検索結果 全1039作品 公開年逆順 公開年順 作家名逆順 作家名順 作品名逆順 作品名順

  • コラム 神山 暁美 瞳 湖 初出年: 2019年

    東海道新幹線を米原から北陸本線に乗り換え、しばらく行くと、左側に小さな湖が見えてくる。余呉湖である。水上勉は小説「湖の琴」を、ここから書きはじめている。――余呉の湖は滋賀県伊香郡余呉村にある。琵琶湖の北端にそびえる賤ヶ岳を越えて、約一キロ半ばかり、山を分け入った地点である――と。 この湖を知ったのは、高校二年の夏休みだった。ふるさとの大垣駅から学校までのバスを見送り、級友と共に補習をズルして電車に乗った。石川啄木に憧れ、短歌や詩を雑誌に投稿したりして、自分の時間を文学の方向へ傾けようとしていた頃だった。 正面に賤ヶ岳、その山裾に抱かれるように余呉湖は

  • コラム 飯塚 裕子 活動を通しての出逢いと気付き 初出年: 2019年

    講談師・神田松鯉先生にご紹介いただき、ペンクラブに入会。そしてAmazonで電子書籍を出版していたことで、入会とほぼ同時に電子文藝館委員会にも入らせていただきました。群馬でイラストレーターをしておりますが、突然自分に寄せてきた文学の大波にめちゃくちゃ戸惑いました。電子文藝館委員に承認された会議後、帰りの高崎線の中で、「地方の広告畑にいる自分が、この委員会に何が貢献できるのだろう?? どうしよう~、辞めたら松鯉先生に二度とお会いできないかな。でも会費払っちゃったし…」と、あれやこれやと考えがぐるぐる。いつもは長くてヒマつぶしに困る乗車時間が、あっという間に感じたのでした。 <p

  • コラム 結城 文 英国議会見学記 初出年: 2018年

    BBCなどを視聴していると、Brexitを半年後に控えたメイ首相が、イギリス議会で演説をしている映像が放映されている。何となくロンドン滞在中に見学したキャメロン首相時代の議院のことを思いだしたりする。 二〇一五年二月十三日(金)、日本の国会を見学したこともない私が、休会中の英国議会を見学することになった。九十分のガイド・ツアーである。ビッグベン・タワーとヴィクトリア・タワーの二つの塔の間、二八七メートルの正面をテムズ川沿いに展開するウェストミンスター宮殿は、ロンドン一の、いや英国一の景観といっても過言ではない。 これこそ六〇〇年の歴

  • コラム 大原 雄 南島紀行(上)─ 三度目の沖縄行:「平和の日」─ 初出年: 2018年

    ボーイング767—300ERジェット機が、那覇空港に着陸した。250人余りの客席は、ほぼ満席だった。2018年5月18日、午後。天気は晴れ。気温は28度だった。 &nbsp; 沖縄の地にジェット機の車輪がついた衝撃が体に響く。その瞬間、私の思いは、1971年の沖縄へタイムスリップする。当時の沖縄は、まだ、アメリカの軍政下にあった。アメリカによる沖縄統治(占領)は、1945年から72年5月まで27年間続いた。ちなみにアメリカを主体とした連合国軍による日本の占領は、1945年から52年までの7年間。20年もの格差がある。沖縄

  • コラム 大原 雄 南島紀行(下)─ ふたりの又吉さん ─ 初出年: 2018年

    沖縄には、芥川賞受賞作家が4人+1人いる、と思っている。大城立裕(「カクテル・パーティー」)、東峰夫(「オキナワの少年」)、又吉栄喜(「豚の報い」)、目取真俊(「水滴」)。さらに、厳密には沖縄出身ではないが、父親が沖縄県名護市、母親が加計呂麻島(鹿児島県の奄美群島)の出身ということで、私にとって沖縄に所縁があるように思える大阪出身の又吉直樹(「火花」)が連想されてしまう。又吉直樹さんには、いずれ父の地、沖縄を舞台に作品を書いて欲しいと思っている。私にとって、「ふたりの又吉さん」というイメージには、親近感がある。ふたりの又吉さんの内、ここでは、沖縄・浦添市在住の又吉栄喜さん(以下、敬称略)

