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風の韻き

 膝を大きく屈伸させてブランコに力を入れると、目の前にあるマンションを蹴上げるようにして体が吸い上げられる。空が近づき、雲にふわりと乗りそうになる。が、反動ですぐに引き戻され、高層の建物はこんどは傾きながら視野をすべる。四階の亜美の部屋の窓からカーテンが少しはみだしていた。

 亜美が再婚した父のもとで暮らすようになってやっとふた月である。二人とも働いているから、亜美は夕方おそくまで一人でいなければならない。はじめて経験する四階の住居にも、まだ慣れないでいた。

 亜美は思いきりブランコを漕いだ。体がしだいに軽くなり、公園とマンションの境にある木立ちを跳び越えているようだ。その緑は亜美が育った寺の裏山を思い出させ、竹林のうねりや樹々を渡る風の音を聴かせる。

 公園のフェンス沿いの道に、見覚えのある老女の姿が見えた。両手にふくらんだビニール袋を提げて、のろのろと歩いている。ときどき止まって大きく息を吐いていた。

 亜美は全身の力を抜いて、ブランコの揺れがおさまるのを待った。

 通路から門を出ると、フェンス沿いの道を歩いているのは思ったとおりイクノさんだった。うすい藤いろのセーターには、亜美がきのう濡れたタオルで拭いてあげた泥のあとが、いくつか模様のように残っていた。

 フェンス塀の角から車が出てきた。立ち止まったイクノさんの横で亜美は自転車を下り、声をかけた。

「その袋、かごの中に入れるといいよ。先に運んでおいてあげる」

 イクノさんは無表情に亜美を一瞥しただけで、足を引きずるように踏みしめて行く。すこし伸びた白い髪がひとつまみほど、ピンからはずれて撥ねあがっていた。その姿が向かい側のカーブミラーに写っている。

 イクノさんは別な時間の中を歩いているようだった。遠くへ消えていきそうなイクノさんを追いかける思いで、亜美は急いでまた近寄った。

「やっぱり持ってあげる」

 袋に手をかけると、予想していたよりはるかに重い。イクノさんは強く肘を引いて亜美の手を払い、鋭い視線を投げかけた。知らない人を見る目だった。

 亜美はぼんやりとイクノさんの後ろ姿を見つめた。いくらか前かがみの腰のあたりでズボンがだぶついており、痩せすぎの体をきわ立てている。外見も雰囲気もまるで違うのに、イクノさんをみていると、亜美はすぐに、長い間いっしょに過ごした加代ばあを思い出す。亡くなった母の実家では寺の行事や檀家との関わりで祖父母は忙しかったから、亜美は曾祖母(そうそぼ)の加代ばあの傍にいることが多かった。年をとっているためか、加代ばあのまわりは薄いヴェールにでも包まれているような気配があって、亜美はそれをイクノさんにも感じるのだった。

 亜美はゆっくりと自転車の向きを変え、今しがた車の出てきた道へ入った。

 フェンスで囲まれた公園と、その先の駐車場を通りすぎると、並木のある広い通りへ出る。そこで亜美は、無意識のうちにイクノさんの家のある方へ曲がっていた。

 

 イクノさんの家は、亜美の住むマンションから徒歩で七分ほどのところにある。イクノさんが歩いていた道をそのまま進んでJRのガードをくぐり、アパートがとり壊されたばかりの空地の横を通って三叉路の信号を渡る。そこからは見通しのいいゆるやかな勾配の坂がつづく。このコースは亜美の通学の道順でもあった。

 坂道の中ほどに、傾斜に沿って石垣が積み上げられ、その上の鬱蒼とした庭木の奥に、イクノさんが住む古い木造の平屋がひっそりと沈んでいる。玄関へ至る階段の上の門扉には雑草が絡み、石垣は蔦の葉に覆われていて、亜美がここへ来たばかりのころ、〈あの世の森〉と呼ばれている隣接の林とひとつなのだと思っていた。

 林は、コーポふうの建物とか、高い塀で囲った住宅が多いこの地域に、別な世界を感じさせる一画だった。小学校と隣り合っている神社の裏庭の一部で、小高い境内から坂道へなだらかにつづいている。大きな樹木が多くて中はうす暗いが、どれも幹がすっきりと伸びているので下の方は子供がゆっくり動けるほどの空間がある。笹や雑草の生い茂った地面にうず高く積もっている落ち葉が、踏むと柔らかな感触とともに湿った音をたてる。大きな棕櫚からは枯れた葉がたれ下がり、ふいに背中をなでたり頬にさわったりする。学校の子供たちが〈あの世の森〉と呼んであまり近づかないだけの雰囲気はあった。

 しかし、幼いころから寺の雑木林を遊び場にしていた亜美には、そのころを呼び戻す場所となっている。竹林をすぎる風の音、木の枝が触れるひびき、そして、墓域でカタカタと鳴っていた卒塔婆。

