検索結果 全1015作品 公開年逆順 公開年順 作家名逆順 作家名順 作品名逆順 作品名順

  • 小説 筒井 雪路 栄吉さんの英単語

    この話で栄吉さんを英語に無知だと笑う人がいたら、現代氾濫するカタカナ語に彼以上にもっと辛辣でしかももっとユーモアを含んだ日本語の適訳を示唆してあげてください。 栄吉さんは代々続いた染色屋の主人である。 数人の人を使って自宅に隣接させた工場、要するに作業場をフルに動かして必死に働いてきて、今は主な切り盛りは娘夫婦に譲ってどうやら妻と一緒にやっと気ままに時間を使える身になったものの、働き詰めに働いてきた性分で身体を動かさないでいられない。今でも町内の取りまとめはもとより、思いつくと得意先の開拓や資金の調達のため走りまわる。

  • 小説 筒井 雪路 梔子(くちなし)の門

    プロローグ 鍵のかかっていた門扉をお嬢さんがひらいた向こうに北田玲子さんが現れた時、それまで不安で緊張していた私は 「まあ、いらっしゃいませ」という昔とちっとも変らないやや甲高い優しい声を聞いて、自然に彼女の顔を見ることが出来て、ほっとした。アルツハイマーと聞いて予想していたのとは違って、彼女は様子はあまり変わっていなかった。多少白髪になっていたが、こちらの三人はもっと、純白に近い人もいる。私達が一人一人学生時代の旧姓を名乗って挨拶するのを 「山根さん? そうお」 「村井さん、ああそう」 「峰さん、そうお。 私わか

  • 随筆・エッセイ 藤間 紀子 高麗屋の女房(抄)

    目次三代襲名空っぽの心それでも舞台があるエジンバラの虹高麗屋の女房付・私のきもの生活 </p

  • 評論・研究 藤原 保信 自然観の転換と環境倫理学――自然と人間の調和のために

    われわれはこれまで、現代の環境危機を背景としつつ、アリストテレス、ホッブズ、ヘーゲルの自然観、およびそこにおける人間と自然の基本的な関係をみてきた。アリストテレスにとっては、自然のすべての存在はそれ自身のうちに目的を含み、その実現の過程にあったが、そのような自然の全体もある種の階層的、目的論的秩序をなしていた。そして人間はそのような秩序のなかに位置せしめられていたのであり、それゆえ自然は人間にとっての規範の源でもあった。人間の営為も自然の秩序を撹乱することなく、それと調和的に生きるべく考えられていたのである。これにたいしてホッブズは、自然を完全に客体化しながら、それを原子論的物体の機械

  • 随筆・エッセイ 藤村 操 巌頭之感

    悠々たる哉(かな)天壌、遼々たる哉古今、五尺の小躯を以て此(この)大をはからんとす。ホレーショの哲学竟(つひ)に<rb

  • 随筆・エッセイ 藤田 尚男 大相撲の名アナウンサー ──山本 照さんを偲ぶ──

    平成十年十月二十七日の朝、私は突然 「山本さんはどんなにしておられるだろうか? 今夜電話してみよう」という、思いに襲われました。虫の知らせだったのでしょうか。 奇しくも、その夕刻、ご長男の謹一郎さんから「午前十一時四十二分に亡くなられた」というお報せをいただきました。 九十五歳の大往生、ありし日の山本さんを偲び、私は胸が一杯になりました。 人間の一生には、思いがけない出会いがあります。 昭和十二年の暮も押し迫ったある日のこと、小学三年生だった私は、四歳下の弟がぶら下げてきた相撲の雑誌を何げなく手にとって開いてみま

  • 俳句 藤田 湘子 てんてん(抄)

    虚空ゆく禽(とり)の目ふたつ大旦 平成十一年(1999) 悪(わる)なれど町内の初鴉なり うれしくも淋しくもなし福寿草 粥にぽと落せし黄味や寒四郎 <p

  • 藤田 文江 夜の聲(抄)

    目次誘惑或る手紙(C)疾む泣いてゐるこども桟橋にて棹さす 誘 惑

  • 道元 隆 Rルート156(抄)

    目 次 水滴になって対 話人間として 水滴になって 決心の塊 いろんな外的刺激が重なる 内向き姿勢を強めた 生への

  • 徳沢 愛子 愛から愛へ

    お父さあーん その声は静寂に体当たり 「お父さあーん」 ゆり子さんの夫恋い絶唱 声はうす暗い老人病棟を 日本晴れの朝にする 口を開けること 食べることを忘れたゆり子さん スプーンは持っても 食べることがわからない 階段から落ちて 頭を打ってからというものは 「お父さあーんと呼んでみて」 耳元で看護婦さん <p

