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盤獄の一生

紫色昏昏たり奥秩父の連山

 児玉の山林から本庄、境と十一ヵ村に通ずる水道樋がある。

 滔々と流れる樋の水。

 山道に立って樋を見上げている樵夫二、三憔悴した顔。

 水の流れ。

 農家の前に老婆と子供。

 コトゴトクが疲れ切っている。

T「こんなに山から水を取って」

 樋の水滔々と流れる。

T「山林が枯れてしまう」

 児玉の山林の遠景。

T「山林が枯れるとおれ達も」

T「山林と一緒に乾干になる」

 児玉の山から水道樋は武蔵野の曠野を横切って、

T「山を枯らしてこの水」

 カメラは水道樋の流れに従って移動する。

T「この水、そも何に使う?」

 滔々たる水、流れて          (О・L)

 更に流れて、             (О・L)

 豪壮な邸宅の塀を越えて行く水道樋、やがて滝となり、飛沫を上げて、玉と散る。ここは本庄の代官武富多平太が豪奢を極めた別荘である。

庭 園

 御殿女中が多数、庭のせせらぎに(はぎ)も露わにジャブジャブキャッキャッと騒いでいる。

T「ても麗らかな眺めじゃ喃」

座 敷

 武富多平太数多の美女を侍らせて山海の珍味を前に悦に入っている。

 三輪嘉五郎、御前に伺候して、

T「一大事です」

 何事じゃ、と多平太。

T「村民の中に、水道樋の破壊を企てる奴があります」

 嘉五郎、

T「思想が悪化しとりますぞ」

 殿様考えた。

T「腕の立つ奴を雇うて見張らすか?」

 左様、と嘉五郎。殿が

T「誰か、適当な人物が……」

 アリマスッと、嘉五郎、一膝乗り出した。

T「私の友達で……」

 殿様の前に並んだ喰い荒らされた膳の大写し。(О・L)

廊 下

 腰元どもがその膳を運び去る。

 カメラは、膳の中の魚の大写しにまで寄ってそのままその魚につけて横に移動する。                  (О・L)

中間部屋で

 その魚を鍋に入れてグタグタ煮ている。殿様のお下りを中間どもが有難く頂戴しているんです。

 美味そうな、その匂いがそこの武者窓から外へ漏れて、

表 を

 折から通りかかった浪人者が鼻をクンクンいわせて立ちどまりました。

 阿地川盤嶽です。やがて彼、

 余りに浅ましい自分の姿に気がつくと苦笑して、独り言。

T「浪人していると卑しゅうなる」

 盤嶽、歩きだした。

 たそがれ近い、熊谷の町はずれ。

盤嶽の住居

 帰って来た盤獄。

 上り框のところにぬがれてある履きものを見て、

 「客人かな?」

 客は座敷へ座った。

 旧友、三輪嘉五郎。

 盤嶽「久しぶりじや喃」と、フト嘉五郎の持って来た風呂敷を見て「ナンだそれ?」

 嘉五郎包を開く。

 取り出した袴。

T「わしの古だが……」

 盤嶽が

T「有難いが、浪人には袴は要らん」

 と男やもめの乱雑な台所でバタバタやりだした。

T「今茶を出すぞ」

 嘉五郎が

T「ついでに、働き口を持って来た」

 えッ、と盤嶽。

 嘉五郎が

T「十五両三人扶持」

 盤嶽、夢かと喜んだ。

 嘉五郎、

T「不足だろうが、この不景気だ。がまんしろ」

 盤嶽が、「ナンのナンの不足どころかこの不景気に、もったいない」と、喜んだ。

 茶を入れて座って「すまんなア」と改めて感謝した。

 袴──

 盤嶽、フト立ち上った。きたない押入れから位牌を取り出して、その前に合掌した。

 嘉五郎が呆れて、

T「案外しおらしいところがある喃」

 盤嶽が

T「おれの祖父も、一生を浪人で暮した」

T「親父も死ぬまで浪人だった」

T「おれもまた……と考えると、近頃少し淋しかった」

 が、おかげで、と喜んで笑った。

                     (F・О)

鎮守の森(夜)

 村人たちの集会です。

 壇上の代表が叫ぶ。

T「山林が枯れては、我々、生きて行かれない」

T「水道樋を破壊しろッ」

T「樋を破壊しろッ」

 これが彼等のスローガンです。

 壇上の男叫ぶ。

T「が、誰がやる」

 沈黙する一同。

T「仕損じたら命がない」

T「仕損じなくとも命はない」

 黙りこくった村人の背後で一人の浪人が叫んだ。

T「おれがやる」

 壇上に上った浪人、関屋(みち)之助。

T「正義のためにッ」

 と叫ぶ。                (F・О)

多平太の居室(朝)