「お塔婆はね、あの世へ還った人に、この世から送るお手紙なんだよ」

 加代ばあはそう言った。だから卒塔婆の鳴り合う音を、亜美はむこうから戻ってくる返事なのだと信じていた。そして、木々が発するかすかな気配も亜美には同じ感覚でなつかしかった。

 

 林の中ではじめてイクノさんに会ったのは、新学期が始まって一週間ほど経った四月半ばだった。父のもとで暮らすことになって転校してきたばかりだったから、まだいっしょに歩く友達はいなかった。学校の帰りに、一人で近道をして神社の裏から駆け下り、亜美は虫食いの紋様がおもしろい葉を見つけてさらに捜し集めていた。

 そのとき、鍵を開けてほしい、というか細い声に突然呼ばれたのだ。奥のひとむらの竹の中から、骨ばった白い顔がのぞいていた。亜美の全身が一瞬こわばった。

「あの世の森には招きばばあが居るんだぞ。鍵を開けておくれ、鍵を開けておくれ、って子供たちを呼ぶんだ」

 クラスではじめて紹介された日に、隣の席のふとったお節介やきの男の子が、両手をだらりと振りながらそう言った。まんがの見すぎだよ、とそのときは内心おかしかったが、イクノさんの現れ方には、たしかに心を竦ませるものがあった。けれども、

「鍵が開かないんだよ」

 と、重ねて言う低い声が、こんどはもの哀しく聞こえた。亜美は引き込まれるように竹をかき分けて中へ入り、そのときはじめて奥に家があることを知った。

 裏口の扉はところどころ塗料がはげていた。建て付けも悪いらしく、扉の錠に鍵がうまく入らない。何度かやり直してやっと嵌まったものの、それを回すにもかなりの力がいる。だから開いた手応えを感じたときは、思わず嬉しさがはじけた。ところが、イクノさんは尖った肩で亜美を押し退け、背中をこわばらせて扉の前に立ちはだかった。

 鍵をそのままにして亜美は坂道へ下りた。薔薇がひと枝石垣にたれ下がっていた。うす紅の花を手にうけてゆらすとほのかに香りがたち、それが心に染みていっとき亜美の気持ちを和らげた。そこへいきなり、「やっぱり開かないっ」と、(かす)れた声が亜美を責めるように落ちてきた。だが語調とはうらはらの不安そうな目が、生け垣のすき間から亜美にすがりついていた。

〈そんなはずないよ〉

 のどの奥で言いながら戻ってみると、なるほど扉はびくともしない。亜美が鍵を差し込んだまま離れたので、抜く手加減でまた締めてしまったのかもしれなかった。

 鍵には名刺大のカードが透明なケースに入ってぶら下がっていた。両面にこまごまと書き込みがしてあり、〈川上イクノ〉という文字だけが大きく目に写った。

 鍵はあっけないほどすぐに開いた。亜美が扉をすこし引いてみせると、イクノさんは頬をゆるませて足もとの買い物袋を持ち上げた。が、亜美の視線にぶつかるとまた身構える姿勢をみせ、菓子の袋をひとつ押しつけるなり勢いよく扉を閉めた。乾いたきしみ音は、亜美の内部にひびいていつまでも残っていた。

 

 つい今しがた道で逢ったときのイクノさんの素っ気なさが、それをまた思い出させた。

 広い十字路を一気に渡り、亜美は並木のある通りから三叉路への道に曲った。三叉路から坂道へ入ろうとして振り返ると、イクノさんが信号機を見上げながら立っている。少しそり返っていた。細すぎる体のバランスを、両手の荷物でとっているようだった。自転車のベルを高く鳴らしてみたが、イクノさんの反応はない。亜美はなだらかな坂道へむかって思い切りペダルを漕いだ。

 イクノさんの家の前で自転車を下り、亜美は石垣の終わるところまで五、六歩押して歩いた。そこから〈あの世の森〉との境界にある朽ちた板塀の(きわ)を奥へ進む。イクノさんは玄関口への階段を上るのを嫌い、亜美が鍵を開けてあげた裏口ばかり使っていた。そこへ回るために踏みならされた、一人が通れるだけの草の道だった。

 亜美は林の中に踏み入り、すぐ近くにある古木に自転車を(もた)せかけて止めた。林の主のように堂々とした木だが、太い幹の上の方はささくれて無くなっている。そこからか細い枝が数本のび、わずかに葉も付けていた。幹には亜美の胸のあたりまで蔦が這い上がり、たっぷりと葉を繁らせているので、枯れかけた木がどれよりもみずみずしく見えている。

 目の高さに手のひらほどの洞があり、蔦からのびた無数の蔓が巻きつき絡みあってそこに網をかけてあるようだ。洞の中には地の底からたちのぼってきたとも思える澄んだ冷気がこもっていて、胸いっぱいに吸い込んでみたくなるほどだった。

