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半熟官僚大辞典

 ・合議:

 法律等を作るとき、他の省庁にお伺いを立てることをいう。建前上は、他省庁の反対があっても法案の作成は可能だが、実質的には閣議とその前の事務次官会議は全省庁の合意が原則なので、他省庁の反対は致命的になる。そこで、各省庁の話し合いの場である合議で折り合いがつかないと先に進めないのである。そのため、各省庁とも全力で戦いを挑み、この戦いの勝ち星が多いキャリアほど、霞ヶ関では優秀であるとされる。そのため、自分の主張よりも省益を重視した、屁理屈の言い合いの場になる。もちろん、正論は通用せず、化かし合い、腹芸、浪花節等様々な技が要求される。

 ・赤プリ:

 赤坂プリンスホテルのこと。政治家のパーティーはたいていここで開かれる。ちなみに、パーティー券の相場は、3万円前後である。昔は、役所経由で業界団体に無理矢理買わせるという荒技があったが、最近は公務員倫理法等もあり与党も派手なパーティー券の押し売りは自粛しているようである。

 ・朝帰り: 

徹夜をして早朝、着替えのために自宅に戻ることをいう。ちなみに、本当に忙しい時期には、役所からはタクシーで自宅まで戻り、そのままタクシーを待機させておいて、シャワーを浴びて着替えて戻って来るという朝帰りもある。当然、完徹になる。また、金曜日の夜に残業して、土曜日の始発で帰るという朝帰りもある。

 ・アタッシェ:

 各省庁から在外公館に派遣された出向者の外交官のことをいう。主に事務官のキャリア官僚は先進国の気候のいいところに派遣される。ノン・キャリアや技官は、外務省職員ですら行きたがらないような、アフリカ等の僻地に派遣される。外務省は、もともと人手不足だから、各地の在外公館には外務省以外の出向職員が多く勤務している。アタッシェは、夫婦同伴が原則である。そのため、外務省の大使夫人に、同伴した夫人がいびられて家庭問題に発展することが多くある。

 ・圧力団体: 

業界の利益を守るために、族議員を選出したり、役所に圧力をかける集団のことをいう。たくさんあって、非常にやっかいである。与党政治家のスポンサーの業界団体は、有力議員や族議員を使って各省庁に圧力をかけ自分達の主張を強引に認めさせようとする。自分達の利益しか追求せず、霞ヶ関の政策を歪める諸悪の根元である。また、野党系の圧力団体は、市民団体等とりあえず省庁の政策に反対する。どちらにしろ、霞ヶ関にとっては厄介な存在である。

 ・天下り: 

キャリアの定年は50代前半なので、退職後の生活保証を役所がみてくれる制度のことをいう。財務省は、民間企業を中心に、他省庁は所管団体や特殊法人を中心に天下る。マスコミでは、諸悪の根元のように言われているが、天下りさせないと役所に老人が居座りもっと厄介な老害が発生する。また、天下り後の高給は、民間企業に比べて薄給である官僚の後払い賃金という学説が有力であったが、不景気下ではリストラがないという身分保障がすでに官僚の特権となっており、説得力がなくなってしまった。天下り廃止のためには、早期退職を止めさせればいいが、そうすると幹部が老人ばかりになりさらに役所の硬直化を促進してしまうというデメリットがある。

 ・飯野ビル:

 日比谷公園の向かいにある雑居ビル。地下は大食堂街である。イタリアンから焼き鳥まで、幅広い品揃えで官僚や虎ノ門の会社員がたくさん利用している。官僚は、遠くで外食できないので、近所の飯野ビルはもっとも官僚の利用率が高い食堂街である。役人を1年もやれば、飯野ビルの店はだいたい分かるようになるのが悲しい。

 ・意見:

 法案や政令案等をある省庁が作るときには、各省庁に各省協議で内容を他省庁に公開する。霞ヶ関は、自分の省庁の利益がもっとも重視されるため、各省協議で他の省庁が自分の省の権益を侵害するような政策を立案しているときには、命懸けで潰さなければいけない。最初は、質問を出してソフトに攻撃し、次に自分の省庁の主張を意見という形で提出する。官僚として、省のメンツにかけて絶対に引き下がれない駆け引きの場である。

 ・委員会:

 国会には、本会議と委員会がある。本会議は、全議員の話し合いの場である。一方、委員会は委員に選ばれた一部の議員だけの話し合いの場である。委員会は、おおよそ各省庁の所管分野に対応していて、予算を話し合う予算委員会や環境問題を話し合う環境委員会等がある。国会の手順としては、最初に委員会で話し合い、本会議ではほとんど審議がなされないシャンシャン総会である。これは、本会議ではいちいち各省庁の政策の細かいことまで話し合えないので、実質的な話し合いの場として日本では委員会中心主義で機能しているためである。議員にとっての花形委員会は、利権が多いところである。例えば、予算委員会はテレビ放映が行われるので、議員も委員になりたがる。宣伝にはもってこいだからである。逆に、文教委員会や環境委員会のような地味な委員会は、会議に出席しない不届きな議員もいる。ただし、文教委員会は大学の補助金を審議するので裏口入学という利権がある。自分の有力支持者を裏口入学させることで、恩を売るのである。また、運輸関係の委員会は、飛行機内や空港でVIPとして扱われ、航空券等もプレゼントされることがあるので、飛行機の利用が多い遠方の議員は選ばれたがるそうである。

 ・一斉コール: 

大臣官房総務課や、局内総務課から出される国会関係の指示のことをいう。大音量で、電話のブザーが鳴る。ちなみに、一斉に原局や原課の職員を集合させて、指示を出すのにも利用される。要するに丁稚コールである。呼び出されると、走っていかないと、総務課で嫌みを言われる。そのため、一斉コールの後はサンダルで職員が総務課に駆けていくことになる。

 ・受付: 

役所には受付があるが、ほぼノーチェックで入場が可能である。例外的に警備が厳しいのは、警察庁、外務省、財務省、防衛庁ぐらいである。しかし、役人の身分証があれば全省庁フリーパスなので、過激派やカルト教団、テロ組織に身分証を偽造されれば、日本で一番、爆破し易いのは霞ヶ関である。守衛さんがいいかげんなので、民間人でも適当に理由をつければ簡単に入場が可能である。というより、情報開示請求や資料閲覧で入場できるので、民間企業以上にテロに狙われる可能性が高い無防備な場所である。

 ・栄養ドリンク:

 霞ヶ関の必需品である。リボビタンDが、法案を作成するタコ部屋の差し入れではポピュラーだが、役所の地下にはマイナーな栄養ドリンクがたくさん割引価格で置いてある。おそらく、省内の売店で一番、売れているのが栄養ドリンクである。同じく栄養剤も人気があるが、心理的には栄養ドリンクを飲んだ方が効果があるような気がするので良く飲まれている。その日の疲弊度によって、購入する栄養ドリンクの値段が変わる。やや疲れているときは、150円前後のものを、かなり疲れているときは300円前後のものを、そして、徹夜続きで死にかかっているときはトナカイや朝鮮人参が入った高級なドリンクを奮発することになる。24時間、戦っているのだ。

 ・エコロジー: 

霞ヶ関のキーワードである。コピー用紙は、再生紙。省エネのため、夏は冷房も28度である。また、全職員が深夜まで働いていても夕方になると冷暖房が切られるので、冬は雪山に、夏は砂漠になる。夏は、団扇や扇子、扇風機等の自衛手段がかかせない。

 ・お菓子:

 食糧事情が悪い霞ヶ関では、重要な栄養源になっている。各課には、買い置きのお菓子があるが、職員のカンパで購入している。マスコミは、取材のたびに調子に乗ってテーブルの上の飴やお菓子を持って行くが、我々の身銭である。夜中は、食堂がしまるのでお腹が空くとお菓子をみんなで食べている。

 ・お札せんべい:

 財務省のコンビニで売っているお札の形をしたお菓子のことである。法律的に大丈夫なのだろうか?。ただ、噂では福沢諭吉の故郷の大分県中津市では一万円を模倣した「1万円煎餅」が売られているらしい。財務省のお札ゴーフルは、神戸の老舗風月堂が制作している、洋風薄焼き煎餅である。本当に1万円、5千円、1千円そっくりで笑える。

 ・お酒:

 18時過ぎになるとお茶の代わりに飲み始める幹部がたまにいる。そして、それが省内で宴会と週刊誌にフォーカスされたりする。勤務時間外に何してもいいだろうが、ほっておいてくれ。もちろん、飲んでいる人には残業代は支払われていない。

 ・汚職:

 ノン・キャリアの福利厚生は悪い。そこで、お金があるとつい手を出すことをいう。霞ヶ関は、採用時の資格で昇進が決まる。そこで、現場のことはベテランのノン・キャリアの職員の方が圧倒的に詳しいし、特にキャリアはお金をいじらないという伝統があるので、外務省のようなノン・キャリアの会計汚職が起こることになる。キャリア以外の職員の福利厚生と処遇の見直しが必要であろう。

 ・落ち武者狩り: 

選挙違反で逮捕されるのは、落選者の陣営が多いことをいう。これは、研修中に選挙事務を所管している総務省の友人が言っていたことである。選挙違反は、通常は開票直前から、警察の摘発が始まる。そこで、選挙事務所の会計責任者らは開票日前に姿をくらまして難を逃れようとするのである。しかし、選挙違反で逮捕されるのは、当選した候補の関係者よりも圧倒的に、落選者のそれが多い。それゆえ、落ち武者狩りなのである。

 ・お茶代金集金:

 別名「コーヒーカンパ」。役所には、お茶代がないのでコーヒーやお菓子、お茶を買うお金は給料から天引きされたり、定期的に募金を集めることで成り立っている。来客者やマスコミは、その事を十分、理解した上で心して役所で出されるお茶を飲むようにして欲しいと思う。

 ・|覚書(かくしょ):

 役所と役所のお約束の証文である。この覚書の調印をめぐり、省庁間で戦いが繰り広げられる。一般的に覚書が締結されるのは、各省協議で意見を出されて妥協点が見いだされたときである。ようするに、なわばりの再確認を文章で取り交わすわけである。具体的には、新しい法律を作っても、その法律は他省庁の権益を侵すことではないということを約束させるのが覚書である。最近は、情報公開法の公開対象から逃れるため、脱法行為として課長同士の私的なメモという形で、マスコミや野党議員の追求をかわそうとしている傾向がある。

 ・会計検査:

 適正に予算が使われているか、会計検査院が検査することをいう。国も地方も非常に、会計検査を迷惑がっている。民間で言う税務署の税務調査に当たり、無理矢理、重箱の隅をつついたような経費ミスを発見して大喜びするいやらしい検査である。まじめな検査員がほとんどであろうが、地方で接待を受けたり、霞ヶ関の検査先でセクハラ接待を受ける本省課長がいて、多くの公務員の顰蹙をかっている霞ヶ関の嫌われ者である。

 ・会計検査院:

 憲法に定められた無駄な行政機関である。上記にある通り、存在自体が無駄なので早急に廃止するべきである。ちなみに、廃止には憲法改正が必要である。本質的な政策の無駄使いを追求せずに、重箱の隅をつついたような経費の無駄使いを見つける霞ヶ関の小姑的存在。財務省の植民地でもある。

 ・会館配布:

 議員会館にマスコミ発表前に事前に資料を配ることをいう。誰(議員)も見ないが、形だけでも事前に国会議員にお知らせしたことにして政治家の顔を立てる形式行事である。一応、一通り資料を配布しておかないと、あとで聞いていなかったとお叱りを受けたり、嫌がらせを与党の国会議員から受けるので、読まないであろう資料も一応、届けてあげることをいう。また、資料配付は、うるさい長老議員や族議員を最優先で配布する。

 ・会議室: 

意外と霞ヶ関の会議室は数が少ないのだ。そこで、陳情や抗議の市民グループが来たときには、空いている会議室を探すのに一苦労する。省内のコンピュターで予約ができるようになっているが、政治家が突然「陳情団」を押しつけてくるので、他の課に頭を下げて会議室を貸してもらうことになる。政治家は、無理押しと無計画で本当に迷惑である。もっとも、陳情に来る支持者がもっと身勝手なのだろうが。

 ・外務省:

 頭のいい変わり者が多い省庁である。世間では伏魔殿と言われているが、いい人が多い。ただし、変わり者が多い。外務省のキャリアは、それほど語学が堪能ではなく、むしろ外務専門職の職員の方が、上手かったりする。普段の服装は、やはりおしゃれである。「なんか違うよね、外務省は」と言ったら怒られた。他省庁の官僚から特別扱いされるのは嫌いらしい。お金持ちが多いのか、研修中、僕らは普通列車にしか乗らないのに、彼らはみんな特別料金を支払って特急に乗っていた。給料は同じはずなのに謎である。

 ・会費制:

 昔と違って、特殊法人や業界団体にただでご馳走になると公務員倫理法にひっかかる。そこで、自分が食べるぶんのお金は官僚が自分で負担することをいう。ただし、たいてい、1500円の会費を支払うと3000円から5000円分の料理が出てくる。霞ヶ関の7不思議の1つである。

 ・閣議:

 総理以下全部の大臣が集まって、書類に署名をする儀式をいう。世間では、閣議は閣僚の話し合いの場と誤解されているようだが、サインをするだけの形骸化された儀式である。ちなみに、霞ヶ関で、法律案の提出をするには閣議を経ないといけないのだ。閣議にかける内容は、前日の事務次官会議でチェックしているので大臣はチェックしない。基本的に閣議は、無言でひたすら署名をするだけで終わることが多いようである。

 ・霞ヶ関: 

東京都千代田区霞ヶ関。皇居の側にあり、日本の行政の中枢機関として中央官庁が密集している。例外としては、皇居内に庁舎がある宮内省と新宿の市ヶ谷の旧自衛隊駐屯地(三島由紀夫が切腹したところ)にある防衛庁である。霞ヶ関は、たんなる地名というよりも中央官庁の総称として使われることが多い。この本でもそういう使い方をしている。

 ・家族:

 同居しているにも関わらず、週に一度、顔を見られる存在が霞ヶ関の官僚にとっての家族である。深夜残業が多いのだ。そのため、配偶者選びをよほど慎重にしないと離婚されることになる。また、携帯電話でこまめに連絡を入れ、プレゼントをかかさないなどこまめな愛妻家が霞ヶ関には多い。パソコンのデスクトップや机には奥さんや子供の写真を飾っている妻帯者が多い。

 ・課長:

 課内や業界に対しては殿様である。大名並の絶大な権力を持ち関係業界に君臨している。しかし、大名の上には、大目付(審議官)、老中(局長)、大老(官房長)、将軍(事務次官)、そして天皇様(大臣)がいる。しかし、たまに後醍醐天皇の建武の新政のような強硬政策をとるT中真紀子のような天皇も現れ、将軍以下幕府が苦労させられる。キャリアが課長になれるのは、入省20年前後、40代である。

 ・カップラーメン: 

忙しい霞ヶ関の住人の主食である。お湯をかけると、3分で食べられる便利な食料である。大名の課長ですら、地下の売店で買ったインスタントラーメンの味比べをするほど、忙しいのである。たまに、試食品と称して業界団体から差し入れが段ボール箱で届くことがある。試食品(差し入れ)は、真心としてありがたく頂いている。

 ・紙爆弾:

 ライバル省庁等への嫌がらせのために、各省協議で、無意味な質問をしたり、わざと大きな文字で書いたFAXを他省庁に送って、業務妨害することをいう。最近は、若手官僚の合同研修の長期化で省庁の垣根が取り払われつつあるので、無意味な嫌がらせの紙爆弾は以前より少なくなったようである。また、韓国の太陽政策を見習いライバル省庁とも仲良くやるように努力して、無駄な軋轢を生まないように中堅幹部が努力しているが、幹部が思いつきで喧嘩を仕掛け、後に引けなくなることもある。

