そぞろごと
○
山の動く
かく云へども人われを信ぜじ。
山は
その昔に於て
山は皆火に燃えて動きしものを。
されど、そは信ぜずともよし。
人よ、ああ、唯これを信ぜよ。
すべて眠りし
○
一人称にてのみ物書かばや。
われは
一人称にてのみ物書かばや。
われは。われは。
○
わが髪ぞほつるる。
しをたれて
ほとつくため息は火の如く且つ狂ほし。
かかること知らぬ男。
われを褒め、やがてまた
○
われは
水もこれに湛ふれば涙と流れ。
花もこれに投げ
愁ふるは、
素焼の
○
青く、且つ白く、
剃刀の刃のこころよきかな。
暑き草いきれにきりぎりす啼き、
ハモニカを近所の下宿に吹くは
わが油じみし
○
にがきか、からきか、煙草の味は。
煙草の味は云ひがたし。
砂糖の如く甘しとや思はん。
われは近頃煙草を
喫むことを人に秘めぬ。
蔭口に男に似ると云はるるもよし。
唯おそる。かの粗忽者こそいと
○
「鞭を忘るな」と
ツアラツストラは云ひけり。
女こそ牛なれ、また羊なれ。
附け足して我は云はまし。
「野に放てよ。」
○
わが祖母の母はわが知らぬ人なれど、
すべてに
水晶の
この
我はこの
貧しさに与ふべき
一つ一つ
○
わが歌の短ければ、
言葉を
わが歌に省くべきもの無かりき。
また何を附け足さん。
わが心は魚ならねば
ただ
○
すいつちよよ、すいつちよよ。
すいつちよよ、なぜに声をば
すいつちよよ すいつちよ。
○
油蝉のじじ、じじと啼くは、
アルボオス
近頃の藝術の批評なり、
誇りかに語るかの若き人等の恋なり。
○
夏の夜のどしや
わが家は
柱みな草の如く
そを
青き蚊帳は
肩なる髪は
この
日本ペンクラブ 電子文藝館編輯室
This page was created on 2004/02/06