 そこから湧いてでもきたように、高く低くクルクルと回りながら軽やかに漂いはじめたものがある。透けて見えそうなほど薄い黒の翅に、白がひと筋めぐっていた。亜美の目はまたたきもせずにその後を追った。

 やがてそれは垂直におりて下草の中に沈んだ。近づいてみると、小指の爪ほどの翅を合せて止まっている。蝶なのか蛾なのかはっきりしない。黒い翅に白い点が二つ三つ並んでいるだけの、じっとしている姿は気味が悪かった。けれども回転する飛び方には惹かれるものがある。亜美は足先でそっと草を蹴ってみた。それはすぐに飛びたち、回りながらやがて木々の繁みの中に消えた。

「ちょっと、これ持ってくれる?」

 穏やかな甘えを含んだ声でうしろから呼ばれた。イクノさんが立っていて、両手の袋をさし出している。亜美を身内とでも思っているような頼りきったようすだった。

 イクノさんは少し手間どりはしたが自分で扉を開け、微かな笑みで亜美を誘いながら奥へ消えた。亜美はさっきの突き放された感覚との違いにとまどい、そのまましばらく佇んでいた。

 鍵が鍵穴に差したままになっている。白いカードといっしょに、亜美があげた鈴もぶら下がっていた。

 亜美が鈴をあげたのは、はじめて声をかけられてから間もない風の強い日だった。戸口に鍵が差し込まれたまま、カードが風に千切れそうになっていた。知らせると、イクノさんは用心ぶかく鍵を受け取ったが、そのとき、亜美の手提げ袋に付けてある鈴に目を止めた。鈴は三色の絹ひもを色どりよく組んだ中にくるんである。それを三個まとめて、亜美は袋に下げていたのだ。

 イクノさんはそれを手にのせ、眺めたり振ったりした。くるんでいる絹ひもにやわらげられた音いろが家の奥にも流れていくようだった。

「ひいおばあちゃんが作ってくれたの。去年死んじゃったけど」

 イクノさんは、きれいだね、とおどろくほど優しい声で言った。亜美は嬉しくて、むらさき色を基調に組んである鈴を一つあげたのだった。そのときも、イクノさんは言葉ではなく、全身の表情で亜美を家の中にさそい入れた。

 

 亜美は差したままの鍵を抜いて中に入った。扉の閉まる音を背中でききながら、ふと、この鍵でイクノさんは心を開けたり閉めたりしているのかも知れないと思った。

 裏口から入るとすぐに台所があり、次は六畳ふた間をふすまを開け放って一つに使っている。奥の部屋の敷居ぎりぎりにベッドを据え、衣類が必要なときは箪笥のある向こう側へ下り、ふつうの暮らしはすべて台所に接した部屋で足りる。戸棚もテレビも鏡台も仏壇も、できるだけ体を使わないですむ位置にあり、こたつはまだ布団を掛けたままになっていた。その上には茶道具はもちろん、手紙や印刷物を入れた箱が置かれている。

 イクノさんは亜美から袋を受け取ると、中の品物をつぎつぎに出していった。調味料やインスタント食品などが膝のまわりいっぱいになる。どれも大きな容量のもので、同じものが台所の隅にもたくさんあるのを亜美は知っている。イクノさんには派手すぎるエプロンがでてくるかと思うと、男ものの靴下まで買ってきていた。

 こたつの上にも、惣菜の入ったパック、菓子、くだものと盛り上げられていく。苺のケースが三つもあった。

「こんなにいっぱいどうするの。すぐ腐っちゃうよ」

「みんなが来ると足りなくなるからね」

 すぐに応えが返ってきた。みんな、と亜美は心のなかで呟き返し、部屋の中を見回した。

 部屋にはたくさんの写真が飾ってある。まず目に入るのは、仏壇の上の、この家の主人だった人らしい大きな写真である。鴨居には横長の額をおなじように掲げてあり、数枚が納まっていた。日本髪の輪郭だけしかわからない黄ばんだものや、軍服姿、レース飾りの帽子をかぶった赤ん坊もいる。やや大きめの二枚は複製でもしたのか、古風な人物の印象とは釣り合わないほど写真の表面が新しかった。一人は和服に袴を着けた老人、もう一人は大学生である。

 ほかにも戸棚に家族写真、仏壇のなかの小さな写真立てなど、どの視線もイクノさんを見つめる角度にあった。亜美でさえ大勢に見られているようで、ときにはっとすることがある。

 イクノさんが亜美にプリンをすすめた。三個入りの焼きプリンがもう(ひと)ケース袋からはみ出している。亜美は、店内の明るさとにぎやかさの中で、憑かれたように品物をカートに満たしていくイクノさんの姿を思った。

