検索結果 全1044作品 公開年逆順 公開年順 作家名逆順 作家名順 作品名逆順 作品名順

  • 小説 白柳 秀湖 驛夫日記 初出年: 1907年

    私は十八歳、人ならば一生の春といふ此若い盛りを、之はまた何として情ない姿だらう。項垂(うなだ)れてヂッと考へながら、多摩川砂利の敷いてある線路を、プラットホームの方へ歩いたが、今更のやうに自分の着て居る小倉の洋服の脂垢(あぶらあか)に見る影もなく穢(よご)れたのが眼につく。私は今遠方シグナルの<r

  • 小説 高濱 虚子 風流懴法 初出年: 1907年

    横河(よかは) 今朝阪東(ばんどう)君が出立するのを送られて和尚(をしやう)サンもあまり行(い)けぬ口に一杯過ごされた。阪東君が出立したあとで和尚サンは

  • 小説 佐藤 紅緑 行火 初出年: 1906年

    奥州は津軽の城下に、名高い七夕の侫武多(ねぷた)祭が済んで門に火を焚く盆の頃になると、林檎がそれぞれに美しい色を染め出す。地福村といふのは弘前の町から半町となき西南の小さな村で、遠く館野の方から見ると只だ一帯の林檎畠。特に朝の静かな眺めは格別なもので、薄く白い霧の中に包まれた一廓は滑かな葉を瀰(わたる)紅、黄、紫などの林檎の色に、恰(さな

  • 評論・研究 徳冨 蘆花 勝利の悲哀 初出年: 1906年

    一 本年七月初旬、生(せい)(自分)は聖彼得堡(せんとぴーたーすぶるぐ)の亜歴山(あれきさんどる)三世博物館に於て、露国の画家ヹレスチヤギンの油絵数多(

  • 小説 夏目 漱石 吾輩は猫である 第一 初出年: 1905年

    第一 吾輩は猫である。名前はまだ無い。 どこで生れたか頓(とん)と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いて居た事丈(だけ)は記憶して居る。吾輩はこゝで始めて人間といふものを見た。然(しか)もあとで聞くとそれは書生といふ

  • 小説 中里 介山 笛吹川 初出年: 1905年

    (上) 過ぐる事三年の昔。峡東(けうとう)の風物を探つて信濃の山に別け入る可く、自分は志保(しほ)の山。差出(さしで)の磯を経て笛吹川の沿岸を遡つた。 磊々たる花崗質の巨石に激する水流の響は絶えず鳴鸞(めい

  • 薄田 泣菫 ああ大和にしあらましかば 初出年: 1905年

    ああ、大和(やまと)にしあらましかば、 いま神無月(かみなづき)、 うは葉散り透く神無備(かみなび)の森の小路を、 あかつき露(づゆ)に髪ぬれて<ruby

  • 随筆・エッセイ 幸徳 秋水 東京の木賃宿 初出年: 1904年

    活地獄――木賃宿の異名――九千人のお客様一泊六銭――柏餅の雑居――雨の日の繁昌――三畳の家庭――千四百五十の世帯――擂鉢は車輪と廻る――二銭皿の鮪—――井に落せし簪――連込みの客――鬼一口――安宿ごろつき――良人ある身――夫婦喧嘩の統計――十年前の大家の嬢様――お湯は如何――屋根代の餌――丸裸の夫婦是れにつきねど 野山長閑(のどか)に春霞、立ちつづく道者笠(<

  • 短歌 山口 孤剣 戦争を呪ふ 初出年: 1904年

    天の星、野べの百合にも平和(やすらぎ)の、色は満てるを、醜(しこ)の戦(いくさ)よ。 血の酒杯(さかづき)、舌つゞみ打つ醜人(</

  • 小説 瀬沼 夏葉 薄命(ドストエフスキー『貧しき人々』より) 初出年: 1904年

    しめやかなる都の春の夜(よ)、已(すで)に更けて、暁に近づける頃、ほとほとと戸を叩くは誰(た)が家、内には今しも、窓に倚り眠られぬ苦しさを忘れんと、庭の暗き方を眺めゐる主人、恁(かゝ)る夜更、何人の訪

  • 随筆・エッセイ 福田 英子 獄中述懐 「妾(せふ)の半生涯」より 初出年: 1904年

    三 書窓の警報 夫(それ)より数日を経て、板伯(はんはく)(板垣退助伯爵)よりの来状あり、東京に帰る有志家のあるを幸ひ、御身(おんみ)と同伴の事を頼置(たのみお<rp

