検索結果 全1044作品 公開年逆順 公開年順 作家名逆順 作家名順 作品名逆順 作品名順

  • 岡本 彌太 瀧(抄)

    目次 瀧(其の参) 父の寝室 −病床篇− 桜 橋 鉛筆の走書き(妹へ 四) 椎の稚葉(妹へ 五) 三稜燈火 </p

  • 岡本 彌太 室戸灘付近

    万法流転有情悉皆肢体離反の沙の時限を吼える濤――ここに埋つて裂けてしまつた漁村の数々がある。帆船がある。 (一つは崩潰した路にのつかつたまゝ行路の無宿の不思議な宿になつてゐた) 天下一の荒灘――青鮫の横行闊歩する室戸灘。 けふは榕樹、橘の枝濃く霽れてどちら向いても蒼茫と鱶の顎(あぎと)のきかきか光る黒い印度藍の圧倒だ。 <

  • 戯曲 岡本 綺堂 近松半二の死

    登場人物 近松半二 竹本染太夫(たけもと そめだいふ) 鶴澤吉治 竹本座の手代(てだい) 庄吉 祗園町(ぎをんまち)の娘 お作 女中 おきよ 醫者

  • 評論・研究 岡澤 祐吉 明治天皇の初代侍従武官長(抄)

    宮城退出後の事故 事故がおきたのは明治四十一年(一九〇八)十一月二十一日の午後だった。この日、侍従武官長・岡澤精(くわし)は、明治帝に華頂宮(かちょうのみや)郁子妃殿下の葬儀に出席することを述べ、午後零時三十分ころ皇居

  • 短歌 沖 ななも 樹木礼賛

    たちくらむ春の名残りの木下闇かるがるきみの腕にいだかる 『衣裳哲学』 すれちがう人の匂いの微かのこりくろぐろとたつ冬の針葉樹 つかの間の休息ならむ細枝に鳥一羽きて黒くとまれり にんげんら好みて集う陰の部分朴の木のした魂のまうしろ 不穏ともいうべきほどに累々と稔らざる実の無花果樹(いちじく)はあ

  • 小説 加賀 乙彦 フランドルの冬

    第一章 病院司祭 1 「さあおいで。子供たち(メ・ザンフアン)!」鋭い張りのあるバリトンである。ロベール・エニヨンは、ぼってりした腕を力まかせに振った。 「さあ、さあ!」 黄色い歓声をあげて、我先にと腋の下をすりぬけていく子供たちにロベールは目を細めた。こそばゆい快感だ。が、一人足りない。 「スザンヌ。フランソワはどうした?」 </

  • 評論・研究 加藤 一夫 民衆藝術の主張

    一 民本主義もしくは民主々義の論議が社会の各方面に行はるゝと共に文壇にも亦民衆藝術に就て語る者が多くなつた。そしてその何れも皆民衆藝術そのものに対して異論を挿まうとするのでない様であるが、今の民衆藝術家若(もし)くは民主藝術の主張者の大部分が民主々義若(も)しくは

  • 評論・研究 加藤 弘一 コスモスの知慧 石川淳論

    ――どの花がお好きですか? ――たとえば、コスモス。 1. 石川淳の小説には「気」が氾濫している。「けはひ」「けしき」「氣合」といった漠然とした情趣をあらわす言葉はもとより、「いぶき」「ふぜい」「かをり」「いきほひ」「血氣」「殺氣」「元氣」「妖氣」「陰氣」「粛殺の氣」と「気」に係る語彙は枚挙にいとまがない。しかも、ただ頻用されるだけではなく、叙述のここぞという勘所、決め所は「……けはひであつた」、「……け

  • 短歌 加藤 克巳 ひとりのわれは

    緑蔭(ミドリノカゲ)夢かたむけてのそりのそり風のながれへ白猫(ハクベウ)のあゆみ 『螺旋階段』 旗ばかり人ばかりの駅高い雲に弾丸(たま)の速度を見送っ

  • 小説 加能 作次郎 乳の匂ひ

    ……その頃、伯父は四條の大橋際に宿屋と薬屋とをやつてゐた。祇園の方から鴨川を西に渡つて、右へ先斗町(ぽんとちやう)へ入らうとする向ひ角の三階家で、二階と三階を宿屋に使ひ、下の、四條通りに面した方に薬屋を開いてゐたのだつた。そして宿屋の方を浪華亭といひ、薬屋の方を浪華堂と呼んでゐた。 私は十三歳の夏、この伯父を頼つて京都へ行つたのだつた。中学へでも入れて貰ふつもりで行つたのだが、それは夢で、着いた晩、伯父はお雪さんといふ妾上(

  • 小説 嘉村 礒多 七月二十二日の夜

    歳月の経つのは早いもので、小説家S氏が物故してから、あわたゞしく三年が過ぎた。明七月二十三日は銀座裏の日本料理屋「丹頂」で三周忌の小宴が知友の間だけで催されるといふ、つまり祥月(しやうつき)命日の前の日、私は世田谷(せたがや)太子堂に遺族を訪ねることにした。私は世間からはS氏門下とまで言はれるほど死者の晩年は側近に侍(じ