  • 小説 徳田 秋聲 或賣笑婦の話

    この話を残して行つた男は、今どこにゐるか行方(ゆくへ)もしれない。しる必要もない。彼は正直な職人であつたが、成績の好(よ)い上等兵として兵営生活から解放されて後、町の料理屋から、或は遊廓から時に附馬(つけうま)を引いて来たりした。これは早朝、そんな場合の金を少しばかり持つて行つた或日の晩、縁日の植

  • 小説 徳田 秋聲 和解

    一 奥の六畳に、私はM―子と火鉢の間に対坐してゐた。晩飯には少し間があるが、晩飯を済したのでは、夜の部の映画を見るのに時間が遅すぎる――ちやうどさう云つた時刻であつた。陽気が春めいて来てから、私は何となく出癖がついてゐた。日に一度くらゐ洋服を著て靴をはいて街へ出てみないと、何か憂鬱であつた。街へ出て見ても別に変つたことはなかつた。どこの町も人と円タクとネオンサインと、それから食糧品、雑貨、出版物、低俗な音楽の氾濫であつた。その日も私は為

  • 評論・研究 徳冨 蘆花 勝利の悲哀

    一 本年七月初旬、生(せい)(自分)は聖彼得堡(せんとぴーたーすぶるぐ)の亜歴山(あれきさんどる)三世博物館に於て、露国の画家ヹレスチヤギンの油絵数多(

  • 評論・研究 徳冨 蘆花 謀叛論

    僕は武蔵野の片隅に住むで居る。東京へ出るたびに、青山方角へ往くとすれば、必ず世田ケ谷を通る。僕の家から約一里程行くと、街道の南手に赤松のばらばらと生えた処が見える。此は豪徳寺──井伊掃部守直弼(ゐいかもんのかみなほすけ)の墓で名高い寺である。豪徳寺から少し行くと、谷の向ふに杉や松の茂つた丘が見える。吉田松陰の墓及び松陰神社は其丘の上にある。井伊と吉田、五十年前には互に倶不戴天(ぐふたいてん)の

  • 評論・研究 内村 鑑三 非戦論

    戦時に於ける非戦主義者の態度 私共は戦争が始まりたればとて私共の非戦主義を廃(や)めません、否な、戦争其物が非戦主義の最も好き証明者でありますから、私共は面前(まのあたり)戦争を目撃するに方(

  • 評論・研究 内田 魯庵 文學一斑 総論

    凡例 一 題して文学一斑といふ。是れ僅に一斑を説きしものに過ぎざればなり。文学は極めて幽奥にして推究する事愈々深ければ愈々尽くる処を知らず。豈(あに)此一小冊子が能く説き尽し得るものならむや。 一 本篇説く処は尋常一様にして、識者既に熟通するの言なれば、遼東の<ruby

  • 評論・研究 楠瀬 喜多 男女同権の女性参政権につき願書

    〇 人、髯(ひげ)あるが故に貴(たつ)とからず、才智あるを以て貴しとせん。茲(ここ)に其名も高知立志社へ土曜日毎(ごと)に有志輩の開会せる演説は、多く民権自由のことを説かれ、傍聴人は大概男子なりしが、

  • 小説 二葉亭 四迷 あひゞき

    このあひゞきは先年仏蘭西(フランス)で死去した、露国では有名な小説家、ツルゲーネフといふ人の端物(はもの)の作です。今度徳富(蘇峰・国民之友社主)先生の御依頼で訳して見ました。私の訳文は我ながら不思議とソノ何んだが、是れでも原文は極めて面白いです。 秋九月中旬といふころ、一日自分がさる

  • 随筆・エッセイ 二葉亭 四迷 表現と創作

    余が言文一致の由来 言文一致に就いての意見、と、そんな大した研究はまだしてないから、寧(むし)ろ一つ懺悔話(ざんげばなし)をしよう。それは、自分が初めて言文一致を書いた由来――も凄まじいが、つまり、文章が書けないから始まつたといふ

  • 短歌 日吉 那緒 色なき風

    叱りたる児の美しき眸(め)を憎む負けじとわれを見返し来る瞳(め) 一年を飼いし雲雀よ野に放てばわが掌(て)に残るかすかな温み 憂いつねに汝(な)