検索結果 全1000作品 公開年逆順 公開年順 作家名逆順 作家名順 作品名逆順 作品名順

  • 評論・研究 太田 代志朗 高橋和巳序説

    1 いにしえ、東方の民が<双神の時間>と名づけた早朝の一時期——暗黒と光明、絶望と期待の陰陽交錯する薄明のゆらぎ、明暗定かならぬ夜と曙のせめぎあいこそ、不安な人間存在の物語の発端であった、といわれる。それはタナトスとエロスの相互循環であり、また、一切の苦痛、一切の快楽も一緒に肯定すべき<運命の愛>と呼ばれる真理なのでもあろうか。 思うに、その双神の運命とは、逃れえぬ闇の深奥でおびえつづけなければならぬ人間の精神と現実の構造的な内実を意味している。いや、それにしても、

  • 小説 太田 代志朗 公方繚乱

    1 「むっ」 と思わず口を噤む。汗が首周りに噴き出ていた。 蝉時雨の裏山の緑が眩しい。長く、暑い一日になりそうだった。 鶴岡八幡宮の周りは、昼前の照りつけを受け警固した兵が厳かに立ち尽くしていた。鳥居の前には華やかな百五十騎の軍馬が、整然と轡を並べている。本殿ではすでに神楽が奏でられ、舞殿で舞童による舞楽が奉じられていた。三ノ鳥居をくぐり源平池を見て、さらに石

  • 評論・研究 大越 哲仁 近代日本における戊辰戦争の意味

    《目次》 1 はじめに ―「薩長史観」と「公議政体派」史観― 2 公議輿論と公議政体 3 公議政体と大政奉還 4 五箇条の御誓文と戊辰戦争 5 万国公法と戊辰戦争 6 戊辰戦争とシビリアンコントロール <a href="#P

  • 評論・研究 大越 哲仁 最初の私費留学生

    第1章 岩倉使節団の一員としての新島襄 1 新島の帰国後のビジョンの形成と帰国に関する悩み 明治四年(1871)三月十五日、新島襄は、ボストンで初めて森有礼と対面した。 新島は当時二十九歳。前年にアーモスト大学を卒業し、アンドーヴァー神学校で神学を学んでいた。 アーモスト大学時代の新島は、ひたすら学問を修めることに執心し、帰国後

  • 評論・研究 大越 哲仁 回想のアンネ・フランク・ハウス

    1.アンネ・フランク・ハウスを訪れて アムステルダムは、大小の運河が網の目のように巡る水の都である。 17世紀以降東洋貿易の拠点となり、世界金融市場の中心として繁栄してきた。しばしば東京駅がアムステルダム駅を模した建物だと言われるが、実際にアムステルダム駅を訪れてみるとその規模と壮麗さは驚くばかりで、我らの東京駅がよほどちっぽけなものに思えてくる。アムステルダムという、このオランダの首都の栄華の一端が知れる事実である。 この街の中心部のプリンセン運河沿いに、巨大な鐘

  • 小説 大岡 昇平 俘虜記(抄)

    或る監禁状態を別の監禁状態で表わしてもいいわけだ。 デフォー 捉(つか)まるまで わがこころのよくてころさぬにはあらず <r

  • 小説 大岡 昇平 野火(抄)

    二八 飢者と狂者 いくら草も山姪も喰べていたとはいえ、そういう食物で、私の体がもっていたのは、塩のためであった。雨の山野を彷徨いながら、私が「生きる」と主張できたのは、その二合ばかりの塩を、注意深く節しながら、嘗めて来たからである。その塩がついに尽きた時、事態は重大となった。 少し前から、私は道傍に見出す屍体の一つの特徴に注意していた。海岸の村で見た屍体のように臀肉を失っていたことである。 最初私は、類推によって、犬か鳥が喰ったのだろうと思っていた。しかしある日、この雨季の山中に蛍が

  • 大岡 信 巻の四 原子力潜水艦「ヲナガザメ」の性的な航海と自殺の唄

    はじめは何の変哲もない 晴れわたつた四月なかばの火曜の朝だ ボストンに近い海軍基地を 見送る家族の一人もなしに 静かに離れて旅に出る &nbsp; 「グッド・ラック パパ 海ノソコデクラシテクルノネ オネガヒダヨ トツテキテネ ユウレイセンノ ユウレイ タクサン チヤウチンアンカウノ フクロニクルンデ イイカイ パパ」 <p class="sep

  • 随筆・エッセイ 大久保 房男 文藝編集者はかく考える(抄)

    編集者として 《目次》 文学者への尊敬の念終戦直後の新米編集者男尊女卑と言われる者の弁「侃侃諤諤」の経験督促は愛より <B

  • 小説 大久保 智弘 海を刻む

    一 毎日が賑やかなお祭りのように過ぎたあの頃のことを、峻はいつまでも忘れないだろう。 夕食が終わると、おじさんは小さな美奈を抱いて居間に移った。峻は、その背中に、蛙のように両足を広げて跳びついた。 ──やめなさい、シュン。おじさんは疲れているのよ。 ──いいんだ、いいんだ、とおじさんは言った。 ──いいんだ、いいんだ、と峻はおどけた調子で口真似をしながら、濃茶色のソファーの所までぶら下がって行った。おじさんの腕に抱かれている美奈が、肩越しに峻を見てキャッキャッと笑う。お