 プリンを半分ほど食べたとき、テレビで再放送の時代劇がはじまった。鳩時計の鳩も啼きだした。間延びした声で四回啼き、オルゴールの曲がながれる。

「あれっ、この時計合っているよ」

 亜美は時計よりイクノさんを見ながら声をあげた。

「たまにはそんなこともあるさ。今日はご機嫌がいいんでしょ」

 イクノさんは口にプリンを含みながら、興味などなさそうに言った。

 この部屋には、家中から全部集めたのかと思うほど沢山の時計が置かれている。だが時間の合つている時計はほとんどない。イクノさんが金婚式に贈られたという大理石の置き時計は、針さえなくなっていた。

 あるとき亜美は、電気スタンドにはめ込まれた時計の針を直そうとしたことがあった。それをイクノさんが制した。

「いいの、べつにみんなが同じでなくたって」

 そして、イクノさんはぽつりと言った。

「みんな、自分の好きなように生きているんだから」

 鳩時計は、その中でも勝手気ままな動きが特別だった。狂いが一時間のこともあれば、半日ということも珍しくない。亜美は、どの辺かで針がすとんと落ちるのを目にしたことがある。それでもいく巡りかのうちに、この日のように正しい時間に重なることがあるらしかった。

「自分で買ってきたものだから、うるさくてね。ちょっとでも違っていようものならすぐにお叱言(こごと)なんだよ。いくら修理をしても、これはまたのんびりやでね」

 イクノさんは夫の足音が聞こえると、迎えに出るより針を直す方が先だったと、鴨居の写真を見上げながら言った。えらが張って眉が濃く、気むずかしそうな顔が口をへの字にしている。その印象は、鳩時計へのこだわりやオルゴールの甘い曲とは結びつかない。そのことを口にしたら、しばらく間をおいてから、イクノさんは呟くように応えた。

「学徒出陣に出てゆく前の晩、和彦が何回もレコードを掛けていてね。この曲だった」

 亜美はおもわず大学生の写真を見上げ、そのまま視線を気むずかしそうな顔に移した。

「みんな、せっかちなんだから、もう……」

 吐息のような言葉といっしょに、イクノさんは苺のケースをひとつ亜美に渡した。仏壇に供えるようにということである。

 仏壇にはこれ以上置けないほどの菓子や果物が供えられていた。なかには腐りかけているものもあった。それを盛り上げるようにして片寄せ、苺を置いたが、台の表面が湿っていた。テッシュペーパーでそこを拭きながら、亜美は写真立ての前に置いてあった腕時計を手にした。矩形の古びた婦人もので、文字盤は灰色になって時間が読みにくい。透明な部分は度の強いレンズを思わせて盛り上がっているが、少し濁っていた。つまんで持ち上げると、細かい彫刻のある金いろの鎖がずしりと垂れた。亜美の手もとを、イクノさんが目を細めるようにして見つめた。

「あら、ねじを巻くのを忘れていたわ」

「これ、動くの?」

「どこへ行っても修理はできないって言われたけど、デパートでわざわざ部品を作ってくれてね。いい音で動くんだよ」

 亜美はそおっとねじを巻き、耳に当ててみた。耳に押し込むようにもしてみたが、かすかな(ひび)きを感じただけだった。時計の裏にはK18と刻んであった。

「それは南京虫といってね、あの頃のはやりだったんだよ。お嫁にやるとき買ってあげたんだけど……」

「このひとに?」

 亜美は戸棚の中の家族写真の一人を指さした。そこには、イクノさんを中心にして初老の夫婦、うしろには亜美くらいの女の子と少年が両親と並んでいる。初老の女性は仏壇に飾ってある写真の人と同じだった。前髪を切りそろえ、その女性は目だけで笑っている。口は閉じているのに明るい声がこぼれてきそうだった。イクノさんは、亜美がいることを忘れたように家族写真に見入っていた。

 風がでてきたのか、竹のざわめく気配が聴こえる。亜美は腕時計をもう一度ながめ、元のところに戻そうとした。

「それ、持っていっていいよ。あげるよ」

 それ、が何なのか亜美はわからなかった。が、すぐに時計を持っている手がこわばり、それが体じゅうに広がる。指をはがすようにして時計をイクノさんの前に置いた。

「どうして?いいって言うのに。あげるって言うのに」

「だめだよ、こんな大事なもの。形見なんでしょう」

亜美は首を振りながら後ずさった。

「せっかく直ったんだもの、ずっと動いていてほしいんだよ」

 イクノさんがじっと亜美を見つめた。その目が透きとおっていて、亜美は吸い込まれそうだった。

 外へ出るとき、亜美はためらわず時計のおさめ場所を古木の洞ときめていた。洞の口は樹皮がよじれて固まっており、まるで観音開きになっている祠を思わせるのだった。

 

