雲のやうに
果樹園を昆虫が緑色に貫き
葉裏をはひ
たえず繁殖してゐる。
鼻孔から吐きだす粘液、
それは青い霧がふつてゐるやうに思はれる。
時々、彼らは
音もなく
婦人らはいつもただれた目付で
未熟な実を拾つてゆく。
空には無数の瘡痕がついてゐる。
肘のやうにぶらさがつて。
そして私は見る、
果樹園がまん中から裂けてしまふのを。
そこから雲のやうにもえてゐる地肌が現はれる。
日本ペンクラブ 電子文藝館編輯室
This page was created on 2002/08/03