検索結果 全1052作品 公開年逆順 公開年順 作家名逆順 作家名順 作品名逆順 作品名順

  • 評論・研究 河東 碧梧桐 季感に就いて

    季感、季語、季題等について、以前いろいろに考へ、研め、悩みもしたことがあり、又たそれを書いたこともあります。それ以上、今日新たに会得したこともなければ、是非書いて見たいと思ふこともありません。強ひて書けば、以前のおさらひをするに過ぎないのであります。 以前西洋を旅行してゐる時、或人が独逸(ドイツ)の何処かで、丁度名月の夜、二三の同胞と酒肴を携へて月を観に郊外の丘に出掛けた、すると下宿の女主人が怪しんで、あなた達は何しに行くのか、へーあの月をどうして、と言つて、結局日木人の

  • 随筆・エッセイ 河野 仁昭 天野忠さんの生と詩

    1 上野瞭先生は高名な児童文学者ですが、ある日、同志社女子大学の講師控室にいましたらやってこられて、「ぼくたちは晩年学というのをやっているんですが、一度講演をお願いできませんか」といわれるんです。「晩年学て、なんですか」とたずねましたら、「老人問題をみんなで考える会なんです。老人学じゃパッとしませんので、晩年学ということで……」。 哲学者の片山寿昭先生と上野先生が主催しておられることもそのとき知ったのですが、児童文学と晩年学、どこでどう結びついているのかと思いましたら、「ぼくも、もう年寄りの仲間でしょう。だから」と、大変明快なお

  • 花森 安治 見よぼくら一銭五厘の旗

    美しい夜であった もう 二度と 誰も あんな夜に会う ことは ないのではないか 空は よくみがいたガラスのように 透きとおっていた 空気は なにかが焼けているような 香ばしいにおいがしていた どの家も どの建物も つけられるだけの電灯をつけていた それが 焼け跡をとおして 一面にちりばめられていた 昭和20年8月15日 あの夜 もう空襲はなかった もう戦争は すんだ

  • 随筆・エッセイ 芥川 龍之介 或旧友へ送る手記

    誰まだ自殺者自身の心理をありのままに書いたものはない。それは自殺者の自尊心や或は彼自身に対する心理的興味の不足によるものであらう。僕は君に送る最後の手紙の中に、はつきりこの心理を伝へたいと思つてゐる。尤(もつと)も僕の自殺する動機は特に君に伝へずとも善(い)い。レニエは彼の短編の中に或自殺者を描いてゐる。この短篇の主人公は何の為に自殺するかを彼自身も知ってゐない。君は新聞の三面記事などに生活難

  • 小説 開高 健 玉、砕ける

    ある朝遅く、どこかの首都で眼がさめると、栄光の頂上にもいず、大きな褐色のカブト虫にもなっていないけれど、帰国の決心がついているのを発見する。一時間ほどシーツのなかでもぞもぞしながら物思いにふけり、あちらこちらから眺めてみるけれどその決心は変らないとわかり、ベッドからぬけだす。焼きたてのパンの香りが漂い、飾窓の燦(きらめ)きにみたされた大通りへでかけ、いきあたりばったりの航空会社の支店へ入っていき、東京行きの南回りの便をさがして予約する。香港で一日か二日すごしたいからどうしても南回りの便でな

  • 評論・研究 角田 勝彦 ニュールネサンス クラブ 創設マニフェスト 2006年6月

    創設パートナー(川口健一、寒河江正、田原茂行、角田勝彦、野崎茂) 1. われわれは、第二次世界大戦後の日本と世界で生じている大変容が、解放と発展の反面、人々に不安と閉塞、不満と抗争をもたらしていると認識する。われわれは、いま、混迷の漂流に抗する確固たる碇を必要としている。 (説明) 二十世紀は、戦争と激動の世紀であった。とくに第二次世界大戦後の世界で生じている政治、経済、科学技術、社会、文化など各面で

  • 笠原 三津子 マヌカンの青春

    1 体温は感じられないだろう 三角形、楕円形 の寄せ木に鋲を打ちつけ しっかり立っているように見えても 足をごらんなさい 細くくびれた足首の先に 人間によく似た小さな足がついている 詩人Mはつぶやいた <この足が悲しい マヌカンが なまめかしければ なまめかしいほど……> 青い空をバックに 人はみな死に絶えた 乾

  • 小説 梶井 基次郎 檸檬・蒼穹・闇の絵巻

    檸檬 えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧(おさ)へつけてゐた。焦燥(せうさう)と云はうか、嫌悪と云はうか──酒を飲んだあとに宿酔(ふつかゑひ)があるや

  • 評論・研究 梶原 和義 ユダヤ人問題と人類の将来

    1. 不思議なユダヤ民族 全人類の中にユダヤ民族がいるのです。これは不思議な民族でありまして、現在ユダヤ人と自ら称している人は、約二千万人です。 ユダヤの国が滅びたのは、今から二千五、六百年前です。国が滅びて二千五、六百年経過しても、ユダヤ民族はいるのです。こんなおかしなことはありえないことです。 国が滅びれば、およそ百年ほどでその国の民族は消滅するのです。バビロニアという大きな国がありましたが、現在バビロニア人はどこにもいません。ユダヤより何百倍も大きな国でしたが、完全に消滅してしまったのです。 ユダヤは日本の

