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検索結果 全1058作品
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随筆・エッセイ わが家わが兄
肩こり期 年は取りたくないものだ。気力が萎え、活力が失せ、とりわけ、ことさらのことに関しては急速に衰えてくる。ときに手をつないで歩きこそすれ、妻の躰に触れることさえ珍しくなる。共に齢を数え、さすがに加齢を偲ばせるようになった妻と二人、あのリビドーなるものは一体どこに行ってしまったのかと、苦笑することしきりの昨今ではある。 リビドーとは、人の心的エネルギーの源に当てた精神分析概念で、C・G・ユンクによれば、それは純粋に精神的エネルギーで
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随筆・エッセイ 父と子、母と子
夫婦関係の教育力 1. 現代の親子関係(二人の母親) 筆者は今、長年の念願かなって、庭つき一戸建て住宅を建築中である。大工さんは、もうすぐ四十に手のとどくころの、まさに働き盛りであるが、こまめによく説明しながら、大変熱っぽく建ててくれている。そこでつい、感謝の気持ちもあって、「いちど、夜飲みにいきましょうか」といってしまった。お酒好きのようでもあったから、まさか断られるとは思ってもいなかったのに、「俺、家に帰って、子どもを風呂に入れるのが日課になっているから」という返事が、即座に返って来た。あっ、そり
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短歌 地母神の鬱
放浪の父と穏しき母の血と分ちて天秤座の吾が揺れやまず 『吾が揺れやまず』1983 拒むごとき砂の嵐にふぶかれて修羅なす髪が地に影おとす 吹かれつつ象</r
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小説 仕立屋マリ子の半生
一 馭者(ぎよしや)権六(ごんろく)氏の女房のマリ子が、まだ権六氏の存在を知らないで、ちんと愛くるしく引き緊つた腮(あご)を、あ・ら・もおど
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小説 静物
一 家を持つて間のない道助夫妻が何かしら退屈を感じ出して、小犬でも飼つて見たらなどと考へてる頃だつた、遠野がお祝ひにと云つて、嘴(くちばし)の紅い小鳥を使ひの者に持たせて寄来(よこ)してくれた。道助はその籠を縁先に吊しながら、此の友人のことをまだ一度も妻に話してなかつたのを思ひ出した。 「古くからの親友なんだ、好い人だよ。」と彼は妻に云
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小説 判任官の子
一 父は八の字ひげを生(は)やしてゐるくせに腰弁だから、子供のくせして洋服が着たくても仲々買つてもらへない。 「中学へ行くやうになつたら買つて下さる」 母は言つてなだめてくれるが、中学生が洋服着るのは当り前のことだし、それまでには未だ随分年間がある。第一中学生の着る洋服はあれは羅紗(らしや)でない、あんなだぶだぶの
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小説 佃島ふたり書房(抄)
第二章 藤の花薫る (より抄出) 正午をすぎて、猛烈に暑くなってきた。 駿河台(するがだい)下で都電を降りると、金属質を思わせる日ざしである。停留所の安全地帯に、柏餅の葉が五、六枚ちらかっている。干からびきって、踏みつけると、セルロイドの音を鳴らした。 三省堂書店の向うの屋根に、鯉のぼりが古着のように垂れて
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俳句 稽古
あらそひの縺(もつ)れすぐ解け初雀 「新年」 古墳の森越えて初鶏応へあふ 沈没船ここと揚ぐる灯(ひ)去年今年(こぞことし) 岬山を富士に似せゐる初霞 潮
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俳句 矍鑠(かくしやく)
苗床の残りの松に初日ざし 新年 若潮を汲むに一火を焚く礁(いはほ) 初東風(はつこち)や尻逆立てて鴨餌ばむ 年祝(ほ</
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小説 鬼灯(ほおずき)の女
江戸川公園に近い、牛込と小石川の境にある電車道、もとの15番の関口町の電停前を小石川側に渡り、すぐ眼の前のトロフィーやカップを商う徽章屋とパン屋の間の横丁をはいり、一町ばかり行くと、江戸川の流れに架かる大滝橋の袂に突きあたる。その橋へ出る手前、横丁にはいってすぐを左へまがると露地があり、そこに輝夫のアパートがある。 木造モルタルの総二階、別にアパートの看板が出ているわけではないので、外から見たところ、しもた屋とまったく変わりがない。というより、しもた屋の内部をアパートに改造したというのが真相らしい。むろん玄関も塀もなく、露地の側にむきだしに格子がある。 <p
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評論・研究 地方行政の達人(抄)
