検索結果 全1000作品 公開年逆順 公開年順 作家名逆順 作家名順 作品名逆順 作品名順

  • 平塩 清種 四季の散歩道

    ●生れて消えて 僕のはじまりは海の見える故里 僕の終りも澄みわたる 月の光に染まる故里 ただ一人で生れいで 濁世(じょくせ)の中を いや応なしに歩きつづけ 心懊悩(おうのう)する日々を 一人で受け入れ 一人で<

  • 平塩 清種 樹下の懐郷

    小さなほとけさま 人として一番辛くて淋しいことは かかわるべき人が誰も居ないことです 喜びや悲しみをわかち合う人がいれば 人は輝いて輝いて生きていける 幸せとはつまり そういうものだと思います 若き時、若さゆえの情熱を力にして 無限の可能性を信じて歩いてきた 形のない幸せよりも 顕現化された華々しさが欲しかった <

  • 平賀 勝利 サクのコタンで

    夏の海 サクのコタンで 私は 神々に愛されていた 趾で桜貝を掘り 潜水して 海底の森や谷を探り 山と谷の流れを読む 貝殻に隠れた海栗 褐色の大きな海鼠 後ろに跳ぶほたて 獲物を抱えて顔を出す 岩畳の続くトコタンの磯 湖面の凍結が流氷を阻む 穏やかなキマネップやトップ

  • 平賀 勝利 ゆきむかえ

    虹のふもと ゆうだちがあがり おおきな虹がかかった のの はてから やまのうえまで かすかにきこえるかねのおと 虹のふもとには なにがある こどもは 虹をおいかけ そして みうしなう 虹のふもとにはなにがあるの こどもたちの ゆめがかくされているのさ ひるねをしながらねこが うすめをあけて

  • 小説 平出 修 逆徒

    判決の理由は長い長いものであつた。それもその筈であつた。之を約(つづ)めてしまへば僅か四人か五人かの犯罪事案である。共謀で或る一つの目的に向つて計画した事案を見るならば、むしろこの少数に対する裁判と、その余の多数者に対する裁判とを別々に処理するのが適当であつたかも知れない。否(いな)その如く引離すのが事実の真実を闡明(せんめい<

  • 評論・研究 平出 修 所謂戦争文学を排す

    文芸の内容より趣味を奪ひ去らば、之れ文芸なきなり。文芸が吾人実際の生活に或実利を与ふる如き場合も、畢竟文芸に趣味あり、趣味に実益ありと云ふに帰す。然るに世間往々文芸と実益とを云々せむと欲し、文芸の目的本質を枉(ま)げても、尚実益に資するあらしめむと望む者あり。かゝる人士の希望の如く、文芸の目的本質を枉げ尽さば、文芸の存在得て保つべからず、趣味の湧起得て期す可らず、従つて文芸の与ふる実益なるもの空(むなし)</

  • 評論・研究 平塚 らいてう ヘッダ、ガブラー論

    イプセンの劇の内で他の特色あるものとして、「へッダ、ガブラー」は「ゴースツ(幽霊)」に於て見る様な広い歴史的な又社会的な基礎はもつて居ないけれども、近代人の内的葛藤を描く事に就て、作者は未だ甞(かつ)てこれ程の程度に達したことはなかつた、劇全体はへッダ、ガブラーなる中心人物に集まつて居る。同時代の道徳的生活のあらゆる方面を含むこの広き、哲学的概括は、同時に一個の個人的性格を有(も)つて居る。劇

  • 評論・研究 平塚 らいてう 元始女性は太陽であつた

    元始、女性は実に太陽であつた。真正の人であつた。今、女性は月である。他に依つて生き、他の光によつて輝く、病人のやうな蒼白い顔の月である。 偖(さ)てこゝに「青鞜(せいたふ)」は初声(うぶごゑ)を上げた。 現代の日本の女性の頭脳と手によつて始めて出来た「青鞜」は初

  • 評論・研究 平林 初之輔 政治的價値と藝術的價値 ――マルクス主義文學理論の再吟味――

    一 コペルニクスは地動説をとなえたが、それを統一的理論によつて説明するためにはニュウトンをまたねばならなかつた。ところが今日の小学生は萬有引力の公式を知つている。だからコペルニクスよりも二十世紀の小学生の方がすぐれている! 石造建築は木造建築よりも進んだ建築である。某々洋食店は石造建築である。法隆寺は木造建築である。だから、某々洋食店の建築は法隆寺の建築よりもすぐれている! これ等の論理には矛盾がない。だがこの論理からひき出された判断は、必らずしも私たちを首肯せしめない。その理由は説明するまでもなく、誰で

  • 小説 平林 彪吾 鶏飼いのコムミュニスト

    一 朝といつてもまだ早く竹薮の中はうす暗い、小田切久次は四辺に気を配りながら静かに鋸を挽(ひ)くのであつた。ゴースー、ゴースーとかすかな音がひびく。 半丁ばかり距てた薮の入口には乞食たちが住んでいる。ここに住む恩義から乞食たちはこの竹山の番人の役を買つていたのである。 だが今朝はまだ彼等も菰(こも)の中で夢を見て

