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淡路にて

古翁(ふるおきな)しま(ぐに)

野にまじり覆盆子(いちご)()

(かど)に來て生鈴(いくすゞ)

百層(もゝさか)(おご)りよぶ

 

白晶(はくしやう)の皿をうけ

(あざら)けき()(そゝ)

六月の飲食(おんじき)

けたゝまし(にじ)走る

 

清涼(せいろう)の里いでゝ

松に行き松に去る

大海(おほうみ)のすなどりは

ちぎれたり絵巻物

 

鳴門(なると)の子海の(さち)

()の腹を胸肉(むなじゝ)

おしあてゝ見よ十人(とたり)

同音(どうおん)にのぼり來る

日本ペンクラブ 電子文藝館編輯室
This page was created on 2002/09/30

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伊良子 清白

イラコ セイハク
いらこ せいはく 詩人 1877~1946 鳥取県に生まれる。医師。河井酔茗、横瀬夜雨とともに「文庫」派の三羽烏と称せられ、約200篇から18篇を厳選した1906(明治39)年刊唯一の詩集『孔雀船』の透徹した境涯で知られる。

掲載作は、保険の診査医として僻村を渡り歩いていた頃の作で、最終連は青木繁の絵「海の幸」との契合が指摘されている。

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