 ホーと殿様喜んだ。

T「三人扶持で承知したか?」

T「それは安い」

 ご苦労、ご苦労とほめられた。

 嘉五郎が、

T「なかなか、うんとは云いませんでしたが」

 殿様、御満悦で

T「ソチの、外交手腕が、見事じゃから喃」

 嘉五郎恐縮します。

 殿様、早速恩賞を下されます。

T「げに、持つべきものは」

T「朋友です」

丘の上

 昨夜嘉五郎にもらった袴をつけて、盤嶽散歩にでかけました。

 草原に腰をおろして、

 遠く水道樋を眺めている。

 盤嶽の心も日本晴れです。

 そのそばへ一人の浪人者が座り込んだ。昨夜、鎮守の森で正義の雄叫びした関屋です。

T「折入って、御相談したいことがあるんですが」

 盤嶽、変に思った。

 関屋、四辺を見廻して小声で、

T「正義のために、いいですか、正義のために」

 遙か滔々たる水道樋の水の流れ。

 附近を通りかかった目明しらしい男が二人の姿を見て、そっと丘の下で二人の話を盗み聞く。

 とも知らず関屋が盤嶽に、

T「君が、正義を愛するの士であるならばだ」

T「喜んでこの企てに、賛成して下さると思う」

 盤嶽考えた。

T「あの樋を壊して何人救われます」

 関屋が「少くとも」

T「三千人は浮かび上る」

 と云って、懐中から、金包を取り出して、

T「決行後、高飛びの費用だ」

 半分を盤嶽の手に握らせて

T「仕事は、命がけだが、報酬は、少ない」

 しかし、と関屋、

T「この金には、三千人の村人の血と涙がにじんでいる」

 盤嶽考え込んでしまった。

 丘の下の目明しの眼がかがやく。     (F・О)

盤嶽の住居(夜)

 盤嶽一人考え込んでいる。

 前には、先刻渡された金包が置いてある。

T「三千人が浮かび上る」

 盤獄考えた。

 壁に掛けた嘉五郎が心づくしの袴。

T「十五両三人扶持」

 夜はいたくふけた。

T「この不景気に」

T「しかも、生れて初めての就職だからなア」

 盤嶽ゴロンと横になる。

T「壊すか」

 金包みと袴。

T「護るか」

 盤嶽このジレンマに悩みました。

 表に気配がするので、立って、

 表戸を開くと転がり込んだ関屋猷之助あわてている。

T「駄目だ()れた」

 どうしたんだ? と盤嶽。

 関屋、それに答えず。そこにある金包を見て急いで懐中にして

T「村人に申し訳がない」

T「この金、返却してくる」

 その時、表に乱れた人の足音。

 関屋驚き、後をたのむと、塀に跳びつく。

 表戸押し破って乱入する捕方。

 狐につままれた形の盤嶽。

 先刻の目明しが盤嶽を見て

T「こ奴も一味だッ」

 と叫ぶので、盤嶽面喰った。

T「違う」

 と云うに早、腕を取る捕方。

T「無法なッ」

 夢中で愛刀日置光平、鞘走らせて横薙ぎに、斬ったッ。

 裏口から跳び出して、

夜更けの町を

 盤嶽逃げた。

 ばったり一人の侍と出会った。

 三輪嘉五郎だ。先生カンカンにおこっている。

T「貴様、よくもッ」

 盤嶽が、イヤ、

T「違う。全く」

 嘉五郎「云うなッ」

T「今更、云い訳ッ」

T「おれの名折れだ」

 違うと云うに、と盤獄。

 嘉五郎なおも罵声を浴びせる。

T「斬るべきだが、貴様とわかればアトで俺がッ」

 と、

T「おれが殿に、顔向けならん」

 追ってくる捕方。

 嘉五郎あわてて、

T「逃げろ、逃がしてやる」

 しかし、と盤嶽、いろいろと云い訳せんとすれど、嘉五郎、聞かずにおこっている。

 走りくる捕方。

 盤嶽、仕方なく、逃げ出す。走りながら、

T「一言もひとの云う事聞こうともせず」

 盤獄スタコラ走ります。

T「おれが、おれがの一点張り」

町はずれ

 土蔵のあるところで盤嶽、ようやく追手を逃れて

T「あれが、まことの朋友か」

住居の

 壁に掛った袴です。

元に戻って

 盤嶽、人の気配に隠れると、

 例の正義の士、関屋献之助が目明しに縛り上げられて、やってくる。

 関屋、半泣きで謝まる。

T「おれはそんな、危険人物ではないんだ」

T「ただ、金がほしいから引き受けたまで」

 関屋、目明しにペコペコ頭を下げて頼む。

T「最初から危い事は、その馬鹿侍にやらせて」

T「おれは、コッソリ金を持って逃げるつもりだった」

 聞いた盤嶽、驚いた。

 関屋なおも目明しに頼む。

T「十両やるよ、逃してくれ、頼む」

 駄目だ、と目明し泣き面の関屋を引ッ立てて行く。

 盤嶽、彼等の後姿を見送って、

T「情ない世の中だ」

 さびしく、とぼとぼ歩き出す。      (F・О)