 時計のねじを巻きに来るのが亜美の日課になった。

 亜美は棕櫚の葉をよけて林の中に入り、蔦の絡んでいる古木へまっすぐに近づく。洞を覆っている網をゆるめて中の木の葉を掻き出し、内部の湿った空気ごと掬うようにハンカチの包みを取り出す。時計をいっとき眺めてから、亜美はつまみを動かす。力が入りすぎると振切れてしまいそうで、いつもこわごわと指先を使っている。およそ十八まで数えると動きが鈍くなるので、それからゆっくりと耳に当てる。いくら神経を集中させても、音が聴こえたことはなかった。けれども、いい音、いい音、と歌うように呼びかけながら、亜美は洗ってきたハンカチに時計を包みなおす。それを洞におさめて木の葉で隠し、幹に巻きついている蔓の網でていねいに覆ってから、蔦の葉が、緑の滝でも流れ落ちているように木の表面で揺れているのを眺める。

 ある日、木の側を離れようとしたとき坂道に車の停まる音がして、男の怒鳴る声が聞こえた。

「いらないってば。タクシーじゃないって言ってんだろ。何回言えば分かるんだよ」

 出てみると、乗用車の運転席で、若い男がイクノさんとむき合っていた。車の側でイクノさんは大きく目をみはり、頬も唇も少しけいれんさせている。イクノさんの顔が、一瞬男に見えた。

「払ってきて!」

 亜美に気づくと、イクノさんは駄々っ児のように五千円札を誰へともなく投げつけた。お札はゆらゆらと舞いながら車輪の近くに落ち、イクノさんはめずらしく足早に草の道を歩いてゆく。

「きみ、ここんちの子?あんな年寄りを一人で歩かすなって、家の人に言っとけよな。道路の真ん中で手を上げやがんの。まったくもう」

 亜美を斜めに見る目が冷ややかだった。

 男は舌打ちをしてエンジンをかけると、亜美が拾って手にしていたお札をひょいと抜き取るなり発進していった。目の前にぽっかりと空白感がひろがり、イクノさんはそのはるかな遠くから戻ってきたような気がした。

 家に入ると、イクノさんはベツドに腰を下ろし、靴下を脱いで足の裏を叩いていた。よほど歩いたのか、足がやや腫れぼったくみえる。イクノさんは肩叩きを使い、小声で十かぞえては右足から左足、そのまた逆へとくり返す。お釣りをよこさなかった、と言ったが、イクノさんは少し前のことなど忘れてしまったように穏やかな顔をしていた。

 イクノさんから香料がにおう。

「美容院に行ってきたの?髪を切ったんだね」

 さっき男性とみまちがえたのは、カールされた白く短い毛先が頭に貼りついて見えたので、額の中の老人の写真とだぶったのだった。

 その老人は、袴姿で床の間を背にして座っている。髪を短く刈ってあるのか、古くてはっきりしないのかは分からないが、ひたいと頭の境界が見分けにくい。筋肉をそぎ落とした彫刻のような顔にくぼんだ目が大きく、亜美はその奥を覗いてみたい気持ちにときどきかられていた。

「この人、イクノさんのおとうさんなの?」

 ベッドからのり出だして、写真を見上げたイクノさんの口もとがほころんだ。

「さっき美容院でも、鏡の中に来ていたんだよ」

 イクノさんの視線の先がはてもなくのびてゆく。

「子ぼんのうな人でねえ……」

 ベッドに座りなおし、イクノさんはとめどなく父親の話をはじめた。母親のいない末っ子のイクノさんを父親はとくに不憫がり、暇さえあると相手をしてくれた。イクノさんが遊ぶどの子もへだてなく可愛がったので、門の脇にある小屋は、雪の季節になると保育園のようになった。唄やおとぎ話だけでなく、経文や孔子の言葉まで、イクノさんは父親を真似てはやくから覚えてしまった。

「外を歩いていると子供がぞろぞろ従いてくるんだよ。ちいさこべの縋る、って村の人たちに呼ばれていてね、にこにこして嬉しそうだった」

 イクノさんはよく透るほそい声でわらべ唄を歌いはじめた。

「たんたんたけみつ むかいのおやまの さくらのはあなが さいたかちったか」

 その歌声は、ちいさこべという言葉のやさしさをからめて、亜美を幻想の世界へさそい出した。亜美も子供たちといっしょに歩いている。先頭を行く人の両手にも袴のひだにも子供がつながり、手や足で調子をとりながら声をはり上げる。

 林の中に入った。すると子供はばらばらになって木の間を駆けまわる。歌ごえは笑い声となり、子供たちはみんなどこかで見た顔になった。亜美はつき上げてくる懐かしさで、誰よりもたくさん走った。

