検索結果 全1004作品 公開年逆順 公開年順 作家名逆順 作家名順 作品名逆順 作品名順

  • 与謝野 晶子 あゝをとうとよ戰ひに

    君死にたまふこと勿れ (旅順口包囲軍の中に在る弟を歎きて) あゝをとうとよ君を泣く 君死にたまふことなかれ 末に生れし君なれば 親のなさけはまさりしも 親は刃(やいば)をにぎらせて 人を殺せとをしへしや 人を殺して死ねよとて 二十四までをそだてしや

  • 与謝野 晶子 そぞろごと

    ○ 山の動く日来(きた)る。 かく云へども人われを信ぜじ。 山は姑(しばら)く眠りしのみ。 その昔に於て 山は皆火に燃えて動きしものを。 されど、そは信ぜずともよし。 人よ、ああ、唯これを信ぜよ。 すべて眠りし女<r

  • 短歌 与謝野 晶子 明治の与謝野晶子短歌(抄)

    『乱れ髪』 その子二十(はたち)櫛(くし)に流るる黒髪のおごりの春の美しきかな 清水(きよみづ)へ

  • 与謝野 鐵幹 誠之助の死

    大石誠之助は死にました、 いい気味な、 機械に挟まれて死にました。 人の名前に誠之助は沢山ある、 然し、然し、 わたしの友達の誠之助は唯一人。 わたしはもうその誠之助に逢はれない、 なんの、構ふもんか、 機械に挟まれて死ぬやうな、 馬鹿な、大馬鹿な、わたしの一人の友達の誠之助。 それでも誠之助は死にました、 おお、死にました。 日本人で無かつた誠之助、 立派な気ち

  • 小説 葉山 嘉樹 淫売婦

    此作は、名古屋刑務所長、佐藤乙二氏の、好意によつて産れ得たことを附記す。 ── 一九二三、七、六 ── 一 若(も)し私が、次に書きつけて行くやうなことを、誰かから、「それは事実かい、それとも幻想かい、一体どっちなんだい?」と訊

  • 評論・研究 陽羅 義光 テロと文学

    1 テロや文学を語るにおいて、資格もしくは資格めいたものが必要かどうか、私には皆目解らないが、もしそんなものが必要だとしたなら、若干手前みそであっても、私にはそれがあると、やや声を落として断言できる。 文学の素人でも大いに文学を語るべきだとの見解を、妥当とみる論者は、その語ったことによって、いや語る前後の己れの勉学と精進によって、大文学者になるかもしれないではないかとの、甘い可能性をおそらく、その理屈の裏に秘めている。 あるいは、頭のかたいことを言わず、表現の自由なのだから、誰が

  • 小説 陽羅 義光 暗愁

    1 なまぬるい不吉な風が彼の心に吹きはじめている。気づいたときにはもう抵抗する力は失せていた。 ただ得体のしれぬ風に翻弄される。嘲笑される。 なす術もなく彷徨(さまよ)う。あるいは立ちつくしているのだった。 ごったがえす駅の改札で。うるさいだけの街の雑踏のなかで。 にぎわうショッピング・センターのフロアで。たむろする映画館のロビーで。 <

  • 陽羅 義光 ひらよしみつ詩集

    四角い宇宙 月 心がキレイになる時がある 一年に一度 いや十年に一度 そんなとき死にそこなって 四十歳になった THE MOON There will be the time for my heart to be pure and tender; Once a

  • 随筆・エッセイ 淀野 隆 私の万博体験~モノとヒトの出会いのドラマ~

    目 次 序 章 博覧会の起源 西洋と日本の原点第1章 戦後日本民族の大移動 共通体験の場・博覧会第2章 沖縄返還記念 海洋型博覧会の開催第3章 学園、研究都市構想 科学する心の醸成第4章 再び大阪へ 我が国初の「環境博」第5章 2度の開催中止

  • 小説 里村 欣三 苦力頭(クーリーがしら)の表情

    ふと、目と目がカチ合つた。──はッと思う隙(ひま)もなく、女は白い歯をみせて、につこり笑つた。俺はまつたく面喰つて臆病に眼を伏せたが、咄嗟(とつさ)に思い返して眼をあけた。すると女は、美しい歯並からころげ落ちる微笑を、白い指さきに軽くうけてさッと俺に投げつけた。指の金が往來を越えて、五月の陽にピカリと躍つた。<div

  • 評論・研究 陸 羯南 「日本」創刊

    「日本」創刊の趣旨 新聞紙たるものは政権を争ふの機関にあらざれば則ち私利を射るの商品たり。機関を以て自ら任ずるものは党義に偏するの謗(そしり)を免れ難く商品を以て自(みづか)ら居(を</

  • 小説 立原 正秋 冬のかたみに

    第一章 幼年時代 父が無量寺から十日ぶりに下山してきた早春のある日の夕食のときだった。父と母は、春から私を黙渓書院に通わせるか、それとも無量寺の老師のもとに通わせるかで話しあっていた。私は父と同じ膳にむかい、母はつぎの間で弟と膳にむかっていた。父が下山してきたので食膳には牛の骨つき肋肉(カルビ)が出ており、下女(げじょ)が炭火で焼きあげた肋肉を順次に

