検索結果 全1015作品 公開年逆順 公開年順 作家名逆順 作家名順 作品名逆順 作品名順

  • 小説 大岡 昇平 俘虜記(抄)

    或る監禁状態を別の監禁状態で表わしてもいいわけだ。 デフォー 捉(つか)まるまで わがこころのよくてころさぬにはあらず <r

  • 小説 大岡 昇平 野火(抄)

    二八 飢者と狂者 いくら草も山姪も喰べていたとはいえ、そういう食物で、私の体がもっていたのは、塩のためであった。雨の山野を彷徨いながら、私が「生きる」と主張できたのは、その二合ばかりの塩を、注意深く節しながら、嘗めて来たからである。その塩がついに尽きた時、事態は重大となった。 少し前から、私は道傍に見出す屍体の一つの特徴に注意していた。海岸の村で見た屍体のように臀肉を失っていたことである。 最初私は、類推によって、犬か鳥が喰ったのだろうと思っていた。しかしある日、この雨季の山中に蛍が

  • 大岡 信 巻の四 原子力潜水艦「ヲナガザメ」の性的な航海と自殺の唄

    はじめは何の変哲もない 晴れわたつた四月なかばの火曜の朝だ ボストンに近い海軍基地を 見送る家族の一人もなしに 静かに離れて旅に出る &nbsp; 「グッド・ラック パパ 海ノソコデクラシテクルノネ オネガヒダヨ トツテキテネ ユウレイセンノ ユウレイ タクサン チヤウチンアンカウノ フクロニクルンデ イイカイ パパ」 <p class="sep

  • 随筆・エッセイ 大久保 房男 文藝編集者はかく考える(抄)

    編集者として 《目次》 文学者への尊敬の念終戦直後の新米編集者男尊女卑と言われる者の弁「侃侃諤諤」の経験督促は愛より <B

  • 小説 大久保 智弘 海を刻む

    一 毎日が賑やかなお祭りのように過ぎたあの頃のことを、峻はいつまでも忘れないだろう。 夕食が終わると、おじさんは小さな美奈を抱いて居間に移った。峻は、その背中に、蛙のように両足を広げて跳びついた。 ──やめなさい、シュン。おじさんは疲れているのよ。 ──いいんだ、いいんだ、とおじさんは言った。 ──いいんだ、いいんだ、と峻はおどけた調子で口真似をしながら、濃茶色のソファーの所までぶら下がって行った。おじさんの腕に抱かれている美奈が、肩越しに峻を見てキャッキャッと笑う。お

  • 評論・研究 大原 雄 テロと報復軍事行動の狭間で

    Rさん。 ニューヨークに住むあなたからの手紙を受け取りました。 日本でもアメリカのマスコミに続いて自粛をしたため、見られなくなった9月11日の衝撃的な映像を伴った同時多発テロのニュースが、テレビの画面 から飛び込んできたときに、まず、思い浮かべたのは、あなたが、事件に巻き込まれていないかどうか、ということでした。 手紙によれば、日本からのマスコミの取材者のための通訳兼コーディネイトという仕事をこなすという仕事をなさっているということですね。普段なら、コマーシャルや音楽の仕事をしているというあなたが、この事件以降、日本からの取材陣と一

  • 評論・研究 大原 雄 新世紀カゲキ歌舞伎

    口上 21世紀。新世紀、歌舞伎界は、中村歌右衛門を失った。市村羽左衛門を失った。ふたりは、立女形であり、立役の重鎮であり、何より、20世紀後半の歌舞伎界の屋台骨を背負ってきた。十代目坂東三津五郎の襲名披露の舞台で明けた21世紀、初年の歌舞伎の舞台。そのすべての舞台を観たわけではないが、それでも、地方巡業を含めて、いくつかの舞台を拝見し、私の個人電子マガジン「遠眼鏡戯場観察(かぶきうおっちんぐ)」として毎月連載した。そこに描かれた歌舞伎の舞台の数々。とき

  • 評論・研究 大原 雄 遠眼鏡戯場観察(抄)

    口 上 「歌舞伎の幾何学」の勧め ――ひと味違う歌舞伎の見方 大きな舞台に華やかな色彩。一九九四年四月歌舞伎座。夜の部は「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」の「熊谷(くまがい)陣屋の場」で始まった。私が初めて歌舞伎を見たのは、

  • 評論・研究 大原 雄 ガラスの破片とグイ呑みと……

    “麻薬とセックスに明け暮れるスキャンダラスな青春を題材に、陶酔と幻覚の裏の孤独を描く詩的情感と清潔な感受性。二十四歳のきらめく才能が創る衝撃の「青春文学」” 村上龍の『限りなく透明に近いブルー』の“帯”に書かれてある唄い文句である。この村上の本は、講談社の話では、百三十万部をこえたという。ベストセラーズという“現象”が、小説としての豊かさを示しているとは、思わないが、少なくとも、その作品が、小説として書かれ、また、読者が小説として、それを読んでいる以上、その“現象”を無視するのは、おかしいだろう。そういう意味で、私は、“いま文学に何を求めるか”という題に接したとき、『

  • 評論・研究 大原 雄 座席知盛

    ○ 序 幕 「見るべき程の事は見つ」。歌舞伎の舞台の幕が開く前、場内のざわめきのなかで、座席に着いた私は、いつも、そう呟く。 劇場に用意された自分の座席は、ひとつしかない。恰も自分の人生の一日は、体験した一日しかないように。 劇場では、普通、座席を1等席、2等席、3等席などというように区別する。その区別は、本舞台からの距離、それは空間的な距離もふくめて、決められる。その結果、同じ劇場に入り、同じ舞台を観ながら、座席によって、料金が異なる。そこに

