検索結果 全1013作品 公開年逆順 公開年順 作家名逆順 作家名順 作品名逆順 作品名順

  • 評論・研究 後藤 宙外 政治小説を論ず

    小説界の新生面 近頃、政治小説を誘奨して、斯壇に一新生面を招かんとする論者所々に見ゆ。勿論、之れを促すの趣意に到りては、其の軌を一にせず。政局の激変して、従来単に志士論客の脳裏に蜃気楼として描かれたる政党内閣も、今や実現せられたれば、民心翕然(きふぜん)として政治界に趨向(すうかう)するに到れり、此の機運は

  • 小説 幸田 露伴 観畫談

    ずつと前の事であるが、或人から気味合の妙な談(はなし)を聞いたことがある。そして其話を今だに忘れてゐないが、人名や地名は今は既に林間の焚火の煙のやうに、何処か知らぬところに逸し去つてゐる。 話を仕て呉れた人の友達に某甲(なにがし)といふ男があつた。其男は極めて普通人型の出来の好い方で、晩学では有つたが大学も二年生まで漕ぎ付けた。といふものは其男が最初甚だしい貧家に生れたので、

  • 小説 幸田 露伴 幻談

    斯(か)う暑くなつては皆さん方が或(あるひ)は高い山に行かれたり、或は涼しい海辺に行かれたりしまして、さうしてこの悩ましい日を充実した生活の一部分として送らうとなさるのも御尤(ごもつと)もです。が、もう老い朽ちてしまへば山へも行かれず、海へも出られないでゐますが、その代り小庭<

  • 随筆・エッセイ 幸田 露伴 処女作天魔談

    文壇では私の処女作を知つて居つたものは殆んどない。紅葉が知つて居つただけであるが、それすら故人となつたから、今では闇から闇に葬れるものとなつた。 処女作は『天魔』といふので、二十一年頃であつたと記臆する。穿(うが)ち専門の、極めて洒落た畑で。其頃京伝あたりの鋭い軽い筆つきを、面白いと思つて連(しき)りと愛読して居つたものであるから、自然其調子が乗つて居つた。五十枚ばかりの短篇も

  • 評論・研究 幸徳 秋水 自由党を祭る文

    歳は庚子(=かのえね 明治三十三年 1900)に在り八月某夜、金風淅瀝(せきれき)として露白く天高きの時、一星忽焉(こつえん)として墜ちて声あり、嗚呼(あゝ)自由党死す矣(い)、而

  • 随筆・エッセイ 幸徳 秋水 東京の木賃宿

    活地獄――木賃宿の異名――九千人のお客様一泊六銭――柏餅の雑居――雨の日の繁昌――三畳の家庭――千四百五十の世帯――擂鉢は車輪と廻る――二銭皿の鮪—――井に落せし簪――連込みの客――鬼一口――安宿ごろつき――良人ある身――夫婦喧嘩の統計――十年前の大家の嬢様――お湯は如何――屋根代の餌――丸裸の夫婦是れにつきねど 野山長閑(のどか)に春霞、立ちつづく道者笠(<

  • 小説 広津 柳浪 黒蜥蜴

    一 年齢(としごろ)廿五六の男、風體(ふうてい)は職人。既(は)や暮れんとせる夏の日の、暑熱(あつさ)尚ほ堪へ難くてや、記章

  • 小説 江見 水蔭 女房殺し

    一 逗子(づし)の浜辺に潮頭楼(てふとうろう)といふ海水浴舎がある。三崎(みさき)へ通ふ街道を前にして居るが、眺望(ながめ)は、鎌倉の海を<r

  • 小説 江戸川 乱歩 押絵と旅する男

    この話が私の夢か私の一時的狂気の幻でなかったなら、あの押絵と旅をしていた男こそ狂人であったに違いない。だが、夢が時として、どこかこの世界と喰いちがった別の世界をチラリとのぞかせてくれるように、また、狂人が、われわれのまったく感じえぬものごとを見たり聞いたりすると同じに、これは私が、不可思議な大気のレンズ仕掛けを通して、一刹那、この世の視野のそとにある別の世界の一隅を、ふと隙見したのであったかもしれない。 いつともしれぬ、ある暖かい薄曇った日のことである。それは、わざわざ魚津へ蜃気楼を見に出掛けた帰り途であった。私がこの話をすると、お前は魚津なんかへ行ったことはないじゃ

  • 随筆・エッセイ 江口 滉 陶藝家の述懐

    一期の境ここなり 室町時代の初期、能楽を大成した世阿弥の著書のひとつに『風姿花伝』と呼ばれるものがあります。これは、能楽の藝を習得するための練習方法などを説いた一子相伝の秘伝書で、わが国最初の演劇論としても高く評価されているものです。 この書物は、全体が「年来稽古条々」「物学(ものまね)条々」「問答条々」など七編から成っています。