序章 やれば出来ると思っていても…… 江戸川区ただひとりの名誉区民、そして「建区の父」 この日も、朝からみぞれ混じりの泣き出しそうな空であった。 平成十三(二○○一)年一月二十六日午後、東京都江戸川区春江町三丁目、東京都立瑞江(みずえ)葬儀所の収納室には、八○名余りの人々が、それぞれの想いをこめて集まっていた。 前夜の通夜は、折からの雪に見舞われて
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短歌 パリ日乗
ユーロスターよりパリ北駅の降り立ちに想いの巡り胸迫り来る ひさびさの駅前広場パリ嬉し笑顔のひとはサ・ヴァと出迎う セーヌ河渡りて鳥の一羽舞い二羽の立ち舞い群れ移り行く 地下鉄の熟れたる匂い親しかる暗きホームに酔いどれひとり 道端のカフェで飲むカルヴァドス渋き香りも久しぶりなり 学窓の思い出深し下町のカルチェラタンの匂いもあらた ランボーに悩みひねもす格闘せしパリ大学の階段教室
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詩 蹄鉄屋の歌
泣くな、 驚ろくな、 わが馬よ。 私は蹄鉄屋。 私はお前の蹄(ひづめ)から 生々しい煙をたてる、 私の仕事は残酷だろうか。 若い馬よ、 少年よ、 私はお前の爪に 真赤にやけた鉄の靴をはかせよう。 そしてわたしは働き歌をうたいながら、 ──辛棒しておくれ、 すぐその鉄は冷えて
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詩 馬上の詩
わが大泥棒のために 投縄を投げよ わが意志は静かに立つ その意志を捕へてみよ。 その意志はそこに そこではなく此処に いや其処ではなくあすこに おゝ検事よ、捕吏よ、 戸まどひせよ。 八つ股の袖ガラミ捕物道具を、 そのトゲだらけのものを わが肉体にうちこめ 私は肉を裂いてもまんまと逃げ去るだらう。 仔馬、たてがみもまだ生えた許
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詩 丸の内・銀座ほか
《目次》 東京駅 丸の内 地下鉄 銀 座 東京駅 東京駅は ウハバミの 燃える舌で 市民の 生活を呑吐する 玄関口、
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シナリオ 3年B組 金八先生
登場人物 坂本 金八 (国語教諭) 乙女 (大学四年生) 幸作 (浪人) 千田 校長 国井美代子 (教頭) 乾 友彦 (数学) 北 尚明 (社会) 遠藤 達也 (理科) 小田切 誠 (英語) 小林 花子 (渡辺・家庭科) 本田 知美 (養護) ...
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評論・研究 手紙
手紙の名称 『唐書(とうじょ)』という本に見える話である。ある日、穆宗(ぼくそう)皇帝が柳公権(りゅうこうけん)(七七八~八六五)を呼んで、書法についてたずねた。かれは、静かに答えた。「心正則筆正」。心の正しいものは、筆法もおのずから正しいもの、と。なにしろ、柳公権といえば
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俳句 春の句など
▲枯川先生今日獄を出づると聞き あら清し麦秋の天に練雲雀時鳥(ほととぎす)四谷の空の月七日注:枯川は堺利彦の号。堺は「萬朝報」で日露戦争反対の論陣を張っていたが、社主が開戦論に転じたために「萬朝報」を離れ、幸徳秋水らと「平民新聞」を創刊した。芋銭は挿絵画家として「平民新聞」に参加した。(電子文藝館編輯室)</div
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評論・研究 文学と世論 ─『人生と文学』より─
文学と政治との間に考えられる関係を例證するような短い講義をしたいと私はずつと考えていた──すなわち、どんな問題であろうと、これほど相反する問題はなさそうにみえるが、しかも密接な関係をもつている問題なのである。諸君も御承知の通り、諸君のなかから日本の将来の文学の、新しい時代の文学の、創造者のなかに加わるものがでてきてほしいという期待を、私は度々述べてきた。このことに関連して日本文学の創造は(文学とは特に小説と詩とをさすのであるが)、私が考えるところでは、政治上からみても必要なことだと言いたい。「政治上からみて必要なこと」というのが諸君には強すぎる言葉と思えるなら、国民として必要なもの、と
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小説 祖母(あじ)さん
1 日本というのは小さな国だ、とずっと思ってきた。 わたしの机の上には古い大きな地球儀があって、校正刷りを点検する仕事に疲れると、わたしはよくそれをくるくる回す。行ったことのない国ばかり……。しばらくでこぼこした表面を眺めてから、かすかなため息をつき、最後にはたいてい母国である日本の細長い国土を眺める。どうしてなのかはわからない。わからないけれども、きっとそうして自分の存在場所を確かめているのだろう。確認が済むと、わたしはいつも、ふむと一声呟いて仕事に戻る。「ふむ」にはその時々でいろいろな意味合いがあったけれども、「小さ