  • 小説 梶山 季之 合わぬ貝

    『小鍋夫人覚書』に拠ると、一世を風靡(ふうび)した俳人松尾桃青が、野心の強い、しかも倒錯した性欲の持主であったことが、かなり露骨に書かれてある。 もっとも桃青自身、最初の上梓本であり、故郷の天満宮に奉納した三十番俳諧合の判詞に「今こそあれ、われも昔は衆道(しゅどう)ずきの云々」と、述懐している位だから、さして駭(おどろ</

  • 乾 直恵 花卉(抄)

    《目次》 神の白鳥睡れる幸福極 光 神の白鳥 神さまが、膝でスワンを慈しむ。 御手にふれたこの抜け羽毛<rp

  • 評論・研究 関根 千佳 図書館サービスにおけるユニバーサルデザイン

    図書館の役割とは、市民に情報を提供することである。社会を構成する市民の中には、年令や能力、背景などの環境において、多様なニーズを持つ人々が増えてきている。日本は2009年現在、イタリアを抜いて世界で最も高齢化の進んだ国となった。加齢が進み、視覚や運動機能などに制限のある市民の増大と、ITの進展で新たな読書環境が出現する中で、その「読書」を支援する体制やサービスは、どのようなものが求められているのだろうか? 本稿では、特に米国における図書サービスを中心に、読書障害(Print Disabilit

  • 丸本 明子 花影(抄)

    目次黒 蝶残 月花 影夢 候手 袋 黒 蝶 死相と 死相が </p

  • 岩佐 なを 岩佐なを初期詩選

    幽冥から 鎮魂のためでもなく やすらぎのためでもなく 旅嫌いのはずがひどく山奥の温泉に 入り込んでしまった八月雨降りの宵。 二日前、朝の散歩途中 近所を流れる灰色の川っぷちで まびかれてたどりついた スポンヂのような仔犬を見た。 さっきはさっきで <

  • 岩佐 なを 鏡ノ場

    「ぬけ」 球根を水だけで育てる術を知っていた 陽を浴びて若い緑色をトンガラせてゆく 植物の先端を剣にみたてて 次のしごとに悩む女であった くのいち、くノ一、苦の位置。 ことば遊びでは逃れられない 悲壮になろうと思えば 意に反して悲愴だけが尾をひいた 女の御庭番というのはいかにも邪ノ道 ヘンチクリンでござる––と言われてしまい

  • 岩佐 なを 霊岸その他

    煙突絵巻 おばけ煙突のある町に 美をまさぐる翁が住んでいた話は 伯母から聞いてはいたがすっかり忘れていた いさおを残さずに消えていったその翁の 影は筆で薄墨を刷いたようだったらしい けむりのようでも 時も処もかわって ここに立っていた煙突を誰も覚えていない 丁目は大きくなるほど西にうつり

  • 小説 岩崎 芳生 梢の月

    「おにぎり、交換しようよ」チカコがコンビニのおにぎりをさし出した。 「どうぞ」絹絵は竹皮の包みに四つ並んだ持参のそれを、草に敷いたシートに滑らせた。おっ、美味そう、チカコの手が伸びた。 薄着でも汗ばむほどで、丘をわたる風が心地よい。チカコが淹れたダージリンの温みが喉にほわっと滑っていく。それを言うと、あら、先にカップをほめてほしいな、とそれでなくてもよく動くチカコの目が忙しい瞬きをした。 「見て、カップにエンブレムが打たれているでしょ」 なるほど。大きめなぐい飲みほどの銀製のカップの側面に、ていねいに鷲を象った刻印が鮮明

  • 評論・研究 岩谷 征捷 記憶・記録・受苦・恩寵

    書誌ノート この稿の底本に使用したのは『夢のかげを求めて—東欧紀行』、河出書房新社刊行の初版本で1975年3月25日発行。B6版、全552頁。装丁は駒井哲郎。本文中に著者自身の撮影した写真が、4頁分挿入されている。また、巻末には旅程図(浜田洋子作成)が付く。函とオビがあり、オビの前面に、「空気がきしり音をたてて刻々と夜を凍結させる冬のモスクワ。旅先でのそれぞれの朝に、揺れ動くためらいを鎮めてくれる、例えばひときれのパン、例えば熱いお茶—。/日本に置いてきた〈日常〉との濃密なモノローグをたずさえて白い寒気の国々、ポ

  • 評論・研究 岩谷 征捷 治癒のための小説

    はじめに 島尾敏雄の『幼年記』には二種類の刊本がある。昭和四十二年の徳間書店版と四十八年の弓立社版である。どちらも熱烈な理解者である宮下和夫氏の力で世に出たのだが、その原形は昭和十八年九月に七十部印刷されたという私家版『幼年記』である。 九州帝国大学の史学科を繰上げ卒業した島尾敏雄は、それを親しい人々に配ってから海軍予備学生に志願する。いわば彼自らの手で編集された遺稿集であった。しかし、生還してしまった島尾の生の軌跡を示すが如く、刊本の二冊は順次に前

  • 評論・研究 岩田 光子 陽羅文学私論

    はじめに 陽羅義光氏は現役の作家である。そして文学の仲間として最も身近かにいる親しい作家である。まさに現在進行形の活躍さ中にあり、従ってその文業は未完結である。研究者の仕事としてこれまで、一応作家としての評価が定まった、つまり故人の業績を文学史的に位置づけるといった、多分に教場的講義的作業により多く終始してきた私にとって、ばりばりの現役作家を論じようとするのは本稿が初めてである。仲間うちの作家の作品の批評乃至は感想を綴ったことはいくつかある。が、本格的な作家・作品論に敢えて挑もうとその照準を陽羅氏に