  • 随筆・エッセイ 平林 朋紀 北斗七星

    ・サーカスの象 ・ヤンバルクイナ ・象のいない動物園 ・恋の虫=ホタル ・軍の論理 ・母乳の偉力 ・少欲知足 ・ホピの予言 ・ぼけない人</

  • 随筆・エッセイ 米原 万里 或る通訳的な日常

    目次 罵り言葉考 強みは弱みともなる アゼルバイジャン・コニャックの味 モテル作家は短い! ちゃんと洗濯しようよ! 犬猫の仲 <font size=

  • 小説 米川 正夫 白夜

    …それとも彼は束の間なりと そなたの胸に寄り添うために 創られた人であろうか? … ツルゲーネフ 第 1 夜 素晴らしい夜であった。それは、親愛なる読者諸君よ、われらが若き日にのみあり得るような夜だったのである。空には一面に星屑がこぼれて、その明るいことといったら、それを振り仰いだ人は、思わずこう自問しないではいられないほどである──いったいこういう空の下にいろいろな怒りっぽい人や、気まぐれな人間どもが住むことができるのだろうか? これは

  • 評論・研究 米田 利昭 子規の従軍

    一 従軍句など 明治二十八年(1895)は、(正岡)子規を子規たらしめた転換の年であった。その重要さは、以前の初期喀血や小説家志望の挫折以上と思われる。すなわちこの年は、彼にとっては日清戦争従軍と、それに続く悪夢のような発病の年であった。悪夢のようなとは、二ヶ月の間生死の境を彷徨しただけでなしに、それがいったんはなおったように見えながら、実は周知のように以後七年にわたる言語を絶する病床苦のはじまりであったからだ。この二つのことは「寒山落木」巻四、つまりこの年の俳句稿の冒頭にこう書かれている。 </p

  • 短歌 米田 律子 風のいろ

    子等二人帰る気配に闇さやぐ揺らぎて花の近づく如く をみな子を行かせしからに憂ひあり街にあららけき事は起らむ 変革の喚声に血の流れしは昨夜(よべ)なる朝の薄ら雪藉(し)く 春いまだはだれ残りて変革を急(せ)<

  • 評論・研究 片岡 鐵兵 止めのルフレヱン

    1 この二三年来、私は機会ある毎に、現今の文壇の中心勢力を成すが如く見える一種のリアリズム文学を攻撃して来た。私の論議は多くの反感を買つたのみならず、一時は文壇全体が反新感覚派の声で充満したかの感さへあつた。然し、時は経過した。私が絶えず攻撃した一種のリアリズム的文学は次第に凋落(てうらく)せんとする傾きを表はして来た。今や新しい文学として受入れられる作品は、みな何らかの程度で私の主張して来た文学的要素を含有しながら、

  • 小説 片岡 鐵兵 幽霊船

    A 舵手が死ぬるまで 沈んだのは幸華丸といふ大きな帆船である。 遠い岬(みさき)が、乱暴な速さで、此方から手(た)ぐり寄せるやうに、だんだん近づいて来る。やがて、その岬の鼻に、青いペンキ塗の小舎のあるのが船から分る近さになつた。岬の鼻は、浪をかぶりつづけて、風邪をひきさうに見えた。そして、その浪が砕け、

  • 評論・研究 片山 孤村 神経質の文学(抄)

    (承前) 十九世紀末の欧洲思想界は正に群雄割拠の乱世である。政治、宗教、倫理、学術、文藝等何れの範囲に於ても、極端まで発達した思想や、主義や、信仰が互に鎬(しのぎ)を削つて戦つて居つて、而かも孰(いづ)れも天下の人心を支配し、安心立命の地を与へ時代を代表するほどの力は無く、唯渦の如く沸き騰(あが)</rp

  • 小説 穂高 健一 潮流

    タクシー運転手の広瀬哲也は、中年夫婦を乗せて函館空港にむかっていた。夫婦は島巡りが趣味らしく、これから奥尻島の観光に出向くようだ。潮の匂いがたまらなく好きだ、と語り合っていた。哲也はその話題にそれとなく協力するように、啄木小公園にさしかかると、運転席側のガラス窓をおろした。五月の空気には、潮の匂いとともに肌寒い冷気の残りが感じられた。 斜め上空には東京発らしいANAの機体が着陸態勢に入っていた。あの旅客機で到着した客を首尾よくひろえたならば、空港行きと帰りの効率のいい運行になる。ツキのある一日になるだろう。剰な期待は失望を伴

  • 小説 豊田 一郎 やがて、やってくるその日

    一 そこが、かつて、どのような海であったのか、僕は知らない。当初は都会から出る塵芥を処理するための埋め立て地として、東京湾内にせり出して行った陸地が、現代の技術を駆使して整備され、新たな都市が形成されている。東京の旧市街地にも、近代的な高層ビルが林立するようになり、都市景観は大きく変わっているのだが、海上に造成された地域に見る市街は、全く異質な空間を思わせる。 大森の老舗の料亭に生まれた妻は、大森海岸を語り、その辺りで展開されていた海苔の養殖に言及するのだが、その地域でも、海はすでに失われている。これから、僕が赴こうとしてい