T 「騙されて──」

街 道

 盤嶽、旅に出た。遠く秩父の連山を眺めて感慨深し。

 道ぼたの乞食、めくらと書いた札を首から下げている。

 盤嶽、同情して銭を与えて歩き出す。紙入を落す。

 めくらの乞食が、パッチリ、眼を開いた。

 紙入を拾おうとした時、

 盤嶽、紙入を落した事に気がついて、振り返る。乞食あわてて元の場所へ戻る。盤嶽、紙入を拾って呆れた、「貴様よくもッ」

 乞食、平気な顔で、めくらの札を裏返す。

 ナンと、つんぼと書いてある。

 盤嶽、呆れてものが云えん。

T「騙されて──」

他の街道(村の神社の附近)

 道ばたに人が集っている。

 盤嶽、通りかかって立ちどまる。

 人々の背後から、のぞき込むと、

 例の五目ならべです。

 盤嶽、また一杯、ひっかかった。

 金をはらって、ほうほうのていで、去る。

T「また、騙されて──」

 盤嶽、立ちどまる。

T「日が暮れる──」

村はずれの街道(夕方)

 困り果てた盤嶽です。

 と、かなたから提灯の火が見える。

 盤嶽、喜び声をかける。

 隣村へ用足しの帰りらしい若夫婦です。

T「道に迷って、困っているのです」

 若い女房が、

T「幸い、私どもの家は旅寵でございます」

 有難い、と盤嶽二人の案内で行く。    (О・L)

土塀のあるところ──

 若い主人が立ちどまる。

T「煙管入れを忘れて来た」

 一ッ走り取ってくると女房に、

T「お客様を御案内してひと足先へ……」

 提灯を女房に渡して引ッ返す。

 二人ブラブラくる。

 (丁度そこは土地の郷士木ノ津康彦の門前です)

 門内からバラバラと用心棒らしい侍が五六人走り出た。

T「泥棒だッ」

 と叫びながらかなたへ走り去る。

 盤嶽、若い女房、騒ぎに驚いて立ちどまったが、そのまま歩き出す。

武甲山麓の安宿たなやの表

 たなやと書いた表の行燈。

その一室で

 風呂から帰って盤嶽、のびのびと寝転がる。

 先刻の若い女房と、その実父である、たなやの主人が入って来た。

 盤嶽、起き上って「先程は……」

 女房切り出しにくそうにモジモジしていたが、あの……

T「夫が……」

 「どうかなされたか?」と盤嶽。

 女房が、

T「泥棒と間違えられまして」

 盤嶽「ナニッ、泥棒」

先刻の泥棒と叫んで走った侍どもとその門

T「木ノ津様の御屋敷へ、連れて行かれました」

 盤嶽、笑って、

T「間違いとわかって謝まりにくるでしょう」

 親父そばから口を出した。

T「ところが、相手が悪うござりました」

 盤嶽、冗談から真顔になる。

 親父が、

T「村一番の、大地主で、ごろつきの親分です」

 若い女房が心配そうな顔。

T「とっても非道い奴なのです」

 盤嶽、考え込む。

 親父が頼む。

T「娘が可哀そうです。後生ですから」

T「旦那様のお力で、婿を取り返して下さりませ」

 頼まれて盤嶽、義憤を感じて敢然として立ち上った。(F・О)

木ノ津屋敷の附近(夜)

 愛刀日置光平たばさんで盤嶽のこのこやって来た。

 (たなやの提灯もつこと)

