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検索結果 全1058作品
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随筆・エッセイ 五行の神
五行川に想う ここ数年、私はふるさと真岡市を流れる五行(ごぎょう)川のほとりを歩いている。隣家の前の四辻を東へぬけると、二、三分で川面が見える。川はさざなみを小さく立てて南へと流れている。早朝散歩ゆえ、往来を渡るにしても車両を気にする要はない。 いつもながらのカルガモの群れが、滑るように流れに乗って戯</rb
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評論・研究 建築風景の再生
<目次> 1、土建行政と国土の荒廃 2、建築の自己破産 3、近代主義の罪 4、建築風景は再生しうるか 5、文化発信の可能性 6、国土の形象、古典ゾーン 7、国土
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評論・研究 神話の空間
<目次> 第一章 出雲神話 ・国引神話 ・八俣の大蛇神話 ・国譲神話 ・荒神谷遺跡と神話 第二章 たたらとヒッタイト ・ヒッタイト文明 ・聖書とヒッタイト ・消えたヒッタイト ・流浪のたたら 第三章 ラフカディオ・ハーン ・小泉節子 ・『雪女』とペルシア神秘性 ・神秘文学の系譜とハーン ・文学空間と建築空間 第四章 神話の空間</
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詩 草という名の女
野 川 野川には 小鷺がいた ほとんど水の枯れてしまった川の 水たまりのような所にいて くちばしで 魚を とっているらしい 鷺娘は 少しやつれて 眞っ白い羽を ほつれさせている 老いて 一羽だけになってしまったのか 川辺の道路ぞいには 桜が満開だ 明日は 花嵐といわれている 午後三時頃の強い風で花びらは散りはじめた <
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短歌 青杉
伊豆大島にて詠める 櫻葉の散る日となればさわやかに海の向山見えわたるなり 岡のべの草に秀(ひい)づる芒の穂やや秋あらし吹き出でにけり 一面の陸稲畑は色づけり日影あかるく萱の穂そよぐ 日にけに野分つのりて空明し三原の煙立たずなりしか 吹きとよむ野分榛原ひよどりの飛びたつ聲はなほ悲しけれ </
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詩 生きてきた人よ
N君のいかだ お母さんは電話をしていた。 いつもの長電話だった。 お母さんはふと思い出した。 お風呂が二時間も焚きっぱなしになっている やってしまったと思いながら N君にガスのリモコンを止めに行かせた。 お母さんはまた電話の話を続けた。 N君は少し知恵遅れだったが 今年無事に小学校に上がることになっていた。 N君はお
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詩 父さんのヒコーキ
目次おばあちゃんのローソン父さんのヒコーキ おばあちゃんのローソン うちのおばあちゃん(母のことだが)は、足が悪くて、眼が悪くて、 身体じゅう手術の痕だらけだが、気持ちは元気だ。まだぼくを叱り 飛ばすくらい、声もでかい。いつも小走りで、ゆっくり歩いている のを見たことがないくら
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小説 伸び支度
十四五になる大概の家の娘がさうであるやうに、袖子もその年頃になつて見たら、人形のことなどは次第に忘れたやうになつた。 人形に着せる着物だ襦袢だと言つて大騒ぎした頃の袖子は、いくつそのために小さな着物を造り、いくつ小さな頭巾(ずきん)なぞを造つて、それを幼い日の楽みとして来たか知れない。町の玩具屋から安物を買つて来てすぐに首のとれたもの、顔が汚れ鼻が欠けするうちにオバケのやうに気味悪くなつて捨てゝしまつたもの――袖子の古い人形にもいろいろあつた。その中でも、父さんに連れられ
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詩 藤村愛誦詩選
『藤村詩集』序 ──早春記念── 遂に新しき詩歌の時は來りぬ。 そはうつくしき曙のごとくなりき。うらわかき想像は長き眠りより覚めて、民俗の言葉を飾れり。 傳説はふたゝびよみがへりぬ。自然はふたゝび新しき色を帯びぬ。 明光はまのあたりなる生と死とを照せり、過去の壮大と衰頽とを照せり。 新しきうたびとの群の多くは、たゞ穆實(ぼくじつ)なる青年なりき。その藝術は幼稚なりき、不完全
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小説 嵐
子供等は古い時計のかかつた茶の間に集まつて、そこにある柱の側へ各自の背丈(せたけ)を比べに行つた。次郎の背(せい)の高くなつたのにも驚く。家中で、いちばん高い、あの兒の頭はもう一寸四分(ぶ)ぐらゐで鴨居(かもゐ)<
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随筆・エッセイ 平成の書き言葉
目次森と湖のキートスロープロファイルのアメリカ 森と湖のキートス ジメジメと欝淘しい梅雨の最中。日本を離れて、フィンランドに行ってきた。多くの日本人にとって、スカンジナビアとか、北欧三国は、まだまだ"遠い国"だろう。ことにフィンランドは、それこそ、サンタクロースか、オーロラか、ムーミンの国。 成田から一路ヘルシンキへ。ライトブルーに白の十字架の
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随筆・エッセイ A Lower-profile America
Itis a gloriously beautiful mid-October day, and my wife and I are backin California after nine long months away. Back in California in abrand-new house in a mind-boggling brand-new community ...
