検索結果 全1036作品 公開年逆順 公開年順 作家名逆順 作家名順 作品名逆順 作品名順

  • 随筆・エッセイ 小出 楢重 洋画家の漫談雑談 初出年: 1927年

    裸婦漫談 日本の女はとても形が悪い、何んといつても裸体は西洋人でないと駄目だとは一般の人のよく言ふ事だ、そして日本の油絵に現れた女の形を見て不体裁だといつて笑ひたがるのだ。それでは、笑ふ本人は西洋人の女に恋をしたのかといふとさうでもない、やはり顔の大きな日本婦人と共に散歩してゐるのである。 理想的といふ言葉がある、昔(むか)しは女の顔でも形でもを如何</rb

  • 小説 中里 介山 愛染明王 初出年: 1927年

    紀伊国(きいのくに)那智の滝愛染明王(あいぜんみょうおう)のお堂を、ある日の夕方、一人の歳若き出家がおとずれた。 「頼みます那智の滝本の愛染堂はこちらでございましょうか、ある人に途中で逢い那智へ参らば愛染堂の堂守(どうもり)をたずねよと申し聞かされましたこと故に、突然ではございます

  • 富永 太郎 秋の悲歎 初出年: 1927年

    私は透明な秋の薄暮の中に墜ちる。戦慄は去つた。道路の あらゆる直線が甦る。あれらのこんもりとした貪婪な樹々さ へも闇を招いてはゐない。 私はたゞ微かに煙を挙げる私のパイプによつてのみ生きる。 あの、ほつそりとした白陶土製のかの女の頸に、私は千の静 かな接吻をも惜しみはしない。今はあの銅(あかゞね)色の空 を蓋ふ公孫樹の葉の、光沢のない非道な存在をも赦さう。オ ールドローズのおか

  • 評論・研究 片岡 鐵兵 止めのルフレヱン 初出年: 1927年

    1 この二三年来、私は機会ある毎に、現今の文壇の中心勢力を成すが如く見える一種のリアリズム文学を攻撃して来た。私の論議は多くの反感を買つたのみならず、一時は文壇全体が反新感覚派の声で充満したかの感さへあつた。然し、時は経過した。私が絶えず攻撃した一種のリアリズム的文学は次第に凋落(てうらく)せんとする傾きを表はして来た。今や新しい文学として受入れられる作品は、みな何らかの程度で私の主張して来た文学的要素を含有しながら、

  • 小説 堀 辰雄 ルウベンスの偽画 初出年: 1927年

    それは漆黒(しっこく)の自動車であつた。 その自動車が軽井沢ステエションの表口まで来て停まると、中から一人のドイツ人らしい娘を降した。 彼はそれがあんまり美しい車だつたのでタクシイではあるまいと思つたが、娘がおりるとき何か運転手にちらと渡すのを見たので、彼は黄いろい帽子をかぶつた娘とすれちがひながら、自動車の方へ歩いて行つた。 「町へ行つてくれたまへ」 彼はその自動車の中へはひつた。はひつて見ると内部は真白だつた。そして

  • 小説 横光 利一 春は馬車に乗つて 初出年: 1926年

    海浜の松が凩(こがらし)に鳴り始めた。庭の片隅で一叢(ひとむら)の小さなダリヤが縮んでいった。 彼は妻の寝ている寝台の傍から、泉水の中の鈍い亀の姿を眺めていた。亀が泳ぐと、水面から輝(て)り返された明るい水影が、乾いた石の上で揺れていた。 「まアね、あなた、あの松

  • 小説 黒島 傳治 二銭銅貨 初出年: 1926年

    一 &nbsp; 独楽(こま)が流行(はや)っている時分だった。弟の藤二がどこからか健吉が使い古した古独楽を探し出して来て、左右の掌(てのひら)の間に三寸釘の頭をひしゃいで通した心棒を挾んでまわした。まだ、手に力がな

  • 評論・研究 新居 格 文藝と時代感覚 初出年: 1926年

    一 「夢も現(うつつ)も、真

  • 野口 米次郎 われ山上に立つ 初出年: 1926年

    かくてわれ山上に立ち、 生命と沈黙の勇者……勝ち誇り、 空に眼(まなこ)をむけ、突立ちあがり、 没せんとする太陽(ひ)を見て微笑み、麗しく悲しき告別を歌ふ。 夕(ゆふべ)は神秘にてわれをとり巻き、 そ

