海潮音(抄)
薄暮の曲 シャルル・ボドレエル
時こそ今は
花は
匂も音も夕空に、とうとうたらり、とうたらり、
ワルツの舞の哀れさよ、疲れ
花は薫じて追風に、不断の
ワルツの舞の哀れさよ、疲れ倦みたる
何の苦もなくて、
羊毛のほかに、その
惜まずして、
また魚とならば、
驢馬ともなりては、主を乗せまつりし昔思ひ、
はた、わが肉より
げに末つ世の反抗表裏の日にありては
人間よりも、畜生の身ぞ信深くて
心
秋の日の
ヸオロンの
ためいきの
身にしみて
ひたぶるに
うら悲し。
鐘のおとに
胸ふたぎ
色かへて
涙ぐむ
過ぎし日の
おもひでや。
げにわれは
うらぶれて
こゝかしこ
さだめなく
とび散らふ
落葉(おちば)かな。
静かなるわが
天人の
憧るゝわが胸は、苔古りし
その空は
いざよひの
ながながし
日本ペンクラブ 電子文藝館編輯室
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