  • 評論・研究 綱島 梁川 病間録

    知 己 何人(なんぴと)も他に知られたしの念あり、千万人の徒(あだ)なる喝采に動かざるものも、尚ほ其の一人(いちにん)の友に知られんことを求め、

  • 小説 荒畑 寒村 艦底

    一 春頃、進水式を挙げた二等巡洋艦××号の艤装(ぎさう)工事が、夏に入ると急に忙がしくなつた。職工等は寄ると障ると、近い中(うち)にいよいよ戦争が始まると、物の怪(け)</rp

  • 戯曲 行友 李風 極付 国定忠治(抄)

    序幕 赤城山麓室沢村才兵衛茶屋 幕開く。 手先甲乙、上って酒を飲んでいる。 お梅、お銚子を持ち出て来る。 手先甲 あゝお梅坊、相変らず綺麗だねえ。近頃のように、やれ大飢饉だの、やれ捕物だのと世間が騒がしいようじゃ、お前の店も落着いて稼業は出来なかろうのう。 お 梅 はい。 <st

  • 高安 義郎 母の庭

    序 章 母を連れた小旅行の計画でした 旅の支度をうながしますと そんな話は聞いていないと母は言います 紅葉を楽しみにしてくれたはずなのにと思いながら 宿のパンフレットを広げました するといきなり形相(ぎょうそう)を変え 「年寄りを粗末にして世間が

  • 高橋 茅香子 戦争に戦争を重ねるアメリカ

    語るも恐ろしい歴史の流れの中でも、安心感は ひきがえるの頭の中にトパーズを見つけるように いつもすぐ手の届く所に求めることができた 昔むかし、ある遠いところに、というお話だったから。 身の毛もよだつニュースさえ、耳にいれては すぐに安心感をみつけだしていた 距離からうまれる時間差があり、理解できない言葉があり 隔てる海は広く大きく、なんでもすぐに忘れさせた いま、安心感はなく、宝石のようにひかるのは勇気だけ 戦争はわたしたち自身のもの、いま

  • 評論・研究 高橋 茅香子 反戦の声ふたつ

    アメリカの対イラク武力行使を憂える声は、世界各地であがり、日本の市民運動グループなどもいち早く反対表明を示している。それらの声明文はアメリカ大統領府はもとより各国のアメリカ大使館、主要メディアなどに続々と送られているはずだが、一方、インターネット上では、あるはずもない国連の名前による署名依頼が世界中に蔓延するなど、いたずらまがいの行為も見られる。次に、小さいながら確かな声を伝える二つ、*反戦を表明する詩人たち *ハロー、アメリカ の動きを紹介する。 *反戦を表明する詩人たち

  • 評論・研究 高橋 健二 ゲーテの言葉

    序に代えて 太陽が照れば塵(ちり)も輝く。 (「格言と反省」から) * 考える人間の最も美しい幸福は、究め得るものを究めてしまい、究め得ないものを静かに崇(あが)</rp

  • 短歌 高橋 光義 クレバスに立つ

    リューマチを嘆(かこ)ちながらに孫負ひてかなしからずや気弱き母は 屋根裏を這ふズイムシのぼとぼとと夜更けし囲炉裏の灰中に落つ 白雪に蟻うごめけば冬ふけて病みこやる吾をののきにける 山陰(やまかげ)にあした幽けく凍りつく藪に羽触れ小鳥飛ぶ音 半天がずり落ち

  • 評論・研究 高橋 誠一郎 司馬遼太郎の教育観   ――『ひとびとの跫音』における大正時代の考察

    はじめに――グローバリゼーションとナショナリズム 国際政治学者のハンチントンはソ連が崩壊して、旧ユーゴスラビアなどで紛争が頻発するようになった二〇世紀末の世界を分析した大著『文明の衝突』において、「世界的にアイデンティティにたいする危機感」が噴出した結果、世界の各地で旗などの「アイデンティティの象徴」が重要な意味を持つようになり、「人びとは昔からあった旗をことさらに振りかざして行進し」、「昔ながらの敵との戦争をふたたび招くのだ」と指摘した(*1)。実際、彼の指摘を裏付けるかのように、インド・パキスタンの相次ぐ核実験やイラク戦争など、「文明の衝突」が続いて起こり

  • 評論・研究 高橋 誠一郎 戦争と文学 ――自己と他者の認識に向けて

    一、「新しい戦争」と教育制度 二〇〇一年は国連によって「文明間の対話年」とされたが、残念なことにその年にニューヨークで旅客機を用いた同時多発テロが起きた。むろん、市民をも巻き込むテロは厳しく裁かれなければならないし、それを行った組織は徹底的に追及されなければならないことは言うまでもない。ただ、問題なのはこれを「新しい戦争」の勃発ととらえたブッシュ政権が、「卑劣なテロ」に対する「報復の権利」の行使として市民をも巻き込む激しいアフガニスタンの空爆を行い、それを「文明」による「野蛮の征伐」の名のもとに正当化したことである。 そして、「