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蹄鉄屋の歌

泣くな、

驚ろくな、

わが馬よ。

私は蹄鉄屋。

私はお前の(ひづめ)から

生々しい煙をたてる、

私の仕事は残酷だろうか。

若い馬よ、

少年よ、

私はお前の爪に

真赤にやけた鉄の靴をはかせよう。

そしてわたしは働き歌をうたいながら、

──辛棒しておくれ、

  すぐその鉄は冷えて

  お前の足のものになるだろう、

  お前の爪の鎧になるだろう、

  お前はもうどんな茨の上でも

  石ころ路でも

  どんどんと駈け廻れるだろうと──、

私はお前を慰めながら

トッテンカンと蹄鉄うち。

ああ、わが馬よ、

友達よ、

私の歌をよっく耳傾けてきいてくれ。

私の歌はぞんざいだろう、

私の歌は甘くないだろう、

お前の苦痛に答えるために、

私の歌は

苦しみの歌だ。

焼けた蹄鉄を

お前の生きた爪に

当てがった瞬間の煙のようにも、

私の歌は

灰色に立ちあがる歌だ。

強くなってくれよ、

私の友よ、

青年よ、

私の赤い(ほのお)

君の四つ足は受取れ、

そして君は、けわしい岩山を

その強い足をもって砕いてのぼれ、

トッテンカンの蹄鉄うち、

うたれるもの、うつもの、

お前と私とは兄弟だ、

共に同じ現実の苦しみにある。

日本ペンクラブ 電子文藝館編輯室
This page was created on 2002/10/03

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小熊 秀雄

オグマ ヒデオ
おぐま ひでお 詩人 1901~1940 北海道に生まれる。少年時より人夫や職工をして北海道を流浪。1928(昭和3)年上京、1931(明治6)年プロレタリア詩人会に参加、口語を駆使し旺盛に時代を撃ち続けた。

掲載作は、1935(昭和10)年『小熊秀雄詩集』耕進社刊に拠る。

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