検索結果 全1008作品 公開年逆順 公開年順 作家名逆順 作家名順 作品名逆順 作品名順

  • ノンフィクション 吉岡 忍 女子少年院 愛に飢える素顔の少女たち 初出年: 1984年

    うん、ここに入ったら、誰も見ていないところでリンチされたり、夜中に蹴飛ばされたりするだろうな、と思っていた。映画なんかでそういうのあるじゃない。だから、入って一週間くらい、怖くてね、夜、眠れなかった。真由美はそう言って、笑う。笑うと、大きな瞳がくるくるっと動いた。 うしろで縛って肩まで垂らした長い髪が、ほっそりした体躯によく似合っている。これでもここで生活した八ヵ月間に十二キロも増えた。あたし、十四になるちょっと前から覚醒剤やってたからガリガリだったのよね。ここへ来ると、みんな太っちゃう。十キロも十五キロもよ。 ここ――愛光女子学園は東京・狛江市の住

  • ノンフィクション 林 郁 女と戦争 初出年: 1981年

    目 次 1)神と共寝する女 2)現代島痛びの女 3)戦争にみる女の被害と加害 4)女が笑えば ──救世の武器として──   1)神と共寝する女 女はすべて神であった 「そこは碧く澄んだ海と虹色のサンゴ礁にかこまれた夢のように美しい島でした。フクギやユウナの並木が続き、炎色のデイゴの花や青紫の昼顔が咲き乱れ……」──御獄(ウタ

  • 随筆・エッセイ 山田 太一 何処にいて何処へいくのか? 初出年: 1974年

    私たちはいま何処(どこ)にいるのか。 たとえば、こういう文章がある。 「近ごろ、妙に知識人とか文化人とかもの書きの中に、政治を軽蔑するムードが高まってきた。 ぼくの考えるところでは、昭和の初めにもそういう形があって、うまく操作されて、世間がいわば暗い時代からの逃避としてエロ・グロ・ナンセンスのほうに行っちゃって、もの書きのほうは軍部をただ軽蔑し、あるいは軍部をあや

  • 戯曲 井上 ひさし 金壺親父恋達引(かなつぼおやじこいのたてひき) 初出年: 1972年

    登場人物 金仲屋金左衛門 伜・万七 娘・お高 手代・豆助 京屋徳右衛門 伜・行平 娘・お舟 万周旋業・大貫親方 口きき業・お梶 ■ 朝の段

  • 評論・研究 江藤 淳 現代と漱石と私 初出年: 1966年

    漱石という人はおそろしく孤独な人間だったが、漱石の作品は不思議と読者を孤独にしない。これはどういうことだろうかと、私はこのごろ思うようになった。 私は人なみに中学生時代にはじめて漱石を読んだ。そのときは『坊っちゃん』や『吾輩は猫である』、それに『こゝろ』が面白かった。大学にはいって間もなく、子供のころから弱かった胸を悪化させ、丸一年の上ひとりで寝ていたが、そのあいだにも漱石はずい分読んだ。かならずしも漱石に「道」を求めるような読みかたをしたわけではない。『門』や『道草』を読んでいると気持がしんと沈んで来る。それでいて決して凍てつくということがなく、心の奥底はむしろ豊か

  • 随筆・エッセイ 川喜多 かしこ 「思い出の名画でつづる東和の歩み」抄 初出年: 1964年

    「銀界征服」と「アクメッド王子の冒険」 東和商事合資会社は一九二八年十月に創立されました。社長は二十六歳の川喜多長政。出資者は川喜多のほか、ドイツ人の友人フォン・スティテンクロン男爵とフランス人の友人アンドレ・ジャルマン。九坪のオフィスを東京海上ビル七階に構えました。社員は支配人とボーイだけ。こうした出来たてほやほやの会社に私が社長秘書として入社したのは一九二九年の一月でした。当時の私は二十一歳。フェリス女学校の研究科を終え、横浜YWCAで初歩英語教授と交換にタイプと英文速記を一年学習したところでした。 震災後父を失い、母と二人の

  • シナリオ 高野 悦子 巴里に死す 初出年: 1962年

      原作 芹沢光治良   脚本・演出 高野悦子 登場人物   宮 村 … 佐田啓二   石 沢 … 森 雅之   築 城   万里子・伸 子(同一)… 香川京子   鞠 子(声)

  • 小説 山川 方夫 待っている女 初出年: 1962年

    寒い日だった。その朝、彼は妻とちょっとした喧嘩(けんか)をした。せっかくの日曜日なので、彼がゆっくりと眠りたいのに、妻はガミガミと彼の月給についての文句をいい、枕をほうりなげて、挙句(あげく)のはて、手ばやく外出の仕度をして部屋から出て行ってしまったのだ。 蒲団(ふとん)に首をう

  • 大関 松三郎 詩集『山芋』抄 初出年: 1951年

    &nbsp; 目 次 山 芋 畑うち 虫けら 雑 草 虫けら &nbsp; &nbsp; 山 芋 &nbsp; しんくしてほった土の底から 大きな山芋(やまいも<r