  • 評論・研究 大原 雄 テロと報復軍事行動の狭間で

    Rさん。 ニューヨークに住むあなたからの手紙を受け取りました。 日本でもアメリカのマスコミに続いて自粛をしたため、見られなくなった9月11日の衝撃的な映像を伴った同時多発テロのニュースが、テレビの画面 から飛び込んできたときに、まず、思い浮かべたのは、あなたが、事件に巻き込まれていないかどうか、ということでした。 手紙によれば、日本からのマスコミの取材者のための通訳兼コーディネイトという仕事をこなすという仕事をなさっているということですね。普段なら、コマーシャルや音楽の仕事をしているというあなたが、この事件以降、日本からの取材陣と一

  • 評論・研究 大原 雄 新世紀カゲキ歌舞伎

    口上 21世紀。新世紀、歌舞伎界は、中村歌右衛門を失った。市村羽左衛門を失った。ふたりは、立女形であり、立役の重鎮であり、何より、20世紀後半の歌舞伎界の屋台骨を背負ってきた。十代目坂東三津五郎の襲名披露の舞台で明けた21世紀、初年の歌舞伎の舞台。そのすべての舞台を観たわけではないが、それでも、地方巡業を含めて、いくつかの舞台を拝見し、私の個人電子マガジン「遠眼鏡戯場観察(かぶきうおっちんぐ)」として毎月連載した。そこに描かれた歌舞伎の舞台の数々。とき

  • 評論・研究 大原 雄 遠眼鏡戯場観察(抄)

    口 上 「歌舞伎の幾何学」の勧め ――ひと味違う歌舞伎の見方 大きな舞台に華やかな色彩。一九九四年四月歌舞伎座。夜の部は「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」の「熊谷(くまがい)陣屋の場」で始まった。私が初めて歌舞伎を見たのは、

  • 評論・研究 大原 雄 ガラスの破片とグイ呑みと……

    “麻薬とセックスに明け暮れるスキャンダラスな青春を題材に、陶酔と幻覚の裏の孤独を描く詩的情感と清潔な感受性。二十四歳のきらめく才能が創る衝撃の「青春文学」” 村上龍の『限りなく透明に近いブルー』の“帯”に書かれてある唄い文句である。この村上の本は、講談社の話では、百三十万部をこえたという。ベストセラーズという“現象”が、小説としての豊かさを示しているとは、思わないが、少なくとも、その作品が、小説として書かれ、また、読者が小説として、それを読んでいる以上、その“現象”を無視するのは、おかしいだろう。そういう意味で、私は、“いま文学に何を求めるか”という題に接したとき、『

  • 評論・研究 大原 雄 座席知盛

    ○ 序 幕 「見るべき程の事は見つ」。歌舞伎の舞台の幕が開く前、場内のざわめきのなかで、座席に着いた私は、いつも、そう呟く。 劇場に用意された自分の座席は、ひとつしかない。恰も自分の人生の一日は、体験した一日しかないように。 劇場では、普通、座席を1等席、2等席、3等席などというように区別する。その区別は、本舞台からの距離、それは空間的な距離もふくめて、決められる。その結果、同じ劇場に入り、同じ舞台を観ながら、座席によって、料金が異なる。そこに

  • 評論・研究 大原 雄 「二つ胴」を裁くということ ~裁判員制度と死刑~

    歌舞伎の「石切梶原」に「二つ胴」という場面がある。 目利きをした刀の試し斬りを乞われて、囚人を二人重ねて斬る場面となるのだが、あいにく、囚人が、一人しか確保できない。牢屋から引き出された囚人の剣菱呑助が、試し斬りという「死刑」に処せられる情けなさを己の名前に因んで「酒尽くし」の科白で語る見せ場がある。「二つ胴」は、事情があって、どうしても、家宝の銘刀を売りたい青貝師(螺鈿の細工師)の六郎太夫が、囚人と一緒に自分の命を差し出し、二人を重ねて試し斬りをして欲しいと、申し出たことから、刀を目利きした、剣の達人でもある梶原平三が、苦肉の策として取る作戦なのだ。 <p

  • コラム 大原 雄 ある人生の軌跡~李ライン警備から公害企業摘発へ~

    田尻宗昭さんとは、東京都の知事が、美濃部亮吉知事の時代(1967年~79年)、所謂「美濃部都政」として世間から注目されているときに、私がNHKの都政担当記者になり、公害局担当になったことから知り合った。1976年のことだから、34年前のことになる。 私が都政担当になる前から、東京の下町を中心に工場から廃棄された6価クロム鉱滓が各地に棄てられているのが住民の告発で明るみに出て、東京都が、その対応に追われているときであった。マスコミも注目し、全国的なニュースとして、大きく取り上げられていた。東京都公害局の部長であった田尻さんは、熱心に現場に通って、脚を悪くされてしまったほ

  • 大手 拓次 陶器の鴉 他

    陶器の鴉 陶器製のあをい鴉(からす)。 なめらかな母韻をつつんでおそひくるあをがらす、 うまれたままの暖かさでお前はよろよろする。 嘴(くちばし)の大きい、眼のおほきい、わるだくみのありさうな靑鴉</r

  • 評論・研究 大須賀 克己 ホリスティック・カウンセリング

    《目次》 第一章 社会は悩みに溢れている 不確かな未来と変わりゆく社会 大海に遭難しないために 自己発見への旅 抑圧による自己破壊 第二章 カウンセリングの真髄 心からクライアントの話に耳を傾ける <a href="#C08

  • 評論・研究 大須賀 克己 気の極意(抄)

    《目次》 第三章 「般若」の意味 1 「般若心経」漢訳(玄奘) 2 物事を大きくみる 3 知識はこだわりをつくる 4 善悪を超える 第四章 観自在菩薩の慈悲心 1 心の音を聞く 2 他人とともに生きる