  • コラム 塚田 三千代 「2017年ノーベル文学賞」によせて─交差する小説と映画─ 初出年: 2018年

    カズオ イシグロの2017年度ノーベル文学賞受賞は、世界の平和と核ミサイル実験反対を願う者にとって心を癒されるニュースであった。なぜノーベル賞が創設されたかの理由を知るからこそ共感できる。 イシグロのノーベル文学賞受賞に親しみを感じられるのは、彼が6歳の時に両親と共に長崎をはなれて英国に移住し、帰化してイギリス人として作家活動を続ける国際人であるからだ。受賞対象となる小説は『忘れられた巨人』(The Buried Giant 2015)であるが、イシグロの他の小説2作、『日の名残り』(The Remains of the Day<

  • 小説 伊神 権太 信長残照伝 初出年: 2018年

    -わたしはお類、吉乃と申します &nbsp; プロローグ キリスト教が江戸幕府によって弾圧される前、種子島に欧州の鉄砲が初めて伝来したとされる一五四三年(天文十二)葉月二十五日〔新暦九月二十三日〕から約二十年後、「日欧文化比較」で知られるイエズス会宣教師のポルトガル人ルイス・フロイスが日本で布教を始めている。時あたかも信長は戦乱に次ぐ戦乱の只なかにあった。信長がこの世に生を受けたのが一五三四年五月十二日〔新暦六月六日〕。日本で三十五年に及ぶ布教生活ののち長崎を終の住処に生涯を終え

  • コラム 清水 純子 不滅のサム・シェパード 初出年: 2018年

    天国に転居なさってから一年以上たちますが、お元気でお過ごしでしょうか? 先日、映画 『ディフェンスレス/密会』 でサム・シェパード様の生前のお姿を拝見しました。懐かしさを抑えきれず、日本から突然お手紙を差し上げる失礼をお許しください。20世紀アメリカ演劇の旗手と騒がれ、人気映画俳優でもあったサム・シェパードの73歳での早世を嘆くファンの声は天国まで届いているでしょうか? 劇作家として『埋められた子供』(1979年)ではピューリツァー賞を受賞なさった貴殿は、演劇界の輝く星でした。創作の才能のみならず、端正な容姿にも恵まれた貴殿のまわりは、常にファンでいっぱいでした。日

  • コラム 飯島 一次 私の好きな忠臣蔵 初出年: 2018年

    三百何年前の今日は赤穂浪士が本所吉良邸に討ち入った日です。 毎年、十二月十四日になると、TVのニュースなどで上記の決まり文句が流れるが、正確には少し違う。江戸時代は陰暦なので、太陽暦とは日にちがずれている。元禄十五年はおおむね西暦一七〇二年と重なるが、陰暦十二月十四日は一七〇三年の一月末。 それはともかく、私が子供の頃は年末になると、映画界が競って各社オールスター忠臣蔵映画を製作。TVでも芝居でも忠臣蔵は大人気だった。 憎たらしい悪役吉良上野介による浅野内匠頭いじめ。堪忍袋の緒を切って殿中で吉良に斬りつける美男の内匠頭。即日切腹、お

  • 随筆・エッセイ 平林 朋紀 「幸せ」は「食」にあり(抄) 初出年: 2017年

    =日本の危機を救う正しい「食」と「心」= はじめに 「日本の人口減少と人口の老化は黒船以上の脅威です。経済やテクノロジーではなく、人口問題をもっと論じなければならない。意識革命が必要です」と語ったのは、フランスの著名な歴史人口学者エマニュエル・トッド氏です。 確かに、日本では2年ごとに、鳥取県が無くなるほど、人口減少が進んでいます。戦後のベビーブームといわれた1949(昭和24年)には269万7000人を数えた年間出生数は、今年は100万人の大台を切ったと、報じられました。もはや

  • 小説 飯島 一次 ミカエル、あるいはシュメールの鼠 初出年: 2017年

    「ふるえる足取りで乗物を降りた私は、壮大きわまりない鉄壁により現世から遮蔽された異世界へと近づいていた。突然、視野が開け、金婚式のデコレーションケーキのごときクリーム色の城がそそり立っていた。そのけばけばしい姿を一目見るなり、堪えがたい憂いが私の胸にしみわたった。その城こそ、現存する最古の怪物ミカエル、あるいはミシェル、マイクル、ミゲル、遠くはシュメールの鼠と呼ばれる原始神の神殿なのであった」 &nbsp; タイトルは『シュメールの鼠』だったのか。今では記憶は曖昧だ。憶えているのはそれだけで、著者も出版社も定かではない