  • 立原 道造 萱草(わすれぐさ)に寄す

    SONATINE No.1 はじめてのものに ささやかな地異は そのかたみに 灰を降らした この村に ひとしきり 灰はかなしい追憶のやうに 音立てて 樹木の梢に 家々の屋根に 降りしきつた その夜 月は明(あか)かつたが 私はひとと 窓に凭れて語りあつた (この窓からは山の姿が見えた)

  • 小説 立松 和平 道場

    根拠はないのだが、何となく悪い予感がないわけではなかった。いや、根拠がないということはない。彦さんが東京の築地にある癌センターに入院して闘病生活をし、退院して家に帰っていることは知っていた。私にとっては敬愛してやまない先輩なのだが、奥さんと二人の娘さんと最後の団欒をしているのだからと、私は会いにいくのを遠慮していたのだ。そんな日がつづき、留守番電話を聞くスイッチをいれるのが恐かった。何件かの取るに足らない用件の声のあと、いつもの陽気さとは違う高橋公の暗鬱な声が響いてきた。 「おい、彦が死んだぞ」 それだけだった。土曜日だったので、さっそく高橋公の自宅に

  • 小説 立松 和平 山へ帰る

    したたるほどの緑に溺れそうだった。濃密な緑が波しぶきになって窓の外を猛然と流れていく。緑の波をくぐって突き進む潜水艦みたいだ。静一は緑の波に直接頬や掌を触れさせてみたかった。だがガラスを下げると、ハンドルを握っている父親に、クーラーがきかないじゃないかと、大声をだされた。すでに二度も同じことをくりかえしたのだった。つづら折りの登りの山道になり、父が腕を忙しく交差させてハンドルを回転させ、前方の景色が右に左にとすべった。もっともっとスピードを上げてと思ったが、静一は黙っていた。エンジンの苦しそうなあえぎが背中のほうから響いてきた。 「お父さん、本当に大丈夫なの」

  • 小説 龍膽寺 雄 放浪時代

    一 ギルフイラン、ラヂオ商会の飾窓(シヨウウインドウ)の飾りを終へて、――金を受取つて、いつもの様に曾我(そが)たちと、彼等の仕事場で落合ふために、上野行の電車へ僕が飛乗つたのは、かれこれ九時を廻つた時分だつた。暮れがた暫く振りで快よい夕立が東京の半天を襲うて、それがわづかの

  • 小説 林 芙美子 清貧の書

    一 私はもう長い間、一人で住みたいと云ふ事を願つて暮した。古里も、古里の家族達の事も忘れ果てて今なほ私の戸籍の上は、真白いまゝで遠い肉親の記憶の中から薄れかけようとしてゐる。 只ひとり母だけは、跌(つま)づき勝ちな私に度々手紙をくれて叱つて云ふ事は、── おまえは、おかあさんでも、おとこうんがわるうて、くろうしてゐると、ふてくされてみえるが、よう、むねにて

  • 小説 林 芙美子 晩菊

    夕方、五時頃うかゞひますと云ふ電話であつたので、きんは、一年ぶりにねえ、まア、そんなものですかと云つた心持ちで、電話を離れて時計を見ると、まだ五時には二時間ばかり間がある。まづその間に、何よりも風呂へ行つておかなければならないと、女中に早目な、夕食の用意をさせておいて、きんは急いで風呂へ行つた。別れたあの時よりも若やいでゐなければならない。けつして自分の老いを感じさせては敗北だと、きんはゆつくりと湯にはいり、帰つて来るなり、冷蔵庫の氷を出して、こまかくくだいたのを、二重になつたガーゼに包んで、鏡の前で十分ばかりもまんべんなく氷で顔をマツサアジした。皮膚の感覚がなくなるほど、顔が<rub

  • 小説 林 芙美子 夜の蝙蝠傘

    この孤独と云ふものは、四方八方から責めたてられて起つたものだと解り、一瞬の考へのなかにも、外部から、何かしら音をたてゝはいりこまれてゐる不安を、始終、頭に入れてゐなければならぬと、追ひまくられてゐる気になり、その息苦しい不安を、英助は、ぢいつと虚空(こくう)に只みつめてゐる。「おい、おくさん、何時(いつ)ごろ、冥土へ御出発としますかね」まるで愉しい旅行へ旅立つやうな尋ねかたである。町子が、鍋の

  • 評論・研究 林 房雄 作家として

    一 ぼくは心をきめた。ぼくは文学のために一生をかける。 文学の仕事は高くそして大きい。それは男の一生をかけるにあたひする。いな、一生をかけないかぎり、文学は――およそ文学の名にあたひしうるものは、けつして生まれない。 (ここでぼくは、はでな宣言文章をかかうとしてゐるのではない。作家としての再出発を行ふにあたつて、小さなおぼえ書をつくらうとしてゐるにすぎない。だから、いふことはおのづから単純である。それ