 ・仮眠室: 

お家に帰れない人のために地下にあるたこ部屋のことをいう。財務省では、ホテルオークラ(大蔵)、他省庁では、死体置き場、霊安室等の名称で呼ばれる事が多い。お風呂は職員専用のシャワー室がある省庁もあるが、たいていは宿直用の守衛さんの風呂を借りることになる。中には、忙しくて役所で生活している人もいて、昼休みや明け方に役所のお風呂に入っている人もいる。

 ・カロリーメイト: 

霞ヶ関は、深夜やっている売店がないので、カロリーメイトは貴重な常備食である。多くの官僚の机の引き出しに、常備されている。主に、夕食を食べている時間がないときに利用される手軽な栄養源である。なお、霞ヶ関には偏った食生活の人間が多いので、ビタミン剤等で足らない栄養を補っている人が多い。

 ・環境省: 

あまり影響力を発揮できないでいた小さな省庁である。前身は、環境庁であり、公害問題が深刻になったために設置された。しかし、環境政策は他省庁の開発や産業振興政策をくい止めることになるので、全省庁から袋叩きにあっていた。そのため、職員の志気も低く、嫌がらせで各省協議の時に無意味な質問を100問単位で各省庁に送って、憂さ晴らしをしていた時代もある。最近は、省に格上げされ多少、志気が盛り返したようである。もちろん、これからの地球や日本に取って環境問題は重要な課題であるから、活躍が期待される省庁の1つである。

 ・官庁訪問:

 公務員試験の受験者が希望の役所に採用してもらうために、役所を回ることをいう。基本的には、民間企業の採用面接と変わらない。ちなみに、夏の暑い時期に官庁訪問は行われるので、体力的にもしんどいものがある。省庁間で受験生の青田狩りを行なうため、省庁間でもめることが多い。この争いを防ぐために、毎年、各省庁の秘書課長の紳士協定が結ばれて、青田刈りを防ごうとするが、抜け駆けして青田刈りする省庁が後を絶たず、結局、もめるのである。

 ・官房総務課: 

大臣官房や長官官房に設置された国会の交通整理をする部局。官房総務課の出先機関が、参議院の別館にある国会連絡室である。各省庁の官房総務課には、内閣総務官室から、国会待機等の指示が出される。そして、官房総務課は、各局総務課に「帰るな」という指示を出す。わがままな政治家を相手にしているため、性格がねちっこくなるのは職業病か。国会答弁の印刷のシミ等を細かくチェックする因果な商売である。

 ・官房秘書課:

 幹部職員とキャリア官僚の人事を所管しているのが、大臣官房や長官官房秘書課(人事課)である。通常、ノン・キャリアの職員は各局の総務課人事班が人事を決めるが、キャリア官僚は1年生から幹部並に秘書課で人事を決められる。ちなみに、官房総務課長、官房秘書課長、官房文書課長、官房予算課長等の官房課長は局長等の幹部職員への登竜門となっている。

 ・官房予算課: 

省庁の予算を掌握しているのが、官房予算課(会計課)である。毎年、省内の予算案をまとめた後に、財務省と交渉する窓口になっている。霞ヶ関は、予算の額がそのまま省や局の力になるので、予算の獲得合戦は熾烈である。なお、財務省との交渉は理詰めよりも主計官の感情に訴える浪花節的手法が有効とされている。この点、理詰めと前例一本槍の内閣法制局との交渉とは対照的である。

 ・官房文書課:

 省庁の文書の管理をしている部署である。法令作成の省庁内審査は文書課法令審査官の審査が必要になる。法律は、句読点一個の位置が違うだけでも、意味が違ってくるため、それを扱う文書課の職員は非常に細かい人が多くなる。あまり、近寄りたくない部署である。

 ・官房長: 

事務次官を狙えるポストの一つである。政治家と各省の橋渡しになる仕事なので、外面がよい八方美人の官僚が任命される事が多い。本省では、事務次官、財務官や審議官の次にくるNO3のポストのため、ここから先に進めるか、勇退させられるかはOBや事務次官にどれだけ、媚びを売って気に入られるかにかかっているため微妙なポストと言える。

 ・官僚:

 良い意味で使われたためしがない。ほとんど、差別用語である。本来は、組織化された公務員のことを指す言葉である。一般的には、国家公務員を指すことが多いが、霞ヶ関で官僚といえば、キャリアの事である。ちなみに、高級官僚というのはキャリアの本省課長以上の事を言うことが多いようである。

 ・議員会館: 

国会の横にある議員の事務所である。中は意外と狭く、2LDKである。議員の部屋と秘書の部屋に別れている。議員の部屋はそれなりに広いが、秘書の部屋は3人共用で、来訪者用の椅子と机もあるので狭い。衆議院は第一と第二の2つの議員会館が、参議院は1つの議員会館がある。役人は、省庁のプレスリリースを配ったり、根回しに訪れる。身分証がないと入れず、受付のお姉さんは基本的に無愛想である。まれに愛想がいい人に当たると、幸せな気持ちになる。入場者は原則として、金属探知器でボディーチェックされるが、議員本人と秘書と官僚は免除される。

 ・議員立法: 

国会議員が自分たちで法律を作ることをいう。与党は役人に作らせるので、野党の提出がほとんどである。ちなみに、正規の手続きでは法律の制定が間に合わないときは与党幹部に頼んで、霞ヶ関で作った法律を議員に提出してもらうという裏技を使うこともある。なお、本来の議員立法をサポートするために、衆議院法制局、参議院法制局があるが、霞ヶ関と比べて職員の数も少なくあまり活用されていないようである。また、野党提出の議員立法が可決されることはない。なぜなら、野党が国民受けしそうな法案を提出すると急遽、霞ヶ関に同じ内容の法律を作成させ与党案として提出し可決して手柄を横取りするからである。

 ・記者会見:

 大臣や省の幹部が、マスコミ相手に官僚が書いた作文を朗読する場所。記者クラブが各省庁にはあり、政治家の番記者のように省庁の人間とツーカーの仲になっている。お互い阿吽の呼吸になると、お気に入りの記者には役人がスクープ・ネタを内緒で教えることもある。しかし、霞ヶ関には記者クラブで省庁に常駐している記者の他に事件が起こった時にくる社会部の記者がいる。社会部の記者は、会見の態度も口も悪く、やくざのようなので、「ちゃんとした大学を出てよくあそこまでガラが悪くなれるなあ」と幹部に呆れられている。

 ・広辞苑:

 岩波書店の発行の大辞典。辞書の王様。霞ヶ関の日本語のルールブック。役所で適当な資料が見つからないときは、広辞苑から引用して資料にすることがある。ちなみに、資料として引用されるのは国会答弁、法令用語事典、辞書である。さすがに、頭が固い官僚も、広辞苑の定義には楯突かない。

 ・起案と決裁:

 決裁は、法律案等を作ったときに、偉い人の判子を集めてまわるスタンプラリーのことをいう。法律起案は、法律案のような決裁を必要とする文書を作成することをいう。決裁は、膨大な数の関係者の判子が必要であり、どうでもいいことでも実行されるまでには、大変な時間がかかる。官僚制の一番の弊害だが、官僚制の本質でもある。

 ・技官: 

技術官僚のことをいう。医者から数学の専門家、獣医、ダムの専門家、農業、林業、特許等など、ありとあらゆる分野の専門家が霞ヶ関には存在する。実際にどんな政策を行なうかは、技官が考え、技官が考えた政策を法律などの形にして実行するのが事務官である。一般的には、事務官の方が昇進面で恵まれているため、技官との間に見えない大きな溝がある。表面上は、事務官に従っているが内心は、事務官嫌いの技官が多いのが実状である。また、職種ごとに固まって派閥を形成しており、省庁内の圧力団体となっている。農林水産省農村振興局のように技官が決めた公共事業には、事務官は口出しをしないという暗黙のルールが確立されている省庁が多い。

 ・議事妨害: 