  • 戯曲 河竹 黙阿弥 島鵆月白浪 全五幕の序幕

    しまちどりつきのしらなみ 口上 若葉の闇に奥山から西と東へ別れたる千太(せんた)は親の世になきを白川宿(じゆく)で伯父に逢ひ聞(きい)て泪(なみだ)</rub

  • 評論・研究 河東 碧梧桐 季感に就いて

    季感、季語、季題等について、以前いろいろに考へ、研め、悩みもしたことがあり、又たそれを書いたこともあります。それ以上、今日新たに会得したこともなければ、是非書いて見たいと思ふこともありません。強ひて書けば、以前のおさらひをするに過ぎないのであります。 以前西洋を旅行してゐる時、或人が独逸(ドイツ)の何処かで、丁度名月の夜、二三の同胞と酒肴を携へて月を観に郊外の丘に出掛けた、すると下宿の女主人が怪しんで、あなた達は何しに行くのか、へーあの月をどうして、と言つて、結局日木人の

  • 随筆・エッセイ 河野 仁昭 天野忠さんの生と詩

    1 上野瞭先生は高名な児童文学者ですが、ある日、同志社女子大学の講師控室にいましたらやってこられて、「ぼくたちは晩年学というのをやっているんですが、一度講演をお願いできませんか」といわれるんです。「晩年学て、なんですか」とたずねましたら、「老人問題をみんなで考える会なんです。老人学じゃパッとしませんので、晩年学ということで……」。 哲学者の片山寿昭先生と上野先生が主催しておられることもそのとき知ったのですが、児童文学と晩年学、どこでどう結びついているのかと思いましたら、「ぼくも、もう年寄りの仲間でしょう。だから」と、大変明快なお

  • 花森 安治 見よぼくら一銭五厘の旗

    美しい夜であった もう 二度と 誰も あんな夜に会う ことは ないのではないか 空は よくみがいたガラスのように 透きとおっていた 空気は なにかが焼けているような 香ばしいにおいがしていた どの家も どの建物も つけられるだけの電灯をつけていた それが 焼け跡をとおして 一面にちりばめられていた 昭和20年8月15日 あの夜 もう空襲はなかった もう戦争は すんだ

  • 随筆・エッセイ 芥川 龍之介 或旧友へ送る手記

    誰まだ自殺者自身の心理をありのままに書いたものはない。それは自殺者の自尊心や或は彼自身に対する心理的興味の不足によるものであらう。僕は君に送る最後の手紙の中に、はつきりこの心理を伝へたいと思つてゐる。尤(もつと)も僕の自殺する動機は特に君に伝へずとも善(い)い。レニエは彼の短編の中に或自殺者を描いてゐる。この短篇の主人公は何の為に自殺するかを彼自身も知ってゐない。君は新聞の三面記事などに生活難

  • 小説 開高 健 玉、砕ける

    ある朝遅く、どこかの首都で眼がさめると、栄光の頂上にもいず、大きな褐色のカブト虫にもなっていないけれど、帰国の決心がついているのを発見する。一時間ほどシーツのなかでもぞもぞしながら物思いにふけり、あちらこちらから眺めてみるけれどその決心は変らないとわかり、ベッドからぬけだす。焼きたてのパンの香りが漂い、飾窓の燦(きらめ)きにみたされた大通りへでかけ、いきあたりばったりの航空会社の支店へ入っていき、東京行きの南回りの便をさがして予約する。香港で一日か二日すごしたいからどうしても南回りの便でな

  • 評論・研究 角田 勝彦 ニュールネサンス クラブ 創設マニフェスト 2006年6月

    創設パートナー(川口健一、寒河江正、田原茂行、角田勝彦、野崎茂) 1. われわれは、第二次世界大戦後の日本と世界で生じている大変容が、解放と発展の反面、人々に不安と閉塞、不満と抗争をもたらしていると認識する。われわれは、いま、混迷の漂流に抗する確固たる碇を必要としている。 (説明) 二十世紀は、戦争と激動の世紀であった。とくに第二次世界大戦後の世界で生じている政治、経済、科学技術、社会、文化など各面で

  • 笠原 三津子 マヌカンの青春

    1 体温は感じられないだろう 三角形、楕円形 の寄せ木に鋲を打ちつけ しっかり立っているように見えても 足をごらんなさい 細くくびれた足首の先に 人間によく似た小さな足がついている 詩人Mはつぶやいた &lt;この足が悲しい マヌカンが なまめかしければ なまめかしいほど……&gt; 青い空をバックに 人はみな死に絶えた 乾

  • 小説 梶井 基次郎 檸檬・蒼穹・闇の絵巻

    檸檬 えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧(おさ)へつけてゐた。焦燥(せうさう)と云はうか、嫌悪と云はうか──酒を飲んだあとに宿酔(ふつかゑひ)があるや