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みんな黄門

 元来、私は寄席が嫌いだ。

 浮世学問の場などとありがたがる手合(てあい)もいるが、とんでもない。

 世の中に落し(ばなし)ほどくだらぬものがあろうか。

 口先だけでぺらぺらと調子のいい絵空事を語るのが稼業とは申せ、咄家(はなしか)の出まかせには際限がない。

 子の名前が長すぎて呼んでいるだけで日が暮れただの、蕎麦食(そばく)いが腹ごなしの薬草を()めたとたん蕎麦に変異して羽織だけ残っただの、床屋が神仏に祈願すると客の(ひげ)()っても剃ってもぞろぞろと生えてくるだの、菓子の饅頭(まんじゅう)を死ぬほど恐れる男が悪友たちから投げ込まれた饅頭をむしゃむしゃと食い尽くして茶を所望するだの、行き倒れの死骸(しがい)を死んだ本人が検分に行っただの、胴斬りに()った人間が死にもせず上半身が湯屋の番台へ、下半身が()を踏む職人として奉公に出ただの、荒唐無稽(こうとうむけい)と片づけるにはあまりにも馬鹿馬鹿しい。

 中でも人の頭のてっぺんに桜の木が生えて、それを引っこ抜くと池ができ、世をはかなんでその池に飛び込んで死んでしまったなどと聞かされるに及んでは、もはや開いた口がふさがらぬ。頭の上に池ができることさえ信じがたいのに、その自分の頭の池にどうやったら本人が飛び込めるのだ。

 いや、よしんば飛び込めたとしても、たかが頭の上の池である。そんな小さな水溜まりで人ひとり溺死できるものかどうか、考えるまでもない。

 ところが、それをまた、大の男どもが女子供に立ち交じり、大口を開けて笑っているのだから、呆れて物も言えぬ。

 それゆえ、私は寄席には滅多に足を運ばず、落し咄の(たぐい)もほとんど知らないのだ。

 そこへいくと、講釈は『太平記(たいへいき)楠正成(くすのきまさしげ)千早籠城(ちはやろうじょう)』にせよ、『水滸伝(すいこでん)武松(ぶしょう)の虎狩り』にせよ、『赤穂義士(あこうぎし)銘々伝(めいめいでん)堀部(ほりべ)安兵衛(やすべえ)高田馬場(たかだのばば)の仇討ち』にせよ、正史に基づいているので安心して聴いていられる。

 軽薄な色物の寄席と違い、釈場(しゃくば)には子女を寄せつけぬ毅然とした風格があり、席に婦人がいないのをいいことに、肌脱ぎで寝そべって聴いている不埒(ふらち)な職人もおらぬではないが、その内容は実録に人倫の道、忠義、孝行、義理、人情を織り込んで説いたもので、有益ならざる話はひとつとしてない。

 しかるに近年、やれ壮士芝居だ、オッペケペーだ、娘義太夫(むすめぎだゆう)だと、派手で騒々しい興行がもてはやされ、謹厳実直を尊しとする講釈にもその悪影響が及んだものか、無用な滑稽を取り入れ、張り扇を大袈裟(おおげさ)に振り回し、金切り声を張り上げ、釈台(しゃくだい)を壊れんばかりに叩くのは嘆かわしい限りである。

 出し物も旧態の軍談や武芸伝ばかり読んでいては飽きられるとでも思うのだろう。

 新作が増え、『東洋民権百家伝』や『英国孝子伝』ならばまだしも、『朝顔日記』であるとか、『壺坂(つぼさか)霊験記(れいげんき)』であるとか、軟弱な色恋を絡めた子供騙しの嘘八百が目立つようになった。

 先日聴いた『水戸黄門漫遊記(みとこうもんまんゆうき)』なども、まさに愚の骨頂。

 徳川御三家のひとつ、三位中納言水戸光圀(みつくに)公が、隠居の身とはいえ、農夫か小商人に身をやつし、弥次喜多道中じゃあるまいし、諸国を経巡(へめぐ)り、その土地土地の悪人どもを三葉葵(みつばあおい)の威光で退治してまわるという呆れ返った話であった。