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小説 黒猫
病気が少しよくなり、寝ながら本を読むことができるやうになつた時、最初に手にしたものは旅行記であつた。以前から旅行記は好きだつたが、好きなわりにはどれほども読んでゐなかった。人と話し合つて見ても旅行記は案外読まれてゐず、少くともある種の随筆などとはくらべものにはならぬやうであつた。自分にとつて生涯関係のありさうにもない土地の紀行など興味もなし、読んで見たところで全然知らぬ土地が生き生きと感ぜられるやうな筆は稀だし、あるなつかしさから曾遊の地に関してものを読むが、それはまたこつちが知つてゐるだけにアラが眼につく、さういふのが共通の意見であるやうだつた。私自身も紀行の類を書きながら、かういふ
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評論・研究 日本における電子書籍の動向と公共図書館の役割
目 次 はじめに 本研究で取り扱う電子書籍の範囲 電子書籍の統計 デバイスの多様化と短命化がもたらす出版コンテンツの流通の問題 出版コンテンツにおけるボーンデジタルの増加と紙媒体の減少 グーグル「ブック検索」と絶版本の有料データベース化の動向
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小説 栄吉さんの英単語
この話で栄吉さんを英語に無知だと笑う人がいたら、現代氾濫するカタカナ語に彼以上にもっと辛辣でしかももっとユーモアを含んだ日本語の適訳を示唆してあげてください。 栄吉さんは代々続いた染色屋の主人である。 数人の人を使って自宅に隣接させた工場、要するに作業場をフルに動かして必死に働いてきて、今は主な切り盛りは娘夫婦に譲ってどうやら妻と一緒にやっと気ままに時間を使える身になったものの、働き詰めに働いてきた性分で身体を動かさないでいられない。今でも町内の取りまとめはもとより、思いつくと得意先の開拓や資金の調達のため走りまわる。
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小説 梔子(くちなし)の門
プロローグ 鍵のかかっていた門扉をお嬢さんがひらいた向こうに北田玲子さんが現れた時、それまで不安で緊張していた私は 「まあ、いらっしゃいませ」という昔とちっとも変らないやや甲高い優しい声を聞いて、自然に彼女の顔を見ることが出来て、ほっとした。アルツハイマーと聞いて予想していたのとは違って、彼女は様子はあまり変わっていなかった。多少白髪になっていたが、こちらの三人はもっと、純白に近い人もいる。私達が一人一人学生時代の旧姓を名乗って挨拶するのを 「山根さん? そうお」 「村井さん、ああそう」 「峰さん、そうお。 私わか
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随筆・エッセイ 高麗屋の女房(抄)
目次三代襲名空っぽの心それでも舞台があるエジンバラの虹高麗屋の女房付・私のきもの生活 </p
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評論・研究 自然観の転換と環境倫理学――自然と人間の調和のために
われわれはこれまで、現代の環境危機を背景としつつ、アリストテレス、ホッブズ、ヘーゲルの自然観、およびそこにおける人間と自然の基本的な関係をみてきた。アリストテレスにとっては、自然のすべての存在はそれ自身のうちに目的を含み、その実現の過程にあったが、そのような自然の全体もある種の階層的、目的論的秩序をなしていた。そして人間はそのような秩序のなかに位置せしめられていたのであり、それゆえ自然は人間にとっての規範の源でもあった。人間の営為も自然の秩序を撹乱することなく、それと調和的に生きるべく考えられていたのである。これにたいしてホッブズは、自然を完全に客体化しながら、それを原子論的物体の機械
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随筆・エッセイ 巌頭之感
悠々たる哉(かな)天壌、遼々たる哉古今、五尺の小躯を以て此(この)大をはからんとす。ホレーショの哲学竟(つひ)に<rb
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随筆・エッセイ 大相撲の名アナウンサー ──山本 照さんを偲ぶ──
平成十年十月二十七日の朝、私は突然 「山本さんはどんなにしておられるだろうか? 今夜電話してみよう」という、思いに襲われました。虫の知らせだったのでしょうか。 奇しくも、その夕刻、ご長男の謹一郎さんから「午前十一時四十二分に亡くなられた」というお報せをいただきました。 九十五歳の大往生、ありし日の山本さんを偲び、私は胸が一杯になりました。 人間の一生には、思いがけない出会いがあります。 昭和十二年の暮も押し迫ったある日のこと、小学三年生だった私は、四歳下の弟がぶら下げてきた相撲の雑誌を何げなく手にとって開いてみま