞭(むち</

  • 小説 つかだ みちこ 濃霧のカチン

    夜の六時からのコンサートまで少し時間があるので、すぐそこの市庁舎前の広場まで出てみよう。あそこには本屋もあるし、アプテカで薬を買うことだってできるだろう。それには先ず換金をしておかなくてはならない。ワルシャワ空港で換えた二万円はポズナニまでのタクシー代で吹っ飛んでしまった。それでも白タク運転手の要求していた六百ズオテイに百ズオテイ足りなかった。空港での換金は率が悪いということを知らなかった。栞は外出の準備を始めた。日本を発つ前に引いてしまった風邪がまだ喉のあたりにしつっこく居座っている。その違和感が気持ちを重苦しくさせていた。もしこの部屋にバスがついていて、昨夜温まって寝ればそれで治っ

  • 小説 つつみ 眞乃 うしろ髪ざくりと剪りて

    死死は土へ溶けゆくいのち冴返る 立春の大地は風を声と聴き 白蝶の舞ひの終りは白の舞ひ 春浅し通りすがりの写真館 白椿己が白さに怯えをり 黄水仙きりと高めの女帯 西鶴の胸算用や亀の鳴く 風見鶏逆さに春を廻しをり それなりの色を重ねて山笑ふ 井戸車落つる音絶つ実朝忌 </

  • 俳句 つつみ 眞乃 水の私語

    眠れねば青ついばみて蕗の薹 蕗の薹淡き予感と扉(と)を開く おぼつかな蝶の生誕目守りぬ 息かけて鏡の春と擦れ違ふ 如月や芯から荒らぐ息のなか 女芯いま春の怒濤へ声洩らす はかなさをそつと小袋二月尽 野焼きの尾ちぎれて恋の炎を拾ふ

  • 小説 ととり 礼治 夢、はじけても

    一 明治九年七月三十日、早朝――。 連日の猛暑の中を、早めに朝食をすませた人々が、小さな袋を片手に、近くの小学校をめざして、ぞくぞくと集まりはじめている。 やがて、浜松県内の各寺で一斉に鐘がつかれ、その荘厳な音色が、あたりに響き渡った。 それが、合図だった。 集合していた人々は、門をくぐり、さらに校舎の前に列を作りはじめた。 そして、先頭の者は教室に足を踏み入れると、部屋の中央に置かれた大きな箱に近