野党がどうしても、政府の政策を認めがたい時にとる最後の抵抗手段。採決時間を延期させるために、半歩ずつ進んで投票を遅らせる牛歩や議長の辞任案の提出で法案の採決を阻止する等のさまざまな技がある。しかし、多数決が正義の国会では野党の議事妨害に実効性はなく、国民に自分たちの存在をアピールする手段にしか過ぎない。

 ・議事録:

 国会や大臣会見の要旨の事をいう。参議院と衆議院には、速記者養成所があり、国会での発言を書き取っている。よく国会では乱闘が起こるが、議事録では書き取れずと記入されることが多い。国会のホームページで過去の議事録を検索することができる。国会の発言録は、前例や資料として大変、重視されている。

 ・キャリア官僚:

 国家公務員_種採用試験で採用された人のことをいう。「特権さん」等様々な呼び名がある。ノン・キャリア公務員の数倍のスピードで昇進する。同期の同時昇進が原則のため、同期の結束は堅い。多くの省庁が本省の課長までは昇進させている。官僚のトップである事務次官になれるのはキャリアだけであるが、同期から事務次官が出た場合は他の官僚は勇退する習わしがある。

 ・牛乳: 

60円の紙パックの安い牛乳が、霞ヶ関の自動販売機では売られている。

 ・殉職:

 過労死や自殺のこと。今時、流行らないが、相変わらず多い。

 ・行政不服の申し立て:

 市民が行政機関に正式に文句をつけること。市民の権利を守る大切な制度だが、クレーマーに悪用されることが多く、霞ヶ関の業務妨害になっている。

 ・行政評価:

 自分たちの政策を自己採点すること。それだけでは、国民に対して説得力がないので第三者委員会等、外部の人間の意見も聞いた形を取る。もちろん、自分達に都合が悪い結果は発表しない。かなりめんどくさい。

 ・局長:

 50歳前後で就任する。省庁にもよるが、同期で局長まで昇進できるのは数名である。主な仕事は、与党政治家への根回しと委員会での国会答弁である。国会のある日は、深夜まで答弁のチェックがあるので待機しながら、飲んでいる。ちなみに、大部屋から個室が与えられるのは、官房課長以上である。局長室は、重役室並に豪華である。また、局長まで勤め上げれば事務次官レースに参加できるし、天下り先もそれなりのポストが用意される。多くのキャリア官僚が、本省の局長までは昇進したいと思っている。余談だが、霞ヶ関の人事はマイナス査定方式なので手柄を立てるよりも失敗が少ない方が偉くなれる。そのため、出世する人は若いときに、忙しくない部署を回ってエネルギーが残っていて、そのエネルギーを利用して後半戦に追い上げをかけている。

 ・宮内庁:

 霞ヶ関に勤めている官僚にもその全貌が分からない、神秘のベールに包まれた役所である。そもそも役所の所在地が、皇居の中である。公務員研修にも姿を現さないので、どんな人間が採用され務めているかすら謎である。いろいろな噂があるが、実は一般人を職員に採用しているらしい。内部部局の名前は、式部職や大夫等、平安時代そのままの官職が使われている。

 ・クレーマー:

 どこにでもいる人。役所に平日、何時間も文句の電話をかけることが可能な暇な人。どこで、電話番号を調べるのか直接、政策や失態について文句を言ってくる。きっと、ストレスが多いのだろう。なお、日本の最高機関は国会なので、苦情は地元の政治家に言うか、もしくは選挙で政策の判断を仰ぐべきであり、役所に直接抗議するのは、行政のスムーズな運営を妨げ、民主主義に反するものだと考える。

 ・経済産業省:

 口が達者でくどい人が多い。そもそも、所管業務が各省庁と競合するので他省庁相手に喧嘩を仕掛けるのが大好きである。外面はいいが、腹黒い人間が多いとの噂があるが、多分、そんな事はないはずだ。ただ、公務員研修で「腹黒い人ナンバー1」に選ばれたのは、僕と同室の経済産業省の友人だった。根はいい人が多く、勉強家が多いが、悪く誤解されやすいキャラクターの人が多い。産業政策全般、競輪も所管している。また、口達者で傍目には広告代理店のようなかっこよさがあるので、合コンでもてるエリート集団である。

 ・警察庁:

 警察庁のキャリアは、入庁してすぐ警部補になることができる。彼らは、入省後、半年間の間、全寮制の警察大学校でかなり厳しい訓練を受ける。そのため、霞ヶ関で唯一、拳銃の発砲技術を身につけた希少な存在である。酒好きが多く、呑めないと苦労するらしい。競馬や麻雀が好きな人が多いが、警察大学校への麻雀の持ち込みは禁止されている。

 ・警視庁: 霞ヶ関にある東京都警察本部、つまり地方警察である。ドラマで使われていたように、本店といわれている。なお、警察庁のことは「会社」とキャリアは言っている。どうも職業を第三者に知られるのが嫌らしく、けして警察官とは言わないのが警察官僚である。

 ・警視:

 ノン・キャリアの場合は、定年までに警視になれる人間はほとんどいない。しかし、キャリアは本省の係長職に該当するので4年後に就任できる使いパシリポストである。何かの本に警察庁では警視に昇進してやっと一人前として扱われると書かれていたが、霞ヶ関では総括補佐になって初めて一人前と見なされるので(国会の質問取りに行ける)、警察官僚の場合は警視の上の警視正が一人前のポストである。なお、警視は現場では警察署長のポストであり、ノン・キャリアの警察官が警視正になるのはまず無理である。

 ・携帯電話:

 以前、どこかの省庁の役人が国会でならかして問題になった。それ以来、国会では携帯の電源を切るようにという指示が徹底されるようになった。ほとんど、家に帰ることが出来ない官僚の家族との唯一の連絡手段である。昼間は電源が切られている事が多い。

 ・迎賓館:

 四谷にある国の唯一の接待施設である。鹿鳴館外交を彷彿させるベルサイユ宮殿風の建物は夏場には一般公開されている。現在、京都に純和風の迎賓館の建設計画があるが、この財政難のおりに果たして国民の理解が得られるのか疑問である。

 ・憲法:

 誰も逆らうことができない日本のルールブック。裁判所には、憲法に違反する法律を審査する違憲立法審査権があるが、過去に明らかに憲法違反と断定された法律は数本しかない。裁判官も人間なので、人情で裁判をやっている。というのも日本初の違憲判決は刑法の尊属殺人で、近親相姦に耐えかねた娘が父親を思いあまって殺した量刑が、通常の殺人よりも重いという判決であったからだ。

 ・公共事業:

 何をやっても、マスコミに悪く言われる国や地方自治体の事業の事である。各省庁には予算があり、予算の額が省庁の力になるので予算を消化するために無駄だと分かっていても止められない公共事業が山のようにある。過去には、環境破壊の元凶であったが、現在は環境を守るための公共事業が次々と立案されている。つまり、予算を使うためだけに行われるあらゆる事業をいうのである。

 ・厚生労働省:

 更正が見られない省庁とマスコミなどから批判される不運な省庁。事務次官の逮捕から、薬害エイズ、ヤコブ病、狂牛病と問題が絶えないが、職員は生真面目な人が多い。中央省庁再編で厚生省と労働省合併して出来たが、厚生省出身者はプライドが高い人が多く、労働省出身者は地味だが縁の下の力持ち的な人が多い。

 ・公務員の定数削減:

 結果としてただでさえ少ない霞ヶ関の官僚をさらに減らし、責任感のつよいまじめな公務員の過労死者を増やすための政策。たんなる公務員の数あわせに終始しているため、行政の質の向上が無視されている。公務員の定員削減の裏技としては、独立行政法人への移行等がある。

 ・公務員倫理法:

 公務員の接待を禁止した法律のことをいう。倫理観のある公務員には、それなりに効果がある。しかし、バブル前後の過剰な大名接待を経験している中高年の公務員は、倫理法の施行前を懐かしむ人も多い。この法律の施行を一番、喜んでいるのは建前では付け届けや接待をする必要がなくなった特殊法人や業界団体である。裏技として、会費制の接待や庭で取れた土産物などがある。