 半丁程、かなたに黒く、木ノ津の屋敷が見える原ッパの細い道──

 と、二間ほど行手にヌーと立った奴がある。

 尻端おッて、一本差している用心棒です。

 雲つくばかりの大男、

T「たなやからやって来たのか、お侍」

 盤嶽、悠々、

T「頼まれてたなやの養子を救けに行く」

 用心棒、せせら笑った。

T「行っても無駄だよ」

 盤嶽、構わずノコノコ通ろうとする。

 用心棒が立ちふさがった。

T「駄目だッてえのに」

 トンと盤嶽の胸を突いて、

T「馬泥棒は当分屋敷へ監禁しておくとお頭がおっしゃっていた」

「わかったか、侍えさん?」と、用心棒。

 盤嶽、成る程。

T「成る程、そういう事なら」

 用心棒が、

T「やめて帰るか」

 盤嶽、なかなか、

T「イヤ、行ってお頭とやらに、(はな)してくる」

 用心棒、おこって、この野郎とばかり抜き討ちに来た奴を、

 どっこい、と盤嶽ひと足退った。

T「こんな奴が相手では」

 腰の刀をスラリと抜いた。

T「日置光平よ、泣きとうなる喃」

 ウヌッ、と用心棒野郎が、突いて来た。

 その真上で、

 星が、一ツ飛びました。

たなやの表では

 若い女房が独りさびしく夫の救われて帰ってくるのを待っている。

 年老いた父親が嘆き悲しむ娘を慰めて力づける。

木ノ津屋敷内部

 阿地川盤嶽、しのび込んだ。

広間では

 ごろつきども大勢、今賭場が開かれている。

 勝負に夢中になっている間に、盤嶽なお奥へ進む。

その一室

 人の気配がしたので、盤嶽縁側の闇からのぞいて見ると、

 たなやの婿が、笑いながら、はなしている。

 そばに、木ノ津の親分とその娘、用心棒二、三、皆がうれしそうです。

 若主人が親分に、

T「泥棒はひどいですなア」

 親分のさした盃に娘の酌で悦に入ってるたなやの婿。

 盤嶽、呆然とした。

 若主人、なおも、

T「明日は、たなやから女房が迎いに参りましょう」

 親分が笑って、

T「来たら、泥棒は手討ちにしたと云ってやるさ」

 たなやの若主人、大喜びで、「手討ちはいいですなア」

T「そこで、女房驚いて」

 クスクス、笑って、

T「首でもつってくれんか喃」

 木ノ津の親分大喜びです。

T「そうなれば、離縁状を書かずにすむ」

 わいわい騒いで酒宴です。

 庭の闇、盤嶽先刻からつっ立ったまま動きません。

たなやの表で

 哀れ若き妻は、この不徳の夫の帰るのを、首を長くして、待っているはずではありませんか。

 春とはいえど、武甲山麓の、夜風は寒い。

木ノ津屋敷の附近の野原を

 青白い月光の下を、盤嶽が独りとぼとぼと去って行きます。

T「世の中はおそろしい」

 盤嶽、つくづく云う。

T「日置光平よ、許してくれ」

 盤嶽、そのまま、

 たなやへは帰らず、

 放浪の旅へ出た。            (F・О)

以前の代官武富多平大の居間

 多平太が三輪嘉五郎を呼び寄せてきく。

T「盤嶽が日置光平の名刀を持っていたと云うが」

 嘉五郎、確かに所持しておりました。殿が、

T「余は永年その日置光平を探していた」

 嘉五郎、平伏した。

 殿が、

T「余は日置光平が欲しいぞよ」

 そりゃ無理な事と、嘉五郎。

 殿が、

T「早速、盤嶽を探し出せ」

 嘉五郎が「しかし殿様」

T「日置光平は、彼奴命よりも大切にしております」

 殿様、頓着なしに「苦しゅうないぞ」

T「斬って捨てても苦しゅうないぞ」

 乱暴極まる話です。

T「余は日置光平が欲しいぞよ」

       (このタイトルО・Lして)

街道を

 三輪嘉五郎を先頭に深編笠の一隊が、日置光平を求めて旅に出た。(移動)空に、白い流雲、二片、三片、

T「その頃──」

寺院の境内

 祭礼で老若男女がワンサ詰めかけている。

 その宝物殿の入口に貼り紙がしてある。

 宝物拝観 無料(この字大きく)

 盤獄ただなら見せてもらおうと、大勢の拝観人の後から続く。(О・L)

 出口と書いた貼り紙、その下に小さく下足料三文いただきます、と書きそえてある。

T「盤嶽またまた騙された」

境 内

 群衆の中を盤獄プンプンおこって帰って行きます。 (F・О)

街 道

 馬の背中で盤嶽、つくづくと云いました。

T「世の中には嘘をつかん人間が」

T「一人ぐらいはあってもよいと思うがなア」

 何を云い出すのかこの人は? と云った顔で馬上を見上げた馬子が云う。

T「あります……旦那」

 盤嶽、馬子を見て「こ奴また」

T「お前もまた嘘を云う!」

 ところが馬子「御存じありませんね」

T「正直忍斎さまを旦那は知りませんね」

 馬上の盤嶽が「何だ其奴は?」

 馬子は得々として語ります。

T「有名な嘘ぎらいの先生です」

T「金箔つきの嘘ぎらいです」

 盤獄、半信半疑で聞く。

 馬子歩きながら談す。

T「こんな話があります」

T「ある夕方忍斎先生が」         (О・L)

さびしい峠道

 忍斎先生一人トボトボ帰ってくるところ、

 追剥が現われてダンビラを突きつけた。

 先生、大地へ座りこんで懐中物をさし出す。

 中味を調べた追剥氏。

T「これで有り金そっくりか?」

 先生ガタガタ震えながら、

T「確かに、そっくりです」

 よしッ、と、追剥氏は刀を収めて立ち去る。

 後で命拾いをした先生がフト袂を調べて驚いた。

 あわててオーイと去り行く追剥を呼ぶ。

 かなたで振りかえる追剥氏。

 先生スタコラ走って行く。

 追剥氏面喰って逃げ出した。

 ついに先生、追いついてフーフー云いながら、

T「袂に二朱(こぼ)れていた」

 と、呆れ返ッている追剥に二朱をつかませてペコペコ謝る。

T「嘘をついてすまなかったと先生は追剥に謝まったんです」

元の街道

 語り終った馬子の話、馬上の盤嶽すっかり共鳴してしまった。

T「どこだその先生のお宅は」

T「早速お会いしたい」

 盤嶽、矢も楯もたまらない。

T「おれはそんな人間に飢えている」

 馬子から先生の住居を聞くと、盤嶽馬に一鞭当てると、疾風のごとく走り出した。

 走る盤嶽の馬とすれ違ったのが、日置光平を求めて旅に出た三輪嘉五郎とその一党です。一同深編笠。         (F・О)