 正しく正義が行われ、罰せられるのが極悪人に相違ないならまだいい。

 物語の中の水戸中納言は愚かにも民百姓の言い分のみを一方的に取り上げ、徳川副将軍の権力を振りかざし、他藩の奉行や代官、名主や大商人をただ一度の審問も経ずして配下の助平だか格助だかに無残にも斬り捨てさせてしまうのだ。

 こんな筋違いの無法が許されていいものか。

 貧者が常に真正直であるとは限るまい。

 直訴に及んだ田夫(でんぷ)野人(やじん)が実は卑劣な悪漢で、逆恨みの相手を冤罪に陥れんがため悪知恵を働かせ、水戸光圀公に嘘八百を吹き込み(あお)っているとしたら、それがために公明正大な役人が一言の釈明もできずに失脚し腹を切らされたり、汚名を着せられた主人を守ろうとして忠臣たちがばたばたと黄門の配下に斬り殺されたりしたら、しかも、老公自身、善行を施した気になって満足しているとしたら、これは恐ろしい話ではないか。

 頭のてっぺんの池に飛び込んで溺死する類の戯言(ざれごと)ならば、あまりの馬鹿馬鹿しさに笑ってもすまされよう。

 が、水戸中納言の(ゆが)んだ世直しは作り話ではあっても、講釈師が読むだけに本当らしく聞こえるから始末が悪い。

「いいぞっ、畳んじまえっ」

 諸肌脱ぎで寝そべっていた職人も、水戸の隠居が他藩の内政に横槍を入れ重臣を成敗するくだりでは、座り直して喝采(かっさい)を送っている。

 これでいいのか。

 こんなでたらめがもて(はや)されては、正義と非道の区別がなくなり、この世は誠のない闇夜となろう。

 

「ははあ、あなたも黄門漫遊記をお聴きになりましたか。

 世の中変わりました。御一新前には御三家のお噂など畏れ多くて、とても高座にかけられなかったものでございます。近頃では、講釈師扇で嘘を叩き出し、あるいは、講釈師見てきたような嘘を言い、などと申しますから、もっともらしく読まれておりましても、とても()に受けられませんがね」

 久しぶりに訪ねた蛤町(はまぐりちょう)で、私が聴いてきたばかりの『水戸黄門漫遊記』の話をすると、弥八(やはち)老人は屈託なく笑った。

「昔は太平記と曾我物でたいていの客は満足したものですが、ただ今の講釈師は大変です。士族だの先生だのと威張ってはいても、そこは芸人ですから、退屈な軍談ばかりではそっぽを向かれ席が(うるお)いません。そこで手を替え品を替え、いろいろと工夫するのでしょう。

 ま、講釈は楽しんで聴くもの。多少の嘘に目くじらを立てても仕方のない話です」

 咄家や講釈師が虚偽の伝導者であるならば、さしずめ弥八老人は真実の守護者というべきか。

 旧幕時代には神田三島町(かんだみしまちょう)で町方の手先を務め、鉄砲の弥八と異名を取った老人のこと、往時は眼光鋭く、悪人を罠にはめるために、つきたくもない嘘を方便で口にしたこともあったやも知れぬ。

 が、今、私の目の前に丸く坐っているのは愚直なまでに誠実な白髪の好々爺(こうこうや)である。

 実際、弥八老人の正直ぶりは有名で、深川界隈(かいわい)で親が子供の虚言癖を叱るのに「弥八爺さんを見習わないと死んで閻魔(えんま)様に舌を抜かれるよ」と言うのが決まり文句となっているとか。

「確かに御老人のおっしゃる通りですが、私は水戸黄門の世直しだけは、どうも気に入りません」

「講釈は実説三分、よた七分と申します。三分どころか、わずか一分でも煙あれば火ありのたとえ。水戸の御老公様がお百姓に姿を変えて(ちまた)徘徊(はいかい)なすったというのも、あながち嘘ばかりではないのです」

「それじゃ、水戸黄門の漫遊記は実際にあった話なのですか」

「諸国漫遊とまではまいりませんが、姿形を変えて江戸の御府内を歩きまわられたのは本当のことでしょう」

「えっ、水戸黄門が江戸市中を」

「はい。実際にお百姓姿の御老公をこの目で見たのでなければ、わたくしにしても、とてものことには信じられない話ですが」

 老人はまるで見てきたように言う。水戸中納言光圀公といえば、江戸を開府した東照大権現徳川家康公の孫にあたる人だ。弥八老人がいくら長生きだとはいえ、そんな二百年以上も大昔の水戸黄門を目にするわけがない。いったいどういうことなのか。