  • 短歌 古泉 千樫 千樫短歌抄 初出年: 1925年

    みんなみの嶺岡山の焼くる火のこよひも赤く見えにけるかも 山焼五首 夕食(ゆふげ)終へて外(と)に出て見ればあかあかと山焼(やまやけ)の火のひろがりにけり

  • 小説 幸田 露伴 観畫談 初出年: 1925年

    ずつと前の事であるが、或人から気味合の妙な談(はなし)を聞いたことがある。そして其話を今だに忘れてゐないが、人名や地名は今は既に林間の焚火の煙のやうに、何処か知らぬところに逸し去つてゐる。 話を仕て呉れた人の友達に某甲(なにがし)といふ男があつた。其男は極めて普通人型の出来の好い方で、晩学では有つたが大学も二年生まで漕ぎ付けた。といふものは其男が最初甚だしい貧家に生れたので、

  • 小説 黒島 傳治 豚群 初出年: 1925年

    一 牝豚(めぶた)は、紅く爛(ただ)れた腹を汚れた床板の上に引きずりながら息苦しそうにのろのろ歩いていた。暫く歩き、餌を食うとさも疲れたように、麦藁(むぎわら)を短く切った敷藁の上に行って横たわった。腹はぶってりふくれている。時々、その中で仔が動いているの

  • 随筆・エッセイ 淡島 寒月 亡び行く江戸趣味 初出年: 1925年

    江戸趣味や向島沿革について話せとの御申込であるが、元来が不羈(ふき)放肆(ほうし)な、しかも皆さんにお聞かせしようと日常研究し用意しているものでないから、どんな話に終始するか予めお約束は出来ない。 ◇ 人はよく私を江戸趣味の人間であるようにいっているが、決して単なる江戸趣味の小天地に跼

  • 八木 重吉 秋の瞳(抄) 初出年: 1925年

    序 私は、友が無くては、耐へられぬのです。しかし、私にはありません。この貧しい詩を、これを、読んでくださる方の胸へ捧げます。そして、私を、あなたの友にしてください。 息を 殺せ 息を ころせ いきを ころせ あかんぼが 空を みる ああ 空を みる 心よ ほのかにも いろづいてゆく こころ わ

  • 俳句 尾崎 放哉 尾崎放哉句集(抄) 初出年: 1925年

    島の明けくれ 道を教へてくれる煙管から煙が出てゐる 病人花活ける程になりし 朝靄豚が出て来る人が出て来る 迷つて来たまんまの犬で居る 山の芋掘りに行くスツトコ被り 人間並の風邪の熱出して居ることよ さつさと大根の種子まいて行つてしまつた <p cl

  • 小説 葉山 嘉樹 淫売婦 初出年: 1925年

    此作は、名古屋刑務所長、佐藤乙二氏の、好意によつて産れ得たことを附記す。 ── 一九二三、七、六 ── 一 若(も)し私が、次に書きつけて行くやうなことを、誰かから、「それは事実かい、それとも幻想かい、一体どっちなんだい?」と訊

  • 小説 里村 欣三 苦力頭(クーリーがしら)の表情 初出年: 1925年

    ふと、目と目がカチ合つた。──はッと思う隙(ひま)もなく、女は白い歯をみせて、につこり笑つた。俺はまつたく面喰つて臆病に眼を伏せたが、咄嗟(とつさ)に思い返して眼をあけた。すると女は、美しい歯並からころげ落ちる微笑を、白い指さきに軽くうけてさッと俺に投げつけた。指の金が往來を越えて、五月の陽にピカリと躍つた。<div

  • 短歌 土屋 文明 土屋文明短歌100首 初出年: 1925年

    「ふゆくさ」より この三朝(みささ)あさなあさなをよそほひし睡蓮(すいれん)の花今朝(けさ)はひらかず 白楊(どろ)の花ほのかに房<rp

  • 小説 芥川 龍之介 一塊の土 初出年: 1924年

    お住(すみ)の伜に死別れたのは茶摘みのはじまる時候だつた。伜(せがれ)の仁太郎は足かけ八年、腰ぬけ同様に床に就いてゐた。かう云ふ伜の死んだことは「後生(ごしやう)よし」と云はれるお住にも、悲しいとばかりは限らなかつた。お住は仁太郎の棺の前へ一本線香を手向けた時には、兎に角朝比奈の切通しか何かをやつ

  • 小説 芥川 龍之介 桃太郎 初出年: 1924年

    一 むかし、むかし、大むかし、或深い山の奥に大きい桃の木が一本あつた。大きいとだけではいひ足りないかも知れない。この桃の枝は雲の上にひろがり、この桃の根は大地の底の黄泉の国にさへ及んでゐた。何でも天地開闢(てんちかいびやく)の頃ほひ、伊弉諾(いざなぎ)の尊(みこと)</ru