「この辺にお酒屋さんがないんだよね。いくら捜しても見つからないの」

 イクノさんのかん高い声がふいに亜美を現実に引き戻した。亜美はそれを押し返すように応えた。

「お酒ならスーパーで売ってるでしょう」

「灘の生一本が好きな人なの。わたしたちに母親の話をしながら、ひと口飲んでは、かんろ、かんろ、って」

 イクノさんは盃を口に運ぶ仕草をしてみせた。手つきも目を細めるようすも、その場にほんとうに父親がいるようだった。

「せっかく買って帰ろうと思ったのに、いくら歩いてもお店がないんだもの」

 だからイクノさんは道のまん中をどんどん歩いて行ったのだろうか。

「やっとうちに着いたから入っていったのに、へんな子が居てさ、シッ、シッて言うんだよ。シッ、シッだって」

 イクノさんの表情がけわしくなった。

「その子の母親も出てきたけど、あの人たちいつから私の家にいるのかしら」

「だって、イクノさんの家ここでしょう」

「いいえ、長屋門のある家はうちだけなんですから」

「長屋門て?」

「こんなにおおきな……」

 イクノさんはベッドから立ち上がると、両手で部屋の形をふたつ作り、手を反らして流しながら間に屋根をつなげた。亜美は、すこし虫喰いのあった山門を思い出した。

「お寺みたいなの?」

 急にイクノさんの手が止まった。

「そうだわ、もうすぐとみ子の三回忌よ。横浜から手紙がきているかも知れないから、ちょっと見てきて」

 郵便受けには銀行からの葉書と、市役所福祉課の印刷がある封書と、数枚の広告が入っているだけだった。

 部屋に戻ると、イクノさんはベッドに腰かけたまま、上半身を倒して眠っていた。

 

 学校から帰ると、亜美はまず母の写真に会うことが寺にいたころからの習慣だった。赤ん坊の亜美を抱いた写真である。ここへきてからは部屋に飾るのはひかえ、机の中のすぐ見えるところに入れておいた。

 それが今日帰ってみるといつものところに見当たらない。開閉の振動でたまには奥に落ちていることもあるので、引き出しを抜き出したり、本やノートの間もたしかめてみた。写真は小物類を入れてある箱の下にあったが、むりに押し込まなければ入るはずのないところだった。すぐに、ひげを剃りながら言った朝の父の言葉を思い出した。

「近いうちに、ママと三人で旅行しようか。写真もいっぱい撮ろうな」

 精いっぱいとりつくろいはするが、父のすることはすぐに真意がみえてしまう。

 新しい母の久子が、このごろ情緒不安定になっていることは亜美も感じていた。わずかなことで苛立ったり涙ぐんだりする。そのたびに父はうろたえ、久子を昂らせない気づかいが、さまざまな形で亜美に及ぶのだった。気持ちはわかるけれど、亜美の心や机の中にまで入り込むことは許せなかった。

 亜美は給食袋からコップを出し、お手ふきで思いきり机を叩いてから部屋を出た。ダイニングキッチンヘの扉を開けると電話が急に鳴りだし、受話器を取ると切れた。その一瞬をよぎって、居間のベランダごしに赤い鞠の落ちてゆくのが見えた。

 ベランダに出てみると、下の芝生に、両手に載るくらいの鞠があった。間もなく赤いTシャツを着た女の子がころげるように出てきた。あとから母親も近よってくる。公園でよく見かける母子だった。

 この日、母親の腕に赤ん坊はいなかった。女の子はこの時とばかり足をばたつかせて抱いてほしいとせがんでいる。母親は少しじらしてから抱き上げ、頬を押しつけてさらに強く抱きしめた。二人の間で毬がつぶれそうだった。女の子の笑い声が、二人の姿が見えなくなっても、いつまでも転がってくる。

 亜美は毬の柔らかさと、女の子の頬や母親のふところを思いながら、加代ばあのぬくもりを思い出していた。

 加代ばあが亡くなったのは一年前の春だった。風邪をこじらせて一週間入院しただけだったから、突然のことに亜美は哀しいとも寂しいとも思う間がなかった。あわただしい人の動きと時間だけが亜美の(かたわ)らをすぎてゆき、気がつくと沢山の花と溢れるほどの人で、祭りのような賑わいになっていた。

 柩の中で、加代ばあはまだ生きているようだった。紅をさした唇がかすかに動いて、今にも亜美に声を掛けそうだった。

「美佐子に、ママにそっくりだよ」

 よく見ておきなさい、とでもいうように父が亜美の背をつよく引き寄せた。

 柩が蓋で覆われたとき、亜美の全身から力がぬけ、関節がこなごなになったようにへたり込んだ。涙といっしょに突き上げてくる嗚咽(おえつ)でなん度も喉をつまらせた。誰に抱きしめられても、しがみついても、亜美を支える助けにはならなかった。