忍斎住居の表(正直庵と書いた額がある)

 盤嶽の乗り捨てた馬が、つないである。

 遠く山道を馬子が走ってくる。

その内部

 衝立、額、掛軸の扁言雙言、ことごとくが正直の二字を主題としたものです。

 立派な本棚にギッシリ詰った書籍。

 忍斎先生すでに齢不惑(よわいふわく)に達せんとする白髪の老人です。

 その前に欣然と座す盤嶽、嬉しさのあまりおそろしく能弁です。

T「先生は万人のなし能わざる事を立派になされました」

T「虚偽と欺瞞で、ぬりつぶされたこの世に、先生のごとき人が、おいでになる」

 盤嶽、嬉しくて嬉しくてたまらない。

 先生はコソバユイような態度で長い髭をなぜてござる。

 盤嶽、やたらに感激しております。

T「その先生と膝をまじえてお話しが出来る」

T「実に欣快にたえんです」

 先生相変らず(あご)ひげをなでながら、

T「お賞めなさると、わしは恥かしい」

 盤嶽が「何をおっしゃいます先生」

T「どうか先生、先生だけは」

T「先生だけは一生嘘をつかずにこの世の中と闘って下さい」

 先生は変な顔をしました。

T「あんたはお若い。わしを誤解している」

T「わしは一生に一度、大きな嘘をつく決心だ」

 「御冗談を」と盤嶽。

 忍斎先生、イヤイヤ、

T「だから常日頃、正直にしている。その大嘘をつくまではネ」

 盤獄、訳のわからん顔です。

 忍斎先生が、

T「わしの日頃正直であればある程その嘘は大きくなる」

 盤嶽、もうものも云えない。

 忍斎先生が、

T「ごらんの通りわしは金に不自由のない隠居の身」

T「これがわしの道楽じゃ」

 盤嶽、無言です。

 先生なおも、

T「一体どんな嘘をついてやろうかなと」

T「あれやこれや考えている時の楽しサ」

 黙れッ、盤嶽席を蹴って、立ちあがった。

 地団駄ふんでくやしがる。室内の正直の額が落ち、衝立てが倒れて、

 盤嶽、烈火のごとくおこって出て来た。もう夕暮です。

 先刻の馬子(三次)が待っています。

 盤嶽。

T「馬は要らん、帰れッ」

 金をはらってスタスタ行く。

 呆然と見送る三次。

 盤嶽、柴を背負った若い娘とすれ違う。

 それが馬方三次の妹らしく、

 三次を見て走り寄った。

T「大変よ兄さん」

 これこれしかじかと早口に云う。

 三次驚き、盤嶽の後を追う。

附近の山道

 盤嶽、呼びとめられて振り返る。

 追って来た三次。

T「もう日が暮れます」

T「今晩は、私の家へ、お泊りなさいませ」

 馳せつけた娘ともども云う。

 盤嶽、もうカー助です。

 うるさい、と振り切って走る。

 追いすがって三次。

T「実はネ旦那」

T「そこの丘の上に侍が十人ほど」

 「なア妹」「本当ですよ」と娘。

 盤嶽、信じられません。

 三次が

T「行ったら命が危うございます」

 こ奴ッと盤嶽。

T「まだ嘘をつくか貴様」

 盤嶽、振り切って走り出す(移動)

 歩き出して、

T「本当かも知れんぞ」

 とも思ったが、

T「嘘だ、嘘にきまっている」

 そうだ、確かに嘘だ、と、また走り出す。

T「おれは他人に恨まれる覚えがない」

 すたこら走る。

T「嘘だ、嘘だとも」

 遂に盤嶽。

丘の上

 頂上まで来た。人の気配はなくさびしいものです。

T「やっぱり嘘だった」

 予期したことだが盤嶽落胆した。

 さびしかった。

 突ッ、三輪嘉五郎の一隊が物かげから現われ盤嶽を取り囲む。

 盤嶽、驚いた。と云うよりも、狂喜した。

 雀躍した。

T「本当だッ」

 大きな声です。

 嘉五郎達が面喰った。

 盤嶽、勇躍、日置光平を、引ッこ抜く。

T「本当だったア」

 盤嶽、喜び勇んで斬って行く。

 が、相手は大勢、遂に足を斬られて崖を落ちる。

 崖の中途の切枝に、とっつかまって盤嶽が

T「これはあんまり」

T「本当過ぎた」

 と叫ぶ。

 馬子の三次と妹お時さんが駈けつけてくる。 (F・О)

馬方三次の宅(二階屋根裏)

 片手を包帯した盤嶽が机に向って本を読みながら、片手で火鉢にかかった土鍋をかき回している。

 (あれから一月ほどたっている)