 ・公用車:

 官房総務課長以上には、役所から運転手付きの黒塗りの専用車が与えられている。しかし、昼間は職員のお使い専用車に早変わりし、永田町近辺を走り回っている。

 ・国債:

 国の借金。GDP(国内総生産)より多く、先進国中最悪。借金の利払いのために借金を重ねなければいけないところまで追いつめられている。破産も間近か?なお、国の財政のルールを定めた財政法では、予算の穴埋めをする国債の発行は禁止されている。日本でも昭和41年まで予算の穴埋めをする赤字国債は発行されていなかったが、その後は、毎年、国会の決議で赤字国債を発行している。

 ・国税庁:

 財務省の外局。税金を集めるところ。

 ・国土交通省:

 公共事業の元締め、交通行政も担当している超巨大官庁。職員採用数は、農林水産省と並んで多く、研修でも一大勢力を結成していた。人数が多すぎるため、ひとくくりで職員のキャラクターを表現するのは難しい省庁である。まじめな人もナンパ王も存在する。酒には強く、全省庁でもナンバーワンの酒豪揃いである。

 ・国民:

 役所も国民も、お互いに交流がないため声が聞こえない存在となっている。

 ・国会:

 霞ヶ関の官僚が作ったシナリオ通りに国会議員が議論をするところ。本当に、質問も答弁もあらかじめ分かっているので、国会劇場である。たまに、予想外の爆弾質問があると大臣が立ち往生して、問題になる。

 ・国会議員政策担当秘書:

 議員の政策立案をサポートするための秘書で、毎年試験が行われ600名前後が受験している。各議員には一名の政策秘書がついているが、実際には試験に合格した者ではなく、長年、秘書を務めた人間が特例で認定された人が多い。給料は、一般の秘書より高いが、某議員のピンハネ事件で国民にその存在が知られるようになった。実際に、どれくらいの政策秘書が政策を立案できるのか疑問ではある。

 ・国会対応:

 各省庁によって、指示が異なるが、一般的には。4つの指示がある。「待機」は、国会質問が自分の省庁に当たる可能性があるため帰るなという指示。「連絡員待機」は、ひょっとしたら質問が出る可能性があるので、念のため誰か職員を留守番させおくために、若手職員だけ残れという指示。「確実なるメモ入れ」は、質問が当たらないと思うけれど万が一、予想外で質問が当たったら困るので担当者の携帯の番号を局内総務課に逐一メモに書いて教えて帰ってよしという指示。「解除」は、翌日の国会質問が全て確定しているので、国会の待機は不要だという指示である。

 ・国会対策委員会:

 国会の駆け引きをしていて、与野党ともにある。通称「国対」という。

 ・国会中継:

 各課には、国会中継が放送されるケーブルテレビが引かれている。そこで、当日の国会答弁を作成した課は、国会が始まるとテレビの前に課長以下職員が集合して、実況中継を見ながら大臣がミスっていないかをチェックするのである。

 ・国会バッジ:

 国会に入るのに必要なバッジのことをいう。国会は、さすがに警備が厳重で官僚でもかってに入ることは出来ない。そこで、各省庁の国会連絡室に出向き入場バッチを借りてから、国会に行くのである。ただし、幹部職員には顔写真付きの入場バッチが交付されている。

 ・国会連絡室:

 参議院別館にある役所の出先機関のことをいう。国会質問の整理や議員からの要望を受けるところである。出張所のようなところで、国会議員の陳情や資料要求は基本的に、国会連絡室を通すことになっている。職員の人数が、仕事が多い割に普通の課より少ないので大変らしく、毎年、国会研修と称して新入職員を集めるが各課も人手が足りないので、よほどのことがないと貸してくれない。

 ・コピー機:

 霞ヶ関で一番の働き者である。24時間戦っている。

 ・財務省:

 予算を握っているため、霞ヶ関で一番、態度がでかく実際、権力を持っている。触らぬ神に祟りなしで、各省庁も極力逆らわないように努力している。個々の職員は、いい人そうに見えるが、プライドは高くしたたかである。また、ごく少数だがものすごいセクハラ野郎が存在する。たまに、ものすごい美人がいる。たまにね。

 ・財務省主計局:

 政府予算案を作成する部署である。財務省では、主計局主計官に就任するのが事務次官レースに参加する第一歩と言われている。もっとも、霞ヶ関で態度がでかく威張っている人ばかりの部署である。。

 ・財務省主税局:

 税金制度の立案をしている部署である。とにかく、国民から一円でも多く搾り取ることしか考えていない恐い人ばかりの部署である。また、税金制度は複雑なため、数年で異動するキャリアよりもベテランと呼ばれるノン・キャリアの方が税金行政に精通しているため発言力も大きい。

 ・狭山の研修所:

 人事院の研修所である。公務員研修の主な舞台である。実は、隣に市民プールがあり、抜け出して通う研修生がいるがどうやら、あとで聞いてみるとそういうふとどきな事をしていたのは、僕たちだけらしい。野球場やテニスコートもあり、体育館、カラオケ完備の一大レジャー施設である。ただし、図書館もあり、また研修中は課題が山のように出され遊ばせない人事院の努力がうかがわれる。毎年、羽目を外しすぎる職員がいるので年々、研修の締め付けが厳しくなっている。

 ・参議院:

 いらない。学者を集めた第2院にするなど、改革が必要である。

 ・サンダル:

 男女とも、朝一番に履き替えて、省内履きにしている。小学校の上履きのようなものである。省内ではみんなサンダルで廊下を走っているのでぱたぱたとうるさい。

 ・残業代:

 一応、でるが毎年局ごとに上限があるので、年度末はもらえなくなる。また、タクシー代と残業代は同じ予算から出ているので、仕事が忙しくなると残業代がタクシーチケットに化けて、ほとんどもらえなくなる。

 ・自殺:

 最後の抵抗。N省の屋上が霞ヶ関の自殺の名所として知られていたが、現在はフェンスが張られ、飛び降りにくくなっている。首をくくる、列車に飛び込むなどの方法があり、国会と政治家の恫喝を原因とする慢性的な重労働とストレスが主な原因となっている。

 ・質問主意書:

 議員が文章で内閣に質問すること。無所属の自称市民派議員等が好んで嫌がらせに各省庁に乱発している。議員によっては、文章すらまともにかけず誤字脱字だらけの質問文は笑えるが、法律と同じく閣議決定が必要なため対応する課は一枚の紙で、大変な騒ぎになる。国会質問の何倍も厄介で、霞ヶ関では忌み嫌われているが、一部の主意書マニア以外には、わざわざ文書で質問しない。なお、回答は国会法で、2週間以内と決まっており、とても大変で、野党の嫌がらせと解釈されている。余談だが、僕が作った主意書対応マニュアルが某省で利用されている。

 ・市民派:

 偽善者が多い。選挙のためのうたい文句である。市民の代表ではない議員がいるのか?民主主義国家なんだから。それを考えると宣伝文句にしか過ぎず、これほど胡散臭い政治家もいない。また、障害者の代表といっても、国民に媚びを売り霞ヶ関では横柄な二重人格者がいるので信用できない。

 ・事務官:

 行政、法律、経済で採用された_種公務員のことをいう。いわゆるキャリア官僚である。ただし、広義にはノン・キャリアも含めてすべての公務員が事務官か技官である。

 ・事務次官:

 官僚のトップ。役所の実質的な最高責任者である。同期では、1名しかなれず、よほどの強運の持ち主でないとなれないポストである。

 ・地元:

 政治家の選挙区。どんな性格のひん曲がった威張っている横柄な政治家でも、選挙のために地元民のわがままは何でも聞く。しかし、その分、霞ヶ関に選挙民の裏口入学の斡旋など圧力がかかることになる。また、選挙区の地元で腰が低い分、霞ヶ関等で威張りちらしストレスを発散する困った、はた迷惑な政治家が多い。どんな悪質な政治家も地元で腰が低いので、マスコミで叩かれている政治家も地元の評判は悪くないことが多いのである。とはいえ、地元以外では、笑顔を見せない政治家も多い。