「いえいえ、わたくしの申します水戸黄門様は当今の講釈に登場する光圀公のことではございません。講釈師は張り扇で嘘を紡ぎ出しますが、どこが嘘でどこが本当かを見極めることが大切です。

 水戸光圀公だけが黄門様ではなく、黄門というのは中納言様の別称ですから、代々の水戸様はすべて中納言で黄門様です。同じ御三家でも尾張様や紀州様は二位大納言様なので黄門とは申しませんが」

「すると、江戸市中を歩きまわった黄門とは」

「十五代公方(くぼう)様の実のお父上、水戸中納言斉昭(なりあき)公です」

「ははあ、水戸の烈公と呼ばれた人ですね」

「烈公は亡くなってからの御称号で、御生前は水戸の御隠居様で通っていました。当時、江戸の下々には光圀公の御偉業はさほど伝わっておりませんから、水戸の御老公といえば斉昭公をおいて他にはありません。御三家とは申せ気さくな方で、わたくしどものような者にも快く接してくださいましたよ」

「では、水戸の烈公を御存じなのですか」

「畏れ多いことながら、わたくし、縁あって、水戸様の一件に掛かり合ったことがございます。わたくしが掛かり合ったといえば、相変わらずの捕物ですが、今日はひとつ、その話をいたしましょうか」

 天保の初年から幕府が瓦解するまでの四十年近く、悪事の探索や罪人の捕縛に明け暮れてきた老人のことであるから、その昔話はおのずと捕物に関するものとなる。

 老人は淡々と語るだけで、面白おかしく話を()じ曲げたり、尾鰭(おひれ)をつけることもない。

 老齢ではあるが、記憶もはっきりしていて、下手な落し咄や講釈よりも、よほど信頼に足るものである。

 私はそっと心覚えの手帳を取り出した。

 

 安政五年戊午(つちのえうま)の年は七月から九月頃まで、疫病のコロリが大流行いたしました。

 ただ今でもコロリといえば恐ろしい病気ですが、昔はろくな薬もなく、医者も打つ手がございませんで、死んだ人の数は二万とも三万ともいわれております。裏長屋の住人から名のある人まで随分亡くなりましたよ。

 五十三次で聞こえた絵師の歌川(うたがわ)広重(ひろしげ)戯作者(げさくしゃ)京伝(きょうでん)の弟の山東京山、長唄の三味線方杵屋(きねや)六左衛門(ろくざえもん)も、この年のコロリに殺されたと申します。

 コロリで死ぬのは何も善人ばかりとは限らず、悪名高い盗賊の隠れ家を探り当て、いよいよ御用という時に、一味徒党あっさりとコロリで死なれてしまい、手柄をふいにしたこともございました。

 その午年の大コロリの蔓延(まんえん)する八月の半ばのこと。

「弥八つぁん、いるかい」

 三島町のわたくしの家を訪ねて来ましたのが、浅草十番組頭取(とうどり)新門(しんもん)辰五郎(たつごろう)という火消しの(かしら)です。以前、辰五郎が盗まれた大事な書付を、わたくしが見つけ出した縁で懇意にしております。

「これは、を組の頭、おいでなさい」

「ちょいと近くに用があったんで寄ってみたんだ。町じゃコロリが大流行(おおはや)りだが、おまえさんも無事で何よりだ」

 あいにく女房が留守で、わたくしの入れた渋茶をすすりながら、しばらく世間話をしておりました。

「ときに、捕物のほうは忙しいのかい」

「貧乏暇なしといいますか、コロリの騒ぎに乗じて、上方から仕事師が流れ込んだとの噂もあります。目を光らせちゃいるんですが」

 毎日数え切れないほど人が死に、早桶(はやおけ)が間に合わないとか、焼場の順番がなかなか来ないとか、気の滅入るような江戸の町、まともな人間ならばさっさと逃げ出したいと思うのが人情です。