  • 小説 上島 秀友 漂流 初出年: 2017年

    九月、台風が過ぎ去った後の沼島の海は荒々しかったが、どこまでも青かった。波が岩に当たっては砕け散り、青い海をバックに白い飛沫(しぶき)を飛散させている。何度も何度も繰り返される海辺の営み、それを何気なくぼんやりと眺めていた私の中に一筋の風が忍び込み、遠い過去の記憶を呼び起こした。目の前の海辺は何処かに消え、いつの間にか私は追憶のなかの海辺に立っていた。そういえば、あのときも海辺に佇んで海を見ていた。……。ずっと、ずっと海を眺めていた。朝の海、雨の海、夕焼けに輝く海、夜の海が目の前にあった。

  • 志田 道子 詩集『エラワン哀歌』(抄) 初出年: 2017年

    生きる真似 生きる真似をしていたら 「もう時間切れだよ」と 風が通り過ぎた 苦しむ真似をしていたら 「大変だね」と 雲が夕陽を浴びて漂っている そう しあわせとはきっとこんなもの 与えられた時間は きっと永遠 一時(いっとき)も永遠も あの輝く青空の向こうの 果てし

  • 小説 北村 純一 兄ィと呼んだ芭蕉(抄) 初出年: 2016年

    ―其角の思い出 &nbsp; 〈まえがき〉 俳聖(はいせい)松尾芭蕉(まつおばしょう)(以下芭蕉)の高弟であり、『夕すずみよくぞ男に生れけり』の句の作者として有名な宝井其角(たからいきかく)</r

  • 随筆・エッセイ 大原 雄 茶色い戦争と茶褐色の戦争画 初出年: 2016年

    幾時代かがありまして 茶色い戦争ありました &nbsp; &nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbs

  • コラム 櫻井 千恵 作品との出会い 初出年: 2016年

    小田原の文芸愛好会で今年の秋の文学散歩は神奈川県二宮町と決まった。 二宮町は徳富蘇峰記念館や、南駅前に建つガラスのうさぎ像で有名だが、わけても夭折の作家・山川方夫終焉の地であることに心を惹かれる。 電子文藝館では昨年12月にその彼の短編小説『待っている女』が掲載された。また『他人の夏』が中学2年生を対象にした<読書の時間に読む本>に載っていることも興味深い。私がこの作家に出会ったのは35年ほど前で『夏の葬列』だったが、いつの頃からかこの作品が中学校の教科書にも取り上げられているという。少年の記憶の中で海辺の夏の日が鮮烈に描かれていて、その物語性にも惹

  • 小説 奥沢 拓 雪嵐の夜オオカミは恋をする 初出年: 2016年

    ………つい先ほどまではあたたかい春の陽(ひ)射しがふりそそいでいたのですが、辺(あた)りの樹々がザワザワッと騒ぎ始めると、急に空は一転かきくもりちらほらと雪まで降ってきました。 「父(とと)さま、父(とと)<

  • コラム 向山 肇夫 新哲学の道 初出年: 2015年

    ―ノートルダムからエッフェルへ 今年も何人の若い日本人が休暇旅行でパリを訪れたろうか。パリでは、映画「ダ・ヴィンチ・コード」の舞台になったルーブル美術館を訪れるのもよし、ヴェルサイユ宮殿を見学するのもよい。しかしもし許される自由時間があれば、日本の若者たちにぜひセーヌ川にそってノートルダム寺院からエッフェル塔までの道を歩くことをお勧めする。若い足なら1時間くらいで散策することができる。それはかつて西田幾太郎京都大学教授(著書『善の研究』)が、京都の疏水に沿ってある“哲学の道”を歩きながら思索をめぐらしたように、若い柔軟な頭脳には、大いなる刺激を与えて

  • 評論・研究 小張 アキコ 「世界のなかの日本アニメ」(抄) 初出年: 2015年

    &nbsp; 3 日本アニメが向かう先 スタジオジブリの『かぐや姫の物語』の原作『竹取物語』は日本最古の物語といわれ、詳細は不明だが、平安時代初期の十世紀半ばには成立していた。仮名文字によって初めて書かれたこの物語は、いままでに何度となく映画化されただけでなく、海外ではオランダでバレエとして上演されている。 竹のなかから生まれたかわいらしいお姫様を主人公にした高畑勲の『かぐや姫の物語』は、日本公開の翌年二〇一四年五月に、フランスで開催された第六十七回カンヌ国際映画祭の「監督週間」

  • 小説 森本 房子 一枚の絵 初出年: 2015年

    壁に一枚の絵が掛かっている。 靄(もや)のたちこめたような寂しい森の中に、湾曲しながら消えていく小径(こみち)があって、その 小径を、独りとぼとぼ歩む猫背の男の後姿が描かれている。薄紫色を主調にして、群青(ぐんじょう)、 緑青(<r