  • 評論・研究 平出 修 所謂戦争文学を排す 初出年: 1904年

    文芸の内容より趣味を奪ひ去らば、之れ文芸なきなり。文芸が吾人実際の生活に或実利を与ふる如き場合も、畢竟文芸に趣味あり、趣味に実益ありと云ふに帰す。然るに世間往々文芸と実益とを云々せむと欲し、文芸の目的本質を枉(ま)げても、尚実益に資するあらしめむと望む者あり。かゝる人士の希望の如く、文芸の目的本質を枉げ尽さば、文芸の存在得て保つべからず、趣味の湧起得て期す可らず、従つて文芸の与ふる実益なるもの空(むなし)</

  • 評論・研究 大塚 保治 ロマンチックを論じて我邦文藝の現況に及ぶ(抄) 初出年: 1902年

    (承前) 近世の文藝は古代の単純調和的文藝とは違つて兎角(とかく)中正な円満なものは稀で、大抵皆一方に偏跛に発展して居る。啻(たゞ)に文藝のみならず学問でも宗教でも徳義習慣でも総て社会組織が皆夫々偏跛の方向に分化して発達して居る。夫れが近世文明別しては十九世紀文明の一大特色である。是はどうも人文発展上寔(まこと)</r

  • 大塚 甲山 冬の蝶・農夫 初出年: 1901年

    冬の蝶 灰色深き冬空の 見る/\雨のこぼれきて 膚(はだへ)に告ぐる寒き日を 覚束なくも飛ぶ蝶よ。 春は菫の花に泣き 夏は小百合の香に酔ひて 闌なりしその夢は 萩吹く風にさめたるか。 つらく悲く淋くて われも泣きたきこの雨よ

  • 土井 晩翠 荒城の月 初出年: 1901年

    春高樓の花の宴 めぐる盃影さして 千代の松が枝わけいでし 昔の光いまいづこ。 秋陣營の霜の色 鳴き行く雁の數見せて 植うるつるぎに照りそひし むかしの光今いづこ。 いま荒城のよはの月 變らぬ光たがためぞ 垣に殘るはただかつら 松に歌ふはただあらし。 天上影は變らねど 榮枯は移る世の姿 寫さんとてか今もなほ <

  • 評論・研究 田岡 嶺雲 嶺雲揺曳(抄) 初出年: 1899年

    人才の壅塞 徳川幕府封建の制度は門閥の弊を養成して、上下人為の分厳に、格卑きものは才あるも用ゐられず、格貴きものは才なきも要路を占むるを得、登門杜絶、人才壅塞(ようそく)せらるゝもの三百年。而して其の弊の極まるや発して維新の革命となる。維新の革命は実(げ)に多く<r

  • 小説 泉 鏡花 凱旋祭 初出年: 1897年

    一 紫紅(くれなゐ)の旗、空の色の靑く晴れたる、草木の色の緑なる、唯うつくしきものの彌(いや)が上に重なり合ひ、打混(うちこん)じて、譬へば大幻燈(うつしゑ)花

  • 小説 広津 柳浪 黒蜥蜴 初出年: 1895年

    一 年齢(としごろ)廿五六の男、風體(ふうてい)は職人。既(は)や暮れんとせる夏の日の、暑熱(あつさ)尚ほ堪へ難くてや、記章

  • 小説 小金井 喜美子 名誉夫人 ヒンデルマン原作 初出年: 1895年

    男女のいひなづけして、未だ婚礼せざるものさしむかひにてあるとき、これに立会ふを名誉夫人とはいふなり。又この篇に絵画の事をいへるうちに、古流新派とあるは、世に所謂印象派の方面より、今までありし流派をすべて古流といひ、おのれが一種の自然を観る法をそなへ、一種の色彩を施す式をおこなふを、新派といへるなり。我国にては、今黒田久米のぬし達、ここに云ふ新派に属し玉へり。これ等の事あらかじめことわりおかでは、この「スケツチ」の味解しがたかるべし。(明治二十八年しも月の末つかた) 君たち二人こゝにあそび給はんほど、しばしかの岡にのぼりて、今の景色をうつさばや、光線の工

  • 小説 石橋 忍月 惟任日向守(これたふ ひうがのかみ) 初出年: 1894年

    第一 憐(あは)れなりけり、天正十年三月十一日天目山(てんもくざん)の一戦、落花狼藉(らつからうぜき)天日(てんじつ<