階 下

 三次仕事から帰って馬にまぐさをやる。妹のお時が飯の用意をする。三次二階へ

T「先生御飯ですよ」

二 階

 盤嶽、返事をせん。

階 下

 妹の給仕で三次食い始める。また先生と呼ぶ。

 返事がないので、変だなアとおもった。

 お時さんが

T「朝から一度もおあがりにならないのよ」

 「朝からッ」三次驚いて二階へ、

T「身体でも悪いんですか?」

二階で盤嶽

T「まことにすまん」

 と謝まって、

T「今日から飯は食わん事にした」

階 下

 「冗談じゃねえぜ先生、人間が飯も食わずに生きて行けますか。先生」と三次です。

階 上

 盤嶽、改まって云い出した。

T「お前の厄介になって、早、一月になる」

階 下

 三次「早えもんですね」と、食いながら、

二階の盤嶽

T「お前は決して金持ちでない。物持ちでない」

階 下

 いやだぜ先生、変な事云っちゃ、と三次。

T「貧乏人ですよ」

二 階

T「だから」

T「だからおれは、当分飯を食わんと決心した」

階 下

 「何を云い出すんだね」と三次立ち上る。

二 階

T「飯を食うと金が要る」

 上って来た三次、盤嶽のそばの火鉢の上の土鍋をのぞいて見て、ナーンだと笑って、

T「小豆を煮ていらっしゃるんですか?」

 と坐り込んだ。

T「お汁粉が欲しけりや欲しいとひと言お時に」

 盤嶽が、

T「この小豆で誰が、汁粉をこしらえると申した」

 叱られて三次「だって先生」

 盤嶽が、

T「これは飯の代りに食うのだ」

 飯の代りに? 三次吹き出した。

T「飯の代りにわざわざ何も小豆を買って」

 盤嶽が、

T「買って来たのではないッ」

 三次また叱られた。「じゃどうしたんです先生」

 盤嶽やがて、

T「まことにすまん」

 すまんではわかりませんよ、と坐り直して三次が見れば、成る程、口をあけて中から小豆のはみ出した枕です。

                    (F・О)

T「飯を食うと金が要る」

河 原

 空は日本晴れ。

 盤嶽河原に坐って、枕に砂利を詰めている。

 三次の妹お時さんが、そばで手伝っている。

 子供が四、五人見ていたが「アッチにいい砂利がある」と教えます。

河原の砂利場

 ここはこまかい砂利ばかりです。

 喜んで盤嶽、子供に手伝わせて枕を作ります。

 お時が持って来た針で縫い上げた。

 突然堤の上に着流しで尻端おって股引はいた一見請負師らしい男が叫びます。

 振り返る一同。

 その男が、

T「砂利を盗んでは困りますよ」

 盗む? と盤嶽きき返す。

 その男が、

T「いくら砂利だって、捨ててあるんじゃありませんよ」

T「ここは、私の砂利場ですからね」

 盤嶽呆れた。

T「砂利も無代ではないと云うのか」

 枕の砂利を河原へブチまけた。      (F・О)

三次宅二階の屋根裏

 盤嶽の傷も略々全快したので、お時が繃帯を解いてやっている。

階 下

 医者の竜伯がたずねて来た。

 三次、こまった顔で座布団をすすめる。

 竜伯上り框に坐り込んで早速、

T「治療代が滞っているが……」

二 階

 盤嶽とお時暗い顔。お時立って階下へ行く。

階 下

 竜伯が三次に、

T「払えんだろうと思ったので」

T「よい考えを持って来た」

 お時茶を持ってくる。竜伯が、

T「先生にわしのところで働いてもらう」

 三次とお時さん驚いた。

二階の

 盤嶽も驚いてきき耳立てる。

階 下

 竜伯上気げんで笑顔。

T「わしの代理で、薬代を取り立ててもらうのじゃ」

 これが盤嶽の新職業です。

二 階

 盤嶽考えた。

T「借金の取り立て」

 考えてみても人のよい盤嶽には出来そうもない。

 「いやな仕事だ」

 と思ったがフトそばを見ると、

 土鍋の小豆。

 盤獄、暗い心で、

T「ぜいたくは云えん」

 考えた末、盤嶽ついに決心しました。   (F・О)

 医者の竜伯が帳面をくりながら歩いている。

 盤獄その後から苦り切ってついて行く。

 ある一軒の家の前で、

 竜伯、ニコニコと盤獄に帳面を渡す。

 盤嶽、家へ入って行く。              (О・L)

 出てくる、金を竜伯に渡す。(たえず無音)

 竜伯ホクホク喜んでおりますが、盤嶽は苦り切っている。(О・L)

 ホクホク金を勘定して歩く竜伯。

 苦り切ってる盤嶽。

ある家の表

 (表には仕立物一切、ノリアリ升の桝形の札がつってある)

 きたない家である。

 竜伯、次はここですよ、と云う。

内 部

 盤嶽のっそり入って来た。

 「ごめんッ」声をかけたが答がない。

 「不在かな?」上り框に腰掛ける。

 ガタッとふすまの向うで音がする。

 盤嶽変に思った。

 女のすすり泣く声がする。

 盤獄、そっと上ってふすまを開けて驚いた。

 老婆と娘(十六)が、相抱いて泣いている。

 驚いて盤獄が見た。老婆の真上の勝手元の梁木に、きたない帯がブラ下っている。

 老婆死のうとする。盤嶽とめた。

T「どうか死なせて」

 盤嶽、無理に二人を坐らせた。泣き伏す二人。

 訳をきくと、

T「借金がかさみまして」

 婆と娘、交々涙を流して談す。

T「とても月末が、越せません」

 盤嶽たちまち感激した。「馬鹿な事を申すな」

T「借金取りとて人間だ。血も涙もある」

 二人を元気づけ

T「今日の出来事を話せば、一月や二月待ってくれる」

 泣いている二人の肩をたたいて「心配するな」

T「今日はおれが、借金取りを追い返してやる」

 夢かと喜ぶ母娘。

 医者の竜伯先刻から待っている。

 米屋の丁稚が掛取りに家へ入って行く。

 竜伯何をしているのかなアと首を長くしている。 (О・L)

内 部

 米屋の丁稚が盤嶽の前に腰掛けて、

T「先月も先々月も、一文もいただきません」

 母娘の代理で応対している盤嶽事情を話した後で、

T「今日の出来事は別だ」

 盤嶽一流の熱弁です。

T「死だ。いいか、死だぞ」

T「死をかけようとした者がいるのだ」

 丁稚は何が何だかわからないが盤嶽は必死です。

T「人の生命に比べて、金銀宝玉なぞ何物だ」

T「二月三月はおろか、一年でも二年でも喜んで待ってやるべきだ」

 「そんな馬鹿な話がッ」と丁稚。

 「うるさいッ」と大喝した盤嶽。

T「帰れッ」

 丁稚泣く泣く帰ります。

 竜伯が先刻からこの様子をのぞいていた。

 入って来て、

 「先生一体私はどうなります」

 盤嶽「アッ」とはじめて気がついた。

T「まことにすまん」

T「今云ったような事情だ。帰ってくれ」

 「帰りますがね」と竜伯「この帳面の方はどうしてくれます」

 盤嶽が、

T「借金取りの代理は願い下げる」

T「金にはならんが、この方が気持が晴れる」

 とうとう商売をフイにしてしまった。

 竜伯がブツブツ云って出て行く。

入れちがいに酒屋と家主が入って行く。

内 部

 二人の前に盤嶽例のごとく熱弁を振るッている。

T「今日の出来事は別だ」

T「死だ。いいか、死だぞ」

 酒屋の番頭がききました。

T「また、やりましたか?」

 盤嶽……「何を申す。何をまたやった?」

 酒屋が、

T「ここの婆アの狂言首吊りは、有名なもので」

T「月末になると一度は必ずやるのです」

 盤嶽、またまた騙された。おこって奥へ駈け込むと、家財道具一切合財なくなっている。

 盤獄驚く。

街 道

 老婆と娘荷物をまとめて、夜逃げならぬ、

 昼逃げです。

元の家内部

 家主が盤嶽を責めている。

T「お前さんが逃がしたんだ」

 酒屋が帳面を突きつけて、

T「この払いはどうして下さる?」

 盤嶽これにはこまり果てた。       (F・О)

三次の宅(夜)

 盤嶽を中心に町の債権者たちが集りました。

 医者の竜伯に米屋、酒屋、家主等々。

 お時さんは室の隅で見ている。

 三次が、

T「困りましたなア」

 医者の竜伯が「困った。本当に困った」

T「まるで忍斎先生のような人だ」

 ナニッと、今まで黙っていた盤嶽が叫んだ。

T「あんな奴と軽々しく比べるな」

 竜伯叱られました。家主が盤嶽の日置光平にそっと触ってみた。

T「立派な刀ですね」

 盤嶽、刀を引き寄せて

T「命よりも大切な品じゃ」

 一同の地主の佐兵衛がジロッと日置光平をにらんでいましたが、

 やがて、

T「わしが先生の借金を全部払いましょう」

 一同驚く。三次もお時さんも、盤嶽も。佐兵衛が、

T「その代り、先生にわしのところの西瓜畑の番人をしてもらう」

 盤嶽「お安い御用です」

T「今日から向う、まる三月」

 と云って佐兵衛、

T「西瓜を一ツも盗まれずに守る事」    (F・О)

西瓜畑の夜

 広々とした西瓜畑。

T「一ツも盗まれずに」

 見廻っている盤嶽。

T「まる三カ月」

 月光を浴びて畑に仁王立ちの盤嶽、

 人影を見てスワと走り寄ると、

 お時さんが、夜食を持って来たのです。

 番小屋へ入って、

 (ちょっとしたラブシーンの如き物を加筆します)

 腕白小僧が泥棒に来たり、

 いろいろあって、

 盤嶽が云いました。

T「一ツも盗まれずに三カ月」

 お時さんが、

T「盗まれたら、どうなりますの」

 盤嶽その時は、

 「その時は、日置光平よさよならだ」

 と云う。                (F・О)

村の通り(昼)

 その日置光平を求めて、

 三輪嘉五郎がこの辺りに現われました。

 地主の佐兵衛の門をおとずれる。     (F・О)

西瓜畑の夜

 お時がさびしそうに

T「今晩一晩で」

T「お約束のまる三カ月ですね」

 盤嶽はうれしそうです。

 三次が荷物を持ってくる。盤嶽は旅装を整える。

 夜が明けたら早速出発するつもりです。

 その時、

 かなたに泥棒の影。

 盤嶽、追っかけた。

T「一ツも盗まれずに」

 お時も三次も続きます。

 泥棒逃げた。

 盤嶽追いついて格闘、

 坂道を西瓜がコロコロ転がります。

 川へ、落ちて流れる。

 そこへ三輪嘉五郎、無頼漢数名をかたらって盤嶽を襲撃してくる。

 立ち廻りと追っかけと、西瓜の奪いッこのラグビーと、いろいろあって、とど、盤嶽、西瓜を取り戻して悠々と、

元の西瓜畑へ

 引きあげて来て驚いた。

 一ツもないのです。無数にあったあの西瓜が、一ツ残さず、影も形もなくなっている。

 残ったのは今奪い返して来た奴、ただ一ツ。

 盤嶽、しばらく呆然と立っておりましたが、

 トボトボ去って行く。

山道を

 西瓜泥棒の一隊が山ほど西瓜を積んで(車に五、六台)逃げて行く。

地主佐兵衛の家の表

 盤嶽、無腰で出て来た。

 涙が一筋、銀の糸のように、溢れ落ちた。

T「日置光平よ、さよなら」

 トボトボと去って行く。

内 部

 佐兵衛は刀を調べて大喜びです。

 さびしく去って行く盤嶽。

別の道

 三次とお時が帰り道で、オヤッと思って木かげに隠れた。

 西瓜泥棒の一隊が車をひいてやって来た。

 二人とも後を追う。

通 り

 去って行く盤嶽。

佐兵衛の家

 西瓜の車はその門内へ入る。

 三次の驚き、このことを知らすべく走る。

街 道

 走り行く盤獄。

 三次走って、走って、

 追いついた。

佐兵衛の門前

 佐兵衛の召使どもが西瓜を車から門内へ運ぶ。

内 部

 佐兵衛日置光平を側に、先刻の西瓜泥棒どもに銭をくれてやる(彼等は佐兵衛一味です)

T「西瓜は一つも盗られずに」

T「こんな立派な刀が手に入る」

 喜んでいる佐兵衛。

街道で

 三次から次第を聞いた盤嶽、おこって走り出す。

 走って、

佐兵衛の家に

 とび込んで佐兵衛を張り倒す。

 足蹴にして怒ってとび出した。

 三輪嘉五郎がうろうろしていたが、

 佐兵衛の門から出て来た盤嶽を見て後を追う。

 盤嶽ブリブリ怒ッて走っている

                     (移動)

 追う嘉五郎一味

                     (移動)

 ジャンジャン、スピードをかけて

T「盤嶽どこへ行く?」

T「江戸へ」

T「騙されに」

夜明けの街道。

盤嶽スタコラ走ります。          (F・О)

 

盤獄の一生

原作……白井 喬二

スタッフ

監督……山中 貞雄

撮影……吉田清太郎

キャスト

阿地川盤嶽………大河内伝次郎

三輪嘉五郎…………山本礼三郎

関屋猷之助…………芝田  新

武富多平太…………谷  幹一

たなやの若女房……吉野 朝子

若主人………………片岡 左近

親父…………………実川延一郎

木ノ津親分…………市川小文治

その娘………………山田五十鈴

用心棒………………山本 冬郷

妹お時さん…………大倉千代子

 

 

日本ペンクラブ 電子文藝館編輯室
This page was created on 2019/10/28

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山中 貞雄

ヤマナカ サダオ
やまなか さだお 映画監督、脚本家 1909年~1938年 京都府出身 1927(昭和2)年、マキノ御室撮影所に入所後、シナリオを嵐寛寿郎に評価される。さらに、1932(昭和7)年2月に公開された第1回監督作品「磯の源太抱寝の長脇差」(嵐寛寿郎プロダクション)が、注目される。1933(昭和8)年、日活太秦撮影所に移籍。1934(昭和9)年、シナリオ集団「鳴滝組」を結成。1937(昭和12)年、「人情紙風船」を最後に徴兵され、1938(昭和13)年、従軍先の中国河南省で戦病死。5年間で26作品を監督製作したが、現存するのは「人情紙風船」など3作品。サイレント映画はひとつも残されていない。「風流活人剣」は1934(昭和9)年3月公開のサイレント映画で、片岡千恵蔵、山田五十鈴らが出演し、「髷をつけたる現代劇的傑作」と評された。

掲載作は1933(昭和8)年の日活作品。「日本名作シナリオ選」(上巻:2016年10月第2版、日本シナリオ作家協会編)に所収。文末に当時のクレジットタイトルを付した。作品中に現在では不適切な用語がふくまれていますが、原作を尊重してママとした。

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