 そこへ好き好んで乗り込んで来る奴がいる。どさくさ紛れに大金をかっさらおうという悪党どもです。

 その中でも京を根城にしている御影堂(みえいどう)藤兵衛(とうべえ)、二つ名を冥土(めいど)の藤兵衛と呼ばれる盗人。

 大きな家の葬礼に紛れ込み、香典はもとより金目のものを誰にも気づかれずにごっそりと盗み出す鮮やかな手口が京大坂で知れ渡り、手配書が回って上方に居辛くなっていたところ、毎日途切れなく葬いの続く江戸の町に目をつけ、これ幸いと潜り込んで来たらしい。

 いえ、午年のコロリは何も江戸だけで流行ったわけではなく、京や大坂でも多少の人は死んだでしょうが、やはり、自慢じゃないが公方様のお膝元、天下の江戸とは死人の数だって比べ物にはなりますまい。

 盗人の仁義に盗みはすれども非道はせずとあるそうですが、わたくしから見れば、盗人なんていう(やから)はみんな非義非道。

 まして死肉をあさるがごとき薄汚い香典泥棒をのさばらせては、江戸の御用聞の名折れです。

「そうかい。忙しいなら、また出直そうかな」

 見れば、辰五郎の顔がむくんで青黒くなっております。

「頭、大丈夫ですか。何か悪いもんでも上がったんじゃ」

 ひょっとして、コロリだったらどうしよう。

「いや、この三日、ほとんど夜が眠れねえんだ」

「頭は贅沢(ぜいたく)だからな。あんまりいい茶は飲み過ぎないほうが……」

「いや、茶の飲み過ぎで眠れねえわけじゃねえ。実は心配事があってな」

「ほう、どんなことです」

「忙しい時にこんな話を持ち込むのは気の毒だが、弥八つぁん、おまえさんを男と見込んで引き受けてもらいてえことがあるんだ」

「いやですよ、改まって。あたしにできることなら、何なりとお引き受けしますが」

「そうかい。じゃ、思い切って打ち明けるが。実はな、おまえさん、口は固いほうだよな」

「いやだな、頭、固いほうかとは。これでもお上の十手(じって)を預かる御用聞の端くれ、無駄口は嫌いな(たち)だ」

「こいつはすまねえ。信用しねえわけじゃねえんだ。だが、事が事だけに」

「いいから、おっしゃってくださいな」

「うん、実はな。ほんとに他言無用だぜ」

「わかってますって。で、どんなことです」

「それじゃ、おまえさんを信じて打ち明けるが。今、この家にひとりだけか……」

「ええ、ご覧の通り」

「おかみさんは」

「ちょいと用足しに出ております」

「そろそろ日が落ちるが、帰って来るんじゃねえか」

「さあ、芝まで使いに行ったんですがね。女の長っ尻、夕暮れまでには戻ると言いながら、いつも暗くなっちまう。だから提灯(ちょうちん)を持ってけと言ったんだ」

「ほんとに戻っちゃ来ねえな」

「ええ、多分……」

「いっそ、ずっと戻って来なけりゃいいんだが……」

「冗談言っちゃいけない」

「だがな、弥八つぁん、これから話すことは、たとえ夫婦の間でも、漏らされちゃ困るんだ」

「わかりました。女房にも決して言いません。で、いったいどうしなすった」

「実はな。あれっ、今、あっちでごそごそ音がしたが、誰かいるのかい」

「ああ、ただの猫です」

「あんちくしょう、盗み聞きしてやがんな」

「猫が盗み聞きなんぞするもんですか」

「いいや、(こう)を経た猫は()けるから、油断ならねえ」

「いいから、早く言ってください」

 辰五郎は大きくはあっと溜め息をつきました。

「それじゃ、言うが、実は弥八つぁん。おまえに人ひとり捜してもらいてえんだ」

「へ、人捜しですか」

「それもただのお人じゃねえ」

「いったいどなたで」

「水戸の御隠居だ」

「と、おっしゃいますと、こんにゃく屋かなんかの」

「そうじゃねえ。水戸の御隠居といえば(さき)の副将軍、水戸の御老公様だ」

「ええっ」

「そう目を白黒しなさんな。

 俺はほとほと参っちまった。

 三日前、駒込(こまごめ)のお中屋敷からお姿を消されて、行方知れずだ。

 御政道のことはよくわからねえが、井伊(いい)掃部頭(かもんのかみ)様が御大老になんなすってからというもの、御隠居と()りが合わなくてな。この七月に御大老と揉めたらしく、御当主の中納言様や一橋(ひとつばし)様ともども御謹慎ということになってたんだ。