 ・出向:

 他省庁や特殊法人に異動すること。自分の省庁ではないので、適当に骨休めが出来る。

 

 ・上司:

 上司が、「黒を白と言えば、白」になる。霞ヶ関は、完全な縦社会なので上司は絶対である。絶対に逆らえない。ただし、意見は言ってもいい。

 ・情報公開法:

 霞ヶ関の文章等を国民の求めに応じて公開しなければいけない法律。300円と料金が格安のため、新聞やマスコミが文書請求をしてそのまま載せて霞ヶ関の悪口を書くことで飯のタネにしている。必要な制度ではあるが、利用する側の意識が低く霞ヶ関への嫌がらせにしかなっていないのが現状である。

 ・省庁協議:

 法律等を作るために、他の役所と協議をすることをいう。官僚の戦いの場所である。

 ・省内LAN:

 警察庁を除く、他の省庁は共通の霞ヶ関LANに加入している。セキュリティー意識が低いため、ハッキングは簡単なはずである。昼食の誘いやコンパの募集等、省庁を越えた交流の場所として利用されている。

 ・省令:

 各省庁の大臣が制定する。法律、政令、省令の順番に偉い。手続き的には、閣議にかける必要がないので、省内の法令審査官のOKが取れれば、後は官報に公示すれば効力を発揮する。

 ・食券:

 省内食堂の割引券のこと。各課に備え付けてあり、職員は20円安く利用できる。

 ・条例:

 地方自治体が制定する決まり。法律に抵触すると無効になる。自治体には法文作成のプロがいないので、小学生の作文のような条例も多い。ぎょうせい等の法令出版物会社では、条例作成の請負業務を行っている。

 ・辞令交付:

 人事異動の命令書。規模が大きい省庁は局長名で、規模が小さい省庁では大臣名で交付される。

 ・審議会:

 役所で勝手に決めたと、批判されることがないように、外部の意見も聞いたという形をとるための機関。当然、役所に都合が悪いことをいうような人物は採用されず、役所に都合がいいことをいってくれるような御用学者や役所のOBが審議委員に選ばれる。まれに、ど素人の文化人が選ばれることがあるが、霞ヶ関でレクチャーをするので結局、役所の筋書き通りに審議会は進む。

 ・人事:

 毎年、全職員を対象に希望調査が行われるが、本人の希望は原則聞き入れられないことになっている。じゃあ、なぜ聞く?

 ・人事院:

 国家公務員の採用等を行なう役所。地味な人が多いが、同期にものすごくセクシーなミニスカートをはいている女性がいて、他の研修生も目のやり場に困っていた。

 ・新聞:

 どうせ霞ヶ関の悪口しか書かないので、読みたくないが、幹部が気にするので若手職員が切り抜いてコピーして、スクラップさせられている。

 ・政治家:

 国会質問で残業を増やしたり、業者とつるんで圧力をかける人のことをいう。有権者である国民には腰が低いが、役人のことは国民と思っていないので威張り散らす二重人格の人たち。

 ・政務官:

 副大臣の次に偉い。政治家がなるが、自分の役所でも顔を知られていない人が多く、廊下で職員とすれ違っても挨拶すらされず、キレる人もいる。名札をつけてくれ。

 ・政令:

 法律に基づき、細かい決まりを内閣が制定したもの。閣議にかけなければいけないので、省内法令審査官のOKの後に、内閣法制局で審査を受けなければいけない。政令のさらに細かい規則は、省令におとされる。

 ・セクショナリズム:

 縦割り行政のことをいう。霞ヶ関の原動力で、行政の非効率性の象徴とされている。打破するには、省庁ごとの採用をやめて、国家公務員を一括採用するしかないと言われているが、そうすると強大な官僚組織が出来上がり、それはそれで昔の軍部みたいに厄介なことになることが予想される。

 ・セクハラ:

 禁じられているわりに、意味がよく理解できない困った人が霞ヶ関では多いのである。官僚も政治家も偉い人は、それと分からずにしている。英雄色を好むと言うが英雄ではない小心な政治家や公務員も女好きが多い。また、セクハラをいまだにコミュニケーションと勘違いしている人が、霞ヶ関には中高年を中心にたくさんいる。

 ・扇風機:

 省エネ・ライフの霞ヶ関の必需品。熱風をまき散らすだけで、さらに熱くなりイライラするという効果がある。

 ・前例:

 霞ヶ関で一番、説得力がある材料のことをいう。過去の国会答弁や法制局説明資料が、前例として利用される。前例を持ち出されると、反論が難しくなるが、さらに古い資料を探してきて対抗したりする。

 ・総括:

 総括課長補佐のこと。8年くらいで昇進する。とにかく忙しい霞ヶ関の実働隊長。キャリアは総括になって初めて1人前として扱われる。

 ・総務課:

 局内の取りまとめをする課。省によっては、何々政策課という呼び名で呼ばれていることもある。

 ・総務省:

 地方自治から、通信事業、行政監察まで手広く営業している。郵政公社も持っている。ここも、本当に中央省庁改革の寄せ集め所帯なので職員の性格をひとくくりにして表現するのは困難である。

 ・総理大臣:

 霞ヶ関の大将。

 ・ソファー:

 寝袋と並ぶ霞ヶ関の必需品である。昼間は、お客様の座る椅子だが、夜は若手職員のベッドに早変わりする。

 ・族議員:

 圧力団体や業界の意向を受けて、政策を歪める与党の恐いおじさんのことをいう。役所をよく恫喝しにくるが、あまりやりすぎると汚職で逮捕されることになる。現在も某拘置所に恫喝おじさんが生活されているようである。官僚はみんな「ざまあみろ」と思っている。僕らは、恫喝おじさんの顔写真をダーツの的に加工していた。なお、族議員のスポンサーである業界団体は、役所に圧力をかけさせる見返りに多額の寄付や選挙のときに協力をすることになる。

 ・○大使夫人:

 自分が特権階級だと勘違いして、大使である夫の評判をさらに落とすバカ女のことをいう。化粧が濃い。部下の奥さんをいびるなど、バカ女の共通項は多い。

 ・大臣:

 就任してもすぐいなくなるので、霞ヶ関ではお客さんと一般的に思われている。お客さんなので、ちやほやされてはいる。たまに、T中真紀子外務大臣のような招かれざる客がきて、役所はパニックになる。一般社会と同じで協調性がない人は嫌がられる。

 ・タクシー:

 夜、利用可能な唯一の交通手段。省庁ごとにタクシーチケットを使える会社が違う。昔は、業界団体や特殊法人がタクシーチケットという真心をくれたが、いまは法律違反になる。その割に、いまだにタクシーチケットを持っている職員がいる。

 ・他山の石:

 他人の失敗を自分の教訓にすること。霞ヶ関では通用しないことわざの一つである。

 ・タコ部屋:

 法律案作成のために会議室を潰して、作られた部屋。タコ部屋要員に選ばれると、過酷な労働を強いられる。

 ・たばこ:

 好きな人は好き。嫌いな人は嫌いなのは民間企業と同じだが、民間ほど嫌煙権が意識されていないので、禁煙室で煙草を吸っている人もいる。特に、中高年に煙草好きが多いが、年功序列の霞ヶ関では年寄りほど偉いので逆らえない。

 ・地下鉄:

 朝の通勤には官僚も利用しているが、夜は終電で帰ることが出来ないので、朝しか走っていないと錯覚している人が多い交通手段のことをいう。

 ・知事:

 新手の天下り手段である。実は、日本の知事の過半数が官僚出身である。旧自治省では、副知事に出向してから、無党派で知事選に出馬するというやり方をとる。官僚が部長や副知事に出向して、中央とのパイプを武器に知事になる。しかし、この天下り型の知事作成方法は、やりすぎると戦前の内務省の復活につながるおそれがある。

 ・地方自治体:

 昔は、コネで入ることが出来たが、バブル崩壊以後は本当に優秀な若い人が自治体を受験しているので、若い人ほど優秀である。しかし、中高年幹部がバカなので志気は低い。この若い世代が、幹部になる時代が中央と対決できる本当の地方分権時代の到来になるであろう。

 ・地方研修:

 官僚を独立行政法人や地方自治体に出向させること。官僚が出向してくると、補助金や予算が付くので、人質として、とても大事にしてもらえる。また、叩き上げの職員よりも一回り以上若い役付きがキャリアの出向者である。

 ・超過勤務:

 残業のこと。公務員は労働基準法が適用されないので、何千時間働かしても問題にならない。国会待機等、政治家関係の残業が多く、何とか国会をリストラできないかとみんな考えている。

 ・陳情:

 業者や、市民団体が国会議員のコネを使って、直接役所に圧力をかけに来ること。与党の紹介は、特殊法人に納品をしたいなどの利権ばかり、野党の紹介の陳情は苦情か文句ばかり。どちらにしろ、政治家は秘書に役所あての電話を一本かけさせるだけで済むため気軽に支持者の陳情に応じるが、応対する役所は陳情団にけっこう気をつかう。こうしたを陳情こなした数の多さが、次の選挙の勝利につながるらしい。

 ・通常国会:

 1月から150日会期が続く。やっかいなことに延長国会というのもある。霞ヶ関の通常業務を止める一番の原因である。「早く国会が潰れないかなあ。」とみんな思っている。

 ・つけ届け:

 今、もらうとクビになる。実際、つけ届けや接待を禁止した公務員倫理法が施行されてから、接待やつけ届けは少なくなった。以前は、マンションを買ってもらった公務員もいたみたいである。ちなみに、その人は逮捕された。業界から、山のように洋酒が送られていた時代もあったらしい。最近は、会費制や「庭で取れた果物です」といってメロンなどを持ってきたり、落とし物といって酒を置いていくこともあるが、金額が高いつけ届けは自粛しているようである。

 ・帝国ホテル: 

日比谷公園の向かいの日本一豪華なホテル。霞ヶ関とは不思議と縁がない場所だが、地下にあるビストロのラ・ブラッセリーはお手ごろ価格で美味しい。

 ・定時退庁日:

 18時の終業時間に退庁することを決めた日のことをいう。週に2日あるが、誰も定時に帰れないので意味がない制度である。

 ・徹夜:

 霞ヶ関の日常行事。朝まで仕事をすること。

 ・出前:

 霞ヶ関は、夜になるほど忙しくなる。そこで、夕食を食べに行ったり買いに行く時間がないので、お弁当の出前をとる。各課には、出前用の分厚いリストがあり、7時前に若手職員が、他の課員の希望を聞いて注文する。食事は、官僚の数少ない楽しみなので不味いと注文をした若手が文句を言われることになる。そこで、メールなどで同期と美味しい弁当屋の情報交換をしたり、代々先輩から受け継がれた美味しい弁当屋のリストがあったりする。実際、店によって当たりはずれが大きいので、注文する若手にとってはギャンブルである。

 ・電話:

 喧嘩の道具。

 ・東京事務所:

 東京には、都道府県の出先機関がある。ここでは、各省庁の地元出身者のところに県の機関紙を配りながら、コネを作るのが仕事になっている。

 ・答弁:

 大臣等が国会で答えるためのカンニングペーパー、官僚には、事前に質問が分かっていて答えも用意されている。ご年配の大臣にわかりやすいように、とても大きな文字で印字してある。参考資料等もついていて、一回につき何十部もコピーするので資源の無駄使いになっている。また、答弁の印刷が汚いと、総務課に怒られる。

 ・特殊法人:

 特別な法律で設立された法人のことをいう。日本中央競馬会法等その法人名の法律があるのが特徴である。官僚の天下り先の機能を果していて、無駄な事業が多いと省庁でも分かっているが、廃止できないでいる。できた当時は、必要でそれなりに役に立っていたが、いまは政治家やマスコミのバッシングで悪者にされてしまった。霞ヶ関のお荷物だが、退職後はお世話になるので粗末にできない。

 ・独立行政法人:

 公務員定数削減の圧力の中、形だけでも公務員を削減したように国民等を錯覚させるために考え出された詐欺的手法機関。霞ヶ関の直轄から、研究所や大学、博物館等を切り離し、行政のスリム化を計ったと言い張るための新しい法人の形態をいう。省庁の予算と独立して独立採算で経営される。親会社(本省)から独立した子会社の様なものだが、人事権や株式は親会社に100%握られている。

 ・トマトジュース:

 貧血になると飲むもの。官僚は栄養が偏りがちなので、野菜ジュースやトマトジュース、牛乳がかかせないのである。みんな飲んでいる。

 ・内閣:

 総理大臣と閣僚で構成されている。大臣には、与党の当選回数順に任命されるので、その省の政策に精通しているとは限らない。

 ・内閣官房長官:

 総理大臣の女房役として、与党内の根回しから記者会見までこなす、内閣のマネージャー。

 ・内閣官房副長官:

 後藤田さん(元副総理、警察庁長官)がやってから、実質的な霞ヶ関の官僚のトップになった。旧内務省(警察、厚生労働省、総務省)の事務次官経験者がなる慣習がある。霞ヶ関の官僚のまとめ役で、事務次官会議を取り仕切る政府の影の実力者。

 ・内閣情報調査室:

 日本版CIAとマスコミや過激派等に過大評価されているが、実は警察庁の出先機関に過ぎない。情報収集もネットや新聞の切り抜きという地味な仕事ぶりだが、情報衛星も所有している。

 ・内閣総務官室:

 国会関係の事務を取り仕切る内閣の部署である。各省の総務課に「国会待機」の指示を出し、官僚が帰宅できないようにしている張本人。

 ・内閣総理大臣:

 通称「大将」。霞ヶ関の親分である。たまに、面倒見が悪い親分やアホが親分になると官僚がそのフォローに振り回されることになる。そう「神の国…」。

 ・内閣府:

 霞ヶ関の取りまとめを期待されているが、巨大な省庁の権益争いの最前線にされている。なお、経済財政白書の執筆も内閣府で行っている。

 ・内閣法制局:

 霞ヶ関で法律を作るときに、チェックしてもらうところである。各省庁の出向者の参事官(順課長)が、審査に当たる。しかし、参事官の当たりはずれが大きく、省庁によっては管理職にしたくない人を出向させるという信じられないことをやってくれる。審査を受ける側にとっては、まさにロシアン・ルーレットである。参事官によって、審査が罵声の飛び交う警察の取調室になったり、喫茶店での談笑になったりする。

 ・内閣法制局参事官:

 法律の鬼。たまに、地獄で仏に出会うこともある。

 ・○永田町:

 霞ヶ関の側にある国会議事堂や議員会館、自民党、民主党等の本部がある。日本の政治の中心で、狸を中心とした妖怪が多数出没している。

 ・二千円札:

 霞ヶ関の現物給料はすべてこれで支払われている。景気浮揚策として、発行したが世間にはとても不評だった。責任上、流通させるために霞ヶ関では使用されている。たぶん、発行元の日本銀行でも同じようなことをしているはずである。

 ・寝袋:

 床にひいて使う。一週間、寝袋で寝る職員も多く、朝、出勤してきたバイトさんが冷蔵庫前に転がっている職員を発見して悲鳴を上げることも多々ある。

 ・飲み会:

 最近は、おごってくれる業者や自治体がいないので、自腹で飲み会をするため安いお酒しか飲めない。また、役所によっては、省内でやることもある。

 ・ノン・キャリア:

 キャリア以外の職員をいう。

 ・バイトさん:

 美人で若い子が入ってくると、省内中から見学者が集まってくる。

 ・部下:

 上司からは、自由に使える便利な道具と思われている存在をいう。

 ・パーティー:

 与党政治家の資金集めをいう。霞ヶ関でも幹部には、たくさん招待状がくるので、若手職員が局長の代わりにパーティー会場に名刺を置きにいって豪華な食事にありつくことができる。