 その日のことや、加代ばあとすごした日々は、時が経つにつれてかえってくっきりと浮きたってくる。

 あるときは雷に脅える亜美をしっかりと抱きしめ、雷よけのまじないをくり返していた。あまり強く抱くので、加代ばあも怖いのかも知れないと思った。

 パッチワークを手伝っていて、針で指を突いたこともあった。血のにじんだ指を吸う加代ばあに、「気持ちわるくないの?」と聞いたら、「同じ血が流れているんだもの」といって笑った。

 ひとつひとつの思い出には、加代ばあの皮膚の感触と匂いがこもっている。その肌には幼いころの母も触れたにちがいないし、加代ばあ似だったという母自身の温もりとしても亜美に伝わってくる。写真でしか知らない母を、加代ばあは死を通して亜美の中に蘇らせたのかもしれなかった。そのことを仕舞いこんだりしては、今日も明日も嘘になるような気がした。

 学校の近くの文房具店に、枠のないガラス板だけの写真立てがあったことを亜美は思い出した。

 亜美は、心をはずませながら自転車を漕いだ。三叉路の信号を勢いをつけて渡る。

 イクノさんの家の前に横浜ナンバーの車が停まっていた。亜美は自転車にまたがったまま足をおろし、中をうかがってみた。門扉も玄関の格子戸も開いていて、靴が何足も並んでいた。

〈とみ子さんの法事に行くのかな〉

 土のにおいや木々の生気をふくんだ風が玄関から流れこみ、仏壇に供えてある腐りかけの果物も、台所やこたつの上の食品も、みずみずしい色になっているような気がした。イクノさんのために、亜美はそれが嬉しかった。しかし、このまま帰ってこないのではないか、という淡い不安もかげった。

 

 うしろから吹いてくる風が、亜美の髪をかき上げて過ぎた。梅雨に入っても真夏のような暑い日がつづいているので、夜になって強くなった風がむしろこころよい。

「亜美もいよいよお姉さんだな」

 亜美の肩に手を置いて父が言った。ファミリーレストランで食事をして、久しぶりに父と二人で歩いている。久子が妊娠三ヵ月に入り、つわりが納まるまで実家に静養に行ったので、当分はこうした二人の暮らしになるはずである。だが、期待をふくらませている亜美に、父がかける言葉はきまっていた。

「そうか、亜美とは十歳(とお)ちがいか」

 秋に誕生日がきたら十一歳だと、亜美は心の中で口をとがらせる。

「亜美はやっぱり妹がいいか。男の子だって元気でたのしいぞ」

 亜美が寺にいたころは離れて暮らしていたから、父はドライブや食事の機会をよくつくってくれた。そんなときの父は、健康のこと、学校や友達のはなし、祖父母や加代ばあとの毎日など、うるさいほど亜美のことを知りたがった。それが今では、まだ実感のない家族が、二人だけで向き合っているテーブルの一角を占めている。そのことが亜美には落ちつかなかった。

 レストランを出たとき、車を拾おうとする父に亜美はどうしても歩いて帰りたいと言いはった。ひとの暮らしがにじんでくる路地から路地への道を、亜美は父といっしょに歩いてみたかった。それに〈あの世の森〉も気になっている。つわりで体調を崩していた久子は会社を休んでいたし、雨の日もあったので、ここ数日行っていなかったのだ。

 れんが造りのコーポの角を曲がると坂道である。すこし歩いて、父が立ち止まった。

「すごいな、ここは」

 亜美は、〈あの世の森〉と言おうとして息をのんだ。

 亜美が知っている林は、たっぷりと繁った木々の梢のかなたにそれよりも広い空があり、ふかい緑の一画も整った家並の一部としてあるだけだった。だが夜を吸い込んだそこは巨大な山のように立ち塞がっている。枝々の間にすべりこんだ闇は黒々と空を覆っていた。強く風が吹くと、木々がまた、唸り声をあげて道にまで闇をばらまくようだ。知りつくしているつもりだった林に、亜美はふるえるほどの畏れを覚えた。

「あれ、なにかしら」

 イクノさんの家の近くで亜美は父の腕をつかんだ。

 イクノさんはまだ帰っていないらしく、家も庭木も黒いかたまりにしか見えない。その中ほどを、白い球のようなものがとび交っていた。一メートルばかりの間隔を、ゆったりとした間合で弧を描いている。止まっているときも、頷くように揺れていた。

 目をこらしていた父が、やがて亜美の背を押して石垣に近づけた。

「よく見てごらん」

 声が笑っている。木々の間をくぐって高く伸びたクリーム色の薔薇が、風に揺れる枝に運ばれていたのだ。ほかのものによって動かされている花に心を引き戻され、亜美は何度もふり返った。

 

 土曜日の午後、亜美は一人でおそい昼食をとっていた。温めたピザまんと牛乳だけである。好物なのに、口の中が渇いていて味がわからない。

 久子が入院するという電話がきたのは、父と二人で洗濯物を干しているときだった。しばらく心配そうにソファに体を埋めていた父が、久子の身のまわりの物を整えて出かけたあと、一人でいる部屋の底に亜美は沈んでいきそうだった。