 御謹慎中はお屋敷の外へは一歩たりと出ちゃならねえ決まりで、何か落ち度があれば(とが)めてやろうと、掃部頭様の手先が手ぐすね引いてらあ。御隠居がお屋敷を()け出したことが知れちゃ大事になる。

 大きな声じゃ言えねえが、駒込のお中屋敷というのがこの前の大地震で傾いて荒れ放題、そんな中でじっとしているのは確かに気が滅入るだろうが、だからといってコロリの流行ってる町中で御病死なすっても大変だ。

 一橋様から内々に言いつかり、俺は今、江戸中に子分たちを走らせちゃいるが、何分素人のことで、埒が明かねえんだ。そこで思い出したのが、弥八つぁん、おまえのことだよ。何年前になるか、大事な書付をおまえが見つけ出してくれたあの一件、実に鮮やかなもんだった。

 どうだろう、弥八つぁん、おまえさんを江戸一番の捕物の名人と見込んで頼むんだ。水戸の御隠居を見つけ出しちゃもらえめえか」

「驚いたね、どうも。水戸の御老公様が行方知れず」

 辰五郎は声を落としました。

「下手すると、水戸様が危ねえんだ。今、御三家の水戸様がお取り潰しなんてことになってみろ。一橋様だってただじゃすむめえ。この江戸はおしまいだぜ。いや、江戸はおろか、日本国そのものが目茶苦茶になっちまう」

「日本国とは大袈裟(おおげさ)だなあ」

「いや、ちっとも大袈裟じゃねえよ。コロリ騒ぎでごたごたしているところへ、黒船の異人どもがどっと押し寄せて来らあ。そうならねえためにも、どうか、ひと肌脱いじゃくれめえか」

 新門の辰五郎は一橋様に出入りしており、辰五郎の娘御のお(よし)様が将軍家御愛妾(あいしょう)となりますのは、後の話でございます。

 水戸の御老公は一橋様の実のお父上。水戸様の御家中も躍起になっていることでしょうが、一橋様だって気が気じゃない。

 そこで辰五郎に相談した。辰五郎は町火消しの子分たちを江戸中に走らせてはみたものの、思うようには見つからない。水戸の御家来衆や町火消しがあんまり派手に動いて御公儀に目をつけられても剣呑(けんのん)だ。そこで商売柄、人捜しに慣れているわたくしにお鉢が回って来たものでしょう。

「そういうわけなら、たいして力にはなれませんが、何とかお手伝いさせていただきましょう」

「そうかい。引き受けてくれるかい。おまえさんがそう言ってくれるなら、俺もひと安心だ」

 辰五郎は目を潤ませております。

「で、頭、御老公にはお供はついてたんですか」

「御隠居とはいえ、御身分のあるお方。おひとりで放っておくわけはねえんだが、迂闊(うかつ)なことに、ちょっと目を離した(すき)にたったおひとりで見えなくなったそうだ。お側付のお侍は今、腹を切るとか切らないとか、大変らしい」

「御老公がお屋敷を出なすった時の身なりは」

「さあ、御謹慎中は麻の(かみしも)が決まりだが、御隠居の道楽てえのが、変わってる」

「なんです」

「うん。それがお庭での畑仕事なんだ」

「畑仕事」

「高貴なお方のなさることはわからねえな。庭を耕して芋や大根を作るのが何よりの楽しみなんだと。

 で、最後に御隠居を見た御家来の話じゃ、汚い野良着(のらぎ)をお召しだったとか。前の中納言様だからって錦の野良着に緋の股引(ももひき)てわけはねえや。ぼろぼろの筒袖に継ぎの当たった股引、草鞋(わらじ)ばきで(くわ)を担いでいなすったというんだが、まさか、そんな格好で出歩かれてるとも思えねえが、かといってお召し替えの跡もねえし」

「あたしは御老公のお顔を知りません。何か人目を引くようなところはあるんですか」

「俺だって、お庭の隅に()いつくばって一度拝ませていただいただけだからなあ。お歳は俺と似たり寄ったりで、まあ本卦(ほんけ)(がえ)り、六十の前後だろう。福々しくて品のあるお優しいお顔でも、さすがは天下の器量人、目ばかりは鋭い光を発しておられ、射すくめられるようだった」