 ・葉山の研修所:

 海が近く、鎌倉が近い絶好のリゾート地にある。民間の研修施設をレンタルしているので、非常に豪華である。しかも、食事は、ビュッフェ方式である。(もちろん、自腹です。)レストランからの葉山の海に沈む夕日は絶景で、官僚になって良かったと心から思えるひとときである。ただし、この夢のような研修は2週間しかない。官僚人生でもっとも、平和な時期である。しかも屋上には、混浴のジャグジーがついている。

 ・葉山の海岸:

 天皇のご用邸が近くにある海水浴場。公務員研修の時期が夏だと、授業が終わってから車に相乗りして、みんなで泳ぎに行く。意外と水温が冷たいので、運動不足の官僚が溺れる。僕も溺れた。また、スッチー等も遊びに来ていて、一部、研修生が熱心にナンパしている。

 ・秘書官:

 役人から選ばれた大臣のお守り役をいう。大臣が最低だとストレスも増大する。エリートコースだが、大臣によって天国と地獄に大きく別れるのであまり、就任したがらない人が多い。なお、総理大臣秘書官は、財務省等から出向した超エリートである。

 ・ビタミン剤:

 霞ヶ関の職員は、ビタミン剤や鉄、カルシウム等みんな何か、常備して普段の栄養不足を補うために飲んでいる。

 ・日比谷公園:

 霞ヶ関の憩いの場である。桜の名所でもあるが、公務員が花見をしているという噂を聞かないのはマスコミの目が厳しいからか?。松本楼ともう一軒、美味しいレストランが厚生労働省側の入り口近くにある。

 ・ビール券:

 昔は山ほど役所にあったもの。いまでも、机の奥に隠されているもの。どこからか、涌き出てくるもの。

 ・部会:

 与党等が朝から行なう、朝食会形式の勉強会をいう。与党の弁当は豪華である。参加者の政治家は年寄りが多いので、朝に強い老人に会わせて早朝に行われる。夜が遅い官僚にはいい迷惑。政治家の勉強会なのに、必ず役人が呼ばれ、好き勝手なことを政治家から言われる。

 ・副大臣:

 お飾りである。政務官と同じく、職員が名前を知らないことが多い。国会答弁を大臣と分担して行ってくれる。

 ・兵隊:

 役なしのキャリア官僚のこと。人権が与えられていない。

 ・防衛庁:

 市ヶ谷にある。ガードマンが迷彩服を着て、ライフルを持って門番をしているのでとても恐い。官用車で、仕事にいくがやはり、ところどころにいる銃を持った警備の自衛官は恐いものである。

 ・法務省:

 法律の番人である。刑務所の運営や入国管理官等も管轄している。また、最高検察庁が外局にあり、検事が勤務している。霞ヶ関には、レンタル判事、レンタル検事制度があり、各省庁の法律相談用に出向していることもある。なお、法務省では事務次官よりも検事のトップである検事総長のランクの方が格上である。刑務所等を管轄しているため、教育職や心理職の技官が存在し、恐いイメージとは裏腹にとてもほのぼのとした職員が多い。

 ・法律:

 会議室をつぶしてタコ|部屋(プロジェクトチーム)を作って作成する。ほとんどが、役人が作った内閣提出法であり、議員が作成する議員立法はほとんどない。

 ・法令審査官:

 各省庁の法律案を審査するエキスパートをいう。同期入省者の中でも法律に精通した職員が、就任する。

 ・本会議:

 TV中継されるので、質問する側もだんぜんはりきる。議員が全員出席してやるお祭り。与野党とわず、選挙の宣伝の場と考えているので過剰な演出が目立つ。

 ・麻雀:

 中高年の公務員には人気がある。マスコミで某事件を批判されてから、自粛する役所が増えた。

 ・マスコミ:

 霞ヶ関のあら捜しをするところをいう。けなすだけけなして、誉めてくれない。悪口だけを言って、お金が稼げる因果な商売である。

 ・文部科学省:

 スポーツ振興くじの胴元。

 ・メール:

 幹部は使えない人がいるので、若手職員が印刷してペーパーで渡す。若手の連絡手段としては活用されている。

 ・毛布:

 徹夜したときに、くるまって眠る防寒具。タコ部屋には常に常備されている。夏は、寝袋の枕になる。

 ・ヤクルトのおばちゃん:

 省内を台車で回って、ヤクルトやタフマンの販売をしているおばちゃん。毎日、決まった時間に出没し、ツケでヤクルトが買える。

 ・野菜ジュース:

 偏食がちな官僚の食生活を補う必需品をいう。

 ・ヤジ:

 国会議員の品位のなさの証明。誰が言ったか分からないので、暴言が続出する。中身は幼稚園児の口喧嘩以下。ウイット全くなし。バカの証明みたいなもの。本会議では、演説者に、委員会では官僚に浴びせかける、是非、選挙民に見学させたいものである。

 ・野党:

 与党の足を引っ張るために霞ヶ関の足を引っ張る人たちの集団をいう。霞ヶ関では煙たい存在。

 ・野党議員:

 きれいごとばかりいって、霞ヶ関を困らせる人達をいう。

 ・野党の勉強会:

 段取りが悪いので、役人が呼ばれると代わりに受け付けをするはめになることもある。特にM党は官僚の評判が悪いので改善をした方がいいと思う。ただし、与党の部会でも受付は当然のようにやらされるので、与党の方がたちが悪い。

 ・夜食:

 出前やお弁当が中心である。数少ない役人の楽しみで、運動不足と過食で太る人も多い。

 ・予算案:

 財務省が作っている。霞ヶ関の経費は全部予算でまかなっている。国の収入は税金と借金である国債である。国会の議決が必要。夏の暑い盛りに財務省と各省庁が喧嘩してきめる。たらなくなると、補正予算を作って国債の借金を増やす泥沼地獄。

 ・予算委員会:

 テレビ放映されるので、大臣の汚職やスキャンダルなど、予算以外のことで盛り上がる。

 ・与党:

 霞ヶ関に地元などの圧力をかけて、さらに政策を歪める機能をはたす困った人たちを言う。霞ヶ関では野党同様に好かれていない。

 ・与党議員:

 支持団体の利益のために、命懸けで霞ヶ関に圧力をかける人たちをいう。

 ・夜回り:

 深夜にガードマンが省内を警備に回ること。いちいち、人数を確認されるので若手がガードマンに教えてあげることになる。また、代々木の公務員研修等では一般の利用客に迷惑なため、深夜に飲み会をやっている不届きな研修生を人事院が摘発に回るという意味にも使われている。余談だが、悪酔いしたバカの研修生が人事院の夜回り担当者に絡んだり、罵声を浴びせるため、同じ班の研修生が取り押さえることになる。

 ・代々木のオリンピックセンター:

 公務員の初任行政研修が行われる。開会式には総理大臣も出席する。1週間続くが、朝まで研修生の酒盛りが続き、授業中は爆睡している。しかし、寝ていると主催者の人事院や総務省にたたき起こされる。

 ・労働基準法:

 公務員には適用されていないので、何百時間残業させても問題にならない。

 ・若手:

 若い職員の事。どこまでを若手というか微妙だが、キャリア官僚は総括補佐になって初めて戦力と見なされるので、入省8年目までが若手といえる。しかし、大きな意味では課長補佐も若手として扱われているようである。

 ・ワープロソフト:

 オアシスや花子、一太郎が霞ヶ関ではいまだに健在である。ワードになれた新入職員は、とまどうことになる。しかし、各省庁ごとにソフトが違い互換性がないので、他省庁との書類のやりとりはとても不便である。また、一太郎になれるとワードが使えなくなるという弊害がある。

日本ペンクラブ 電子文藝館編輯室
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林 雄介

ハヤシ ユウスケ
はやし ゆうすけ エッセイスト 1976年 岐阜県に生まれる。

掲載作は2003(平成15)年、日本文芸社刊『霞ヶ関の掟・官僚の舞台裏』所収。見出しの読み順は原稿のママである。

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