 亜美は、ぴったりしたタイトスカートが似合っていた久子を思った。あの細っそりとした体の中で、今、小さないのちがたたかっている。

 亜美は食べ残しを片付けるのもそこそこに、憑かれたように家を出た。この日は自転車を使わなかった。三叉路へ行く途中の空地では、機械が入って凄まじい音をたてながら地ならしをしていた。敷地の端から歩道に這い出している雑草が、小さな水色の花を一面に咲かせている。

 信号を渡ってすこし行くと、イクノさんの家の前に車が停まっており、石垣の近くに二、三人の人が立っていた。亜美は足を早めた。

 車は前にも来ていた横浜ナンバーだったが、イクノさんが帰って来たようすはなかった。車の側では、近所の人らしい二人の男女と紺色のワンピースを着た女性が話しこんでいた。

 度の強そうな眼鏡をかけた年輩の男性が玄関の鍵をかけ、その息子らしいもう一人は、大きな箱型の包みを抱いてゆっくりと階段を下りてきた。ワンピースの女性も二人に加わり、近所の男女にていねいに挨拶をしている。

「たいへんお世話になりました。気にはなっていたんですが、どうしてもここを離れたがらなかったものですから」

 その人たちの後ろを通りぬけ、亜美は林へ向かった。背中を全部耳にしていた。

「むこうで本葬をして、納骨をすませたらここの片付けに来ますので、そのときあらためてご挨拶にうかがいます」

 木々の葉のすれ合う間から、光がこぼれ落ちてきた。亜美は、母と似ているといわれていた加代ばあの柩の中の顔を思い出していた。あのとき、亜美の耳に誰かが囁いた。

「ひとはね、いちばん見せたい人に、見せたい顔をして旅立ってゆくの」

 イクノさんが見せたい人は誰なのだろう。部屋に飾ってあった写真の顔が、亜美の目の前に次々に浮かぶ。

〈たんたんたけみつ むかいのおやまの〉

 どこからか歌声が聴こえてきた。亜美は林の中を見回した。薄い幕が下りてでもいるように、ぼんやりとしている。影のようなものが竹林から棕櫚のかげに走った。亜美は目でそのあとを追ったが、幹のむこうに髪がなびき、こちらをそっと窺っている気配を感じるだけである。そして、まばたきの間にまた別の木に移っている。やがて一人が二人になり、五人か三人か、ほんとうは一人なのかわからなくなった。

 鬼ごっこでもしているように、イクノさんの姿が見えない人たちを追いかけはじめた。

〈さくらのはぁなが さいたかちったか わしゃしいらぁぬ〉

 歌もイクノさんを追って流れている。イクノさんはこれまで見せたこともないほど、顔いっぱいで笑っていた。聞こえないのに、笑い声が木々に跳ね返っているのが聴こえる。一人ではなく大勢の声だ。亜美も全身をはずませながらイクノさんを追った。追うほどにイクノさんはどんどん若くなる。家族写真の頃になり、とみ子さんになり、もっと幼くなった。すると、はだかの子供が幹からはじき出されたり、枝から跳び下りたり、土の中から湧いてきたり、数えきれなくなった。どれがイクノさんかもわからない。加代ばあも母も、まだ生まれていない亜美のきょうだいも混じっているような気がした。光のしぶきが飛び散っているような声を放って、子供たちは走りまわる。亜美もお腹の底から笑っていた。

 ふいに、高くエンジン音がひびいた。

〈まずまずいっかん かしまぁした ほいな〉

 ほいな、の声と同時にひと打ちした毬をはね返されでもしたように、亜美は両手をしっかり胸で握りしめた。

 歌ごえが尾をひいて遠くへ吸い込まれてゆき、林のなかの薄い幕もきえた。

 亜美は合掌でもするように、両手を木にあて体を近づけた。腰のあたりに蔦の葉がふれる。絡んだ蔓の網の奥を、一、二ミリほどの虫が走りまわっていた。ひと息吹きかければ消えてしまいそうな、点ほどの虫がまるで嬉々として動いている。

 虫はするりと洞の中に入っていった。

 亜美は深く息を吸い、ゆっくりと洞のあたりに頬を寄せた。地の底の気配が木肌をとおして滲んでくる。

 ほどなく洞の中から、刻をきざむ時計のひびきが鼓動のように聴こえはじめた。

――了――

日本ペンクラブ 電子文藝館編輯室
This page was created on 2003/11/17

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宮田 智恵子

ミヤタ チエコ
みやた ちえこ 小説家 1932年 北海道旭川市に生まれる。日本随筆家協会賞。

掲載作は、「季刊作家」2000(平成12)年34号初出、2002(平成14)年11月菁柿堂刊『橋のむこうに』に収録。

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