 野良着姿で福々しい顔の目の鋭い老人。

 それだけを手がかりに広い江戸を捜すとなると、これは雲をつかむような話です。

「そうだ。ひとつ忘れていた。御老公はお(ひげ)を生やしておられる」

「お髭を」

「うん、歯痛のまじないかなんぞらしいが、白い天神髭が長く伸びていたよ」

 今でこそ髭面の官員さんは珍しくありませんが、あの当時、髭なぞ生やしているお侍は滅多にありません。

「そいつはいい。白い天神髭なら立派な目印になります。できるだけのことはやってみましょう」

「くれぐれも頼んだぜ。他言無用でよろしくな」

 安請合(やすうけあ)いはしたものの、わたくしひとりじゃ手に負えません。

 その日はもう遅いので、翌朝、さっそく手下(てした)仙太(せんた)に声をかけました。近所の豆腐屋のせがれで親の稼業を手伝いながら捕物の忙しい時だけ手下を務めているのですが、なかなか目端の利く男で役に立ちます。

「おい、仙太、おめえ、口は固い方だろうな」

「いやですよ、親分。固いのなんの、片口鰯(かたくちいわし)の仙太てえくらい」

「まあいい。実は内々に人ひとり捜すことになった。それも大急ぎで見つけなきゃ、大変なことになるんだ」

「そいつはいけませんねえ。豆腐なんぞ搾ってる場合じゃねえな。で、()せやがったのはどこの野郎です。あたしが見つけ次第ふん縛ってやりますから」

「手荒な真似はいけねえ。捜し出すのは罪人じゃねえんだ。野良着姿の爺さんで、年の頃なら六十前後、目印は白い天神髭だ」

「ははあ。()き馬の目を抜く江戸へふらふら飛び出て来やがって、目ェ回して迷子になった田子作(たごさく)の爺ィですかい。任しといてください。すぐに見つけ出しますから」

「それがそうじゃねえんだ。見た目は田舎(いなか)親爺(おやじ)だが、この爺さん、実を言うと大変なお方だ」

「誰です」

「おめえ、決して誰にも言わねえな」

「ですから、あたしは片口鰯の」

「わかった。じゃ、おめえにだけ話すが、聞いて驚くな。これが水戸の御隠居だ」

「と言うと、納豆屋か何かの」

「馬鹿野郎。水戸の御隠居といえば、天下の副将軍、水府様(すいふさま)の御老公だ」

「へええー。だけど親分、そんな偉いお方がなんでまた、野良着姿なんぞで江戸をほっつき歩いていなさるんで」

「詳しいことは俺にもわからねえが、水戸様の御家来も血眼(ちまなこ)だろうし、を組の頭も若いもんを動かしていなさるが、何分にも連中は素人だ」

「そりゃそうだ。無闇に動き回ったってしょうがねえ。人捜しにだってコツがありますからねえ。そこで親分とあたしが御老公の行方を探るというわけで」

「そういうことだ。善は急げということもある。朝から商売の邪魔をして悪いが、さっそく働いてくんな」

「なあに、豆腐ならとうにでき上がってます。これからひとっ走り、年寄りのうろつきそうな場所を当たりましょう」

「当てはあんのか」

「そうですね。並の年寄りが行くといえば、寄席、髪結床、湯屋、銭のかからねえ場所で寺参りといったところだが、天下の副将軍がそんなところへ出入りするとも思えねえし、水戸の御家来衆や火消し連中が捜して見つからないとなりゃ、おおかた人込みに紛れてるんでしょうね」

「俺もそう思う。御隠居がどんなわけでお屋敷を脱け出されたのかはわからねえが、身分のあるお方は普段気の張る暮らしをなすっているから、かえって下々の気楽な風に当たられたいんだろうよ。お供も連れず、汚い野良着姿のまま外へ出られたのも、御身分をお隠しになるための方便だ」