  • 評論・研究 大原 雄 「二つ胴」を裁くということ ~裁判員制度と死刑~

    歌舞伎の「石切梶原」に「二つ胴」という場面がある。 目利きをした刀の試し斬りを乞われて、囚人を二人重ねて斬る場面となるのだが、あいにく、囚人が、一人しか確保できない。牢屋から引き出された囚人の剣菱呑助が、試し斬りという「死刑」に処せられる情けなさを己の名前に因んで「酒尽くし」の科白で語る見せ場がある。「二つ胴」は、事情があって、どうしても、家宝の銘刀を売りたい青貝師(螺鈿の細工師)の六郎太夫が、囚人と一緒に自分の命を差し出し、二人を重ねて試し斬りをして欲しいと、申し出たことから、刀を目利きした、剣の達人でもある梶原平三が、苦肉の策として取る作戦なのだ。 <p

  • コラム 大原 雄 ある人生の軌跡~李ライン警備から公害企業摘発へ~

    田尻宗昭さんとは、東京都の知事が、美濃部亮吉知事の時代(1967年~79年)、所謂「美濃部都政」として世間から注目されているときに、私がNHKの都政担当記者になり、公害局担当になったことから知り合った。1976年のことだから、34年前のことになる。 私が都政担当になる前から、東京の下町を中心に工場から廃棄された6価クロム鉱滓が各地に棄てられているのが住民の告発で明るみに出て、東京都が、その対応に追われているときであった。マスコミも注目し、全国的なニュースとして、大きく取り上げられていた。東京都公害局の部長であった田尻さんは、熱心に現場に通って、脚を悪くされてしまったほ

  • 大手 拓次 陶器の鴉 他

    陶器の鴉 陶器製のあをい鴉(からす)。 なめらかな母韻をつつんでおそひくるあをがらす、 うまれたままの暖かさでお前はよろよろする。 嘴(くちばし)の大きい、眼のおほきい、わるだくみのありさうな靑鴉</r

  • 評論・研究 大須賀 克己 ホリスティック・カウンセリング

    《目次》 第一章 社会は悩みに溢れている 不確かな未来と変わりゆく社会 大海に遭難しないために 自己発見への旅 抑圧による自己破壊 第二章 カウンセリングの真髄 心からクライアントの話に耳を傾ける <a href="#C08

  • 評論・研究 大須賀 克己 気の極意(抄)

    《目次》 第三章 「般若」の意味 1 「般若心経」漢訳(玄奘) 2 物事を大きくみる 3 知識はこだわりをつくる 4 善悪を超える 第四章 観自在菩薩の慈悲心 1 心の音を聞く 2 他人とともに生きる

  • 随筆・エッセイ 大杉 榮 自叙伝(抄)

    「それぢや歩いて行かうぢやないか」と僕は云ひ出した。「君等の中の一人が真先きに歩くんだ。其の足あとを伝つて僕が真ん中になつて行く。其のあとへ又、君等の一人が殿(しんがり)になつて僕の荷物をかついで行く。そして先頭のものと殿のものとは時々交代するんだ。僕だつて、時には先頭に立つたり、殿になつて荷物を持つたりしたつていゝよ。」 俥夫等は此の提案を喜んだ。 「わしらだつて、うちのお神さんや奥様とお約束して、なあに大丈夫でさあつて引受けて来たんですからね。今更とても

  • 評論・研究 大西 操山 批評論

    創作と批評 名評の得難き、殆ど名作の得難きに下らず、「ハムレット」を評する者、ゲーテの如きあり、其批評の至妙なる、マコレーをして、嘆美と絶望とに余念なからしめたり、然れどもシェーキスピアーのゲーテを得る迄には殆ど二百年を経過せり、夫れ文学及美術上の創作は主として結構的作用に属す、理解的慧眼を以て其結構の妙処を穿(うが)つは是れ批評家の本領とする所なり、批評家と創作家とは頗<rp

  • 評論・研究 大宅 壮一 「無思想人」宣言

    「きさまはエタイの知れぬやつだ。右か左かハッキリしろ」 ということを私が最初にいわれたのは、今から二十何年か前、警視庁の特高取調室においてである。 「あなたの方できめてください。実はぼく自身にもよくわからないんですよ」 と答えるほかはなかった。検挙された理由は、そのころ多かったシンパ事件で、現在左派社会党代議士になっている細迫兼光君から求められるままに、そこばくの金を出したのがいけなかったのである。長谷川如是閑氏がつかまったのと、たしか同じケースだった。そのころまで進歩的知識人の総元締のような立場にあった如是閑氏は、これを機会に元の日

  • 随筆・エッセイ 大町 桂月 十和田湖

    一 五戸 本州の北に尽きむとする処、八甲田崛起(くつき)し、其山脈南に延びて、南部と津軽とを分ち、更に南下して、東海道と北陸とを分ち、なほ更に西に曲りて、山陽道と山陰道とを分つ。長さ数百里、恰(あだか)も一大長蛇の如し。中国山脈は、其尾也。甲信の群山は、其腹也。八甲田山は其頭也。頭に目あり。凡(およ

  • 大塚 甲山 冬の蝶・農夫

    冬の蝶 灰色深き冬空の 見る/\雨のこぼれきて 膚(はだへ)に告ぐる寒き日を 覚束なくも飛ぶ蝶よ。 春は菫の花に泣き 夏は小百合の香に酔ひて 闌なりしその夢は 萩吹く風にさめたるか。 つらく悲く淋くて われも泣きたきこの雨よ