  • 評論・研究 佐々木 八郎 〝愛〟と〝戦〟と〝死〟 初出年: 1949年

    ――宮沢(みやざわ)賢治(けんじ)作『烏(からす)の北斗七星』に関連して―― * * 学徒出陣に際して一九四三年十一月十日、第一高等学校文二のクラス会が開かれた。佐々木八郎は、席上このエッセイを朗読した。宮沢賢治諭に託して

  • 小説 太宰 治 待つ 初出年: 1942年

    省線のその小さい駅に、私は毎日、人をお迎へにまゐります。誰とも、わからぬ人を迎へに。 市場で買ひ物をして、その帰りには、かならず駅に立ち寄つて駅の冷いベンチに腰をおろし、買ひ物籠を膝に乗せ、ぼんやり改札口を見てゐるのです。上り下りの電車がホームに到着する毎に、たくさんの人が電車の戸口から吐き出され、どやどや改札口にやつて来て、一様に怒つてゐるやうな顔をして、パスを出したり、切符を手渡したり、それから、そそくさと脇目も振らず歩いて、私の坐つてゐるベンチの前を通り駅前の広場に出て、さうして思ひ思ひの方向に散つて行く。私は、ぼんやり坐つてゐます。誰か、ひとり、笑つて私に声を

  • 小説 芹澤 光治良 大鷲 初出年: 1936年

    一 ――社長、村井代議士からお電話でした、なんですか、是非お会ひしたいつて申しまして、中の三百三番にお電話をいただきたいと。 ――社長、東京へ行かれるさうですな、お立ち前に決裁していただきませんと。 ――社長、中央バスの重役会が来週の火曜日と言ふ通知がありました、自社(うち)のも月曜日になつて居りますし、中

  • 左川 ちか 左川ちか詩集(抄) 初出年: 1936年

    鐘のなる日 終日 ふみにじられる落葉のうめくのをきく 人生の午後がさうである如く すでに消え去つた時刻を告げる かねの音が ひときれひときれと 樹木の身をけづりとるときのやうに そしてそこにはもはや時は無いのだから 憑かれた街 思ひ出の壯大な建物を あらゆる他のほろびたものの上に 喚び起こし、待ちまうけ、希望するために。

  • 野口 雨情 『草の花』抄 初出年: 1936年

    広小路 ゆき来も繁き 広小路 柳の蔭の 夕燕 &nbsp; しとしと雨の 降る中を 飛んでまた来て また返り &nbsp; 泊る軒端も ないのやら ゆき来の人の 顔を見る &nbsp; 行々子

  • 小説 萩原 朔太郎 日清戦争異聞(原田重吉の夢) 初出年: 1935年

    上 日清(にっしん)戦争が始まった。「支那も昔は聖賢の教ありつる国」で、孔孟(こうもう)の生れた中華であったが、今は暴逆無道の野蛮国であるから、よろしく膺懲(ようちょう)すべしという歌が流行(はや)</r

  • 小説 菊池 寛 勝負事 初出年: 1929年

    勝負事(しようぶごと)と云ふことが、話題になつた時に、私の友達の一人が、次ぎのやうな話をしました。 「私は子供の時から、勝負事と云ふと、どんな些細な事でも、厳しく戒しめられて来ました。幼年時代には、誰でも一度は、弄(もてあそ)ぶに定(き)まって居<rp

  • 小説 中島 敦 巡査の居る風景 初出年: 1929年

    ――一九二三年の一つのスケッチ―― &nbsp; 一 甃石(しきいし)には凍つた猫の死骸が牡蠣((かき))の樣にへばりついた。其の上を赤い甘栗屋の廣告が風に千切(ちぎ)れて狂ひながら

  • 小説 渡辺 温 アンドロギュノスの(ちすじ) 初出年: 1929年

    ——曾て、哲人アビュレの故郷なるマドーラの町に、一人の魔法をよく使う女が住んでいた。彼女は自分が男に想いを懸けた時には、その男の髪の毛を或る草と一緒に、何か呪文を唱えながら、三脚台の上で焼くことに依って、どんな男をでも、自分の寝床に誘い込むことが出来た。ところが、或る日のこと、彼女は一人の若者を見初めたので、その魔法を用いたのだが、下婢に欺かれて、若者の髪の毛のつもりで、実は居酒屋の店先にあった羊皮の革袋から毮り取った毛を燃してしまった。すると、夜半に及んで、酒の溢れている革袋が街を横切って、魔女の家の扉口迄飛んで来たと云うことである。 頃日読みさしのアナトール・フラ

  • 小説 梶井 基次郎 桜の樹の下には 初出年: 1928年

    桜の樹の下には屍体が埋まつている! これは信じていいことなんだよ。何故つて、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことぢやないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だつた。しかしいま、やつとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まつている。これは信じていいことだ。 どうして俺が毎晩家へ帰つて来る道で、俺の部屋の数ある道具のうちの、選(よ)りに選つてちつぽけな薄つぺらいもの、安全剃刀<

  • 小説 黒島 傳治 二銭銅貨 初出年: 1926年

    一 &nbsp; 独楽(こま)が流行(はや)っている時分だった。弟の藤二がどこからか健吉が使い古した古独楽を探し出して来て、左右の掌(てのひら)の間に三寸釘の頭をひしゃいで通した心棒を挾んでまわした。まだ、手に力がな