「となると、まだ六十前後なら、そうは枯れてもいめえ。お忍びの隠れ遊び、御老公の行き先はひょっとして吉原でしょうか」

「野暮な野良着のまんまじゃ大門どころか、芝居の木戸もくぐれめえ」

「かといって、日本橋あたりじゃ、汚い田舎親爺はかえって目立ちますしねえ」

「田舎親爺が目立たない場所といえば、上野か湯島が水戸様に近いが、いつまでもその辺にうろついてもいねえや。浅草の盛り場は、を組の火消し連中が(くま)なく捜したはずだが、何分にも見落としはあるだろうよ。俺は浅草をひとまわりするから、おめえは両国へ行ってくれ」

「わかりました。白い天神髭が手がかりですね」

さっそく手分けいたしまして、両国を目指す仙太と分かれ、わたくしは浅草方面へと足を向けました。

 

 中秋の半ばが過ぎたとはいえ、まだまだ八月、暑うございます。

 神田川沿いに(あたら)シ橋のあたりまでやってまいりますと、橋の脇に何やら人の群がる様子。

「なんです。こう大勢立って、何かあったんですか、こん中」

「行き倒れだそうですよ」

「若い女か何か」

「いいえ、年寄りのおこもだそうで」

「なんだ、おこもか」

「ひょっとすると、コロリじゃねえか」

「コロリだとよ」

「ひいぃ、くわばら、くわばら」

 誰かが口にしたコロリという言葉、それを聞いただけでサッと遠巻きの輪が散ってしまい、あとにぼろぎれのような汚い年寄りがひとり倒れております。コロリの死骸なんぞにかかわり合っちゃかないませんから、わたくしも急いで立ち去ろうとしましたが、そのとき、ううっと(うめ)き声が聞こえました。

「なんだ、まだ息があるのか」

 商売柄、見過ごすわけにもいかず、近づいてみると、葛飾あたりから江戸へ野菜でも売りに来たようなお百姓。泥まみれの野良着、顔は汚れて白っぽい髭が伸び放題です。

 ああ、世の中はさまざまだなあ。

 何不自由ない大名暮らしに嫌けがさして、野良着姿でふらっと屋敷をおん出ちまうお方もあれば、一方で、この暑い最中、足を棒にして在所から担いで来た野菜を売り歩き、ようやくその日の食い扶持(ぶち)を稼ぐ年寄りもいる。

 こんなところで患いついて、誰にも看取(みと)られずにお陀仏するのか。

 そう思うとつい、哀れを催し、声をかけてやりました。

「おい、(じい)さん、どうした。苦しいのかい」

「苦しゅうない」

「どう見たって苦しそうだが」

「いや、苦しゅうはない」

 待てよ。殿様や何かが下々の者に目通りを許される時、「苦しゅうない、良きにはからえ」とかおっしゃると聞いたことがある。すると、この爺さん、言葉つきからしてただの在郷太郎じゃねえな。それにしても立派な白い髭じゃないか。

 なにっ、白い髭。そこでわたくし、はっといたしました。

 この川っぷちに倒れているお方こそ、誰あろう、前の副将軍、水戸の御老公ではなかろうか。一見葛飾あたりの百姓親爺ですが、どことなく風格があり、目も異様にぎらぎらと光っております。

 年齢はまさしく六十前後、白い天神髭が確かな証拠。が、人目もあること、わたくし、素知らぬ顔をして御老人を助け起こしました。

「しっかりしなせえ」

「いいや、たいしたことはないのじゃ。暑さ負けかのう。退屈紛れに今朝(はよ)うから、ぶらぶらしてたんじゃが、そこまで来ると、ふらふらっと目が(くら)んでのう」

「そいつはいけねえな」

「腰を下ろそうとしたら、足をすべらせ、こんな無様(ぶざま)なことになってしもうたのじゃ」

「立てるかい」

「どこのどなたか存ぜぬが、こんな田舎親爺にえらい親切なお方じゃなあ」

 言葉に変な(なまり)があるのは、高貴なお大名訛でしょう。

「立てるんなら、あたしの肩につかまんなさい。家はすぐそこだ。万金丹(まんきんたん)ぐれえあるから、しばらく横になるといいや」

「いやいや、わしのことなら大事ない」

「いいってことよ」

 御老公を無理やり立たせ、抱き抱えるようにして家へ帰って来ました。

「おうっ、御病人だ。床を延べろいっ」

「なんだよ、おまえさん、いきなり」

 女房のお(とみ)は口をとがらせます。

「つべこべ言わずにさっさと布団を敷かねえか」

「冗談