死相と　死相が

重なって　重なる

　

六十数年前

戦地で　若い命が失われた

焦土と化した　この国の人々の命が失われた

今も

地球上で　戦争とテロがあり人々の命が失われている

　

武器は要らない　戦争をしてはいけない

　

硝煙が　立ち並ぶ

砕かれた脳漿が　転がる

　

最終列車が

暗闇を　突っ走る

視野が　狭窄する

倒れる　影と影

　

切り裂かれる　画面に

黒蝶が　磔になる

　

葬送の　列が

地平線を　行く

窓の外を　見詰めている

生と死の間を　生き急ぐ人々

上空を旋回していた鳥が　急降下してくる

そして

屋上の

テレビの

アンテナの

天辺へと飛翔する

雲が

流れていく

残月が

宙空にある

モザイク模様に

嵌り込む

折々の事象

　

語り合って

魂と魂を鎮めて

痛みと痛みを鎮めて

生と死の命の

花影が舞う

　

昨日の事のように

語り合う命

遠い日々の事のように

語り合う命

　

根っこを掘り起こす

根っこを埋める

　

近付いてくる　時空

遠ざかっていく　時空

無窮にとどまる　時空

　

鎮魂譜を奏でる

月と星の

天空を飛翔する

山頂に

木々が並ぶ

　

二十年前に亡くなった

Ｋ氏の

「夢候」の展覧会の会場

昔日の時空が並ぶ

優しい命がとどまる

懐かしい命がとどまる

落し物のような形骸が

点々と連なっていく

　

昨日のことのように

今日のことのように

明日のことのように

並んでいる

　

山頂が

傾斜する

　

無窮の時空が

傾斜する

忘れ物の

手袋が

虚空を見ている

今日を探している

　

地球の

瘡蓋が剥がれて

潰れて

雪崩れて

叫んでいる

　

忘れ物の

手袋が

虚空を見ている

明日を探している

　

地平線を

人々と

動物達が

並んで歩いている

　

人々が

遣られる

動物達が

遣られる

叫んでいる

　

忘れ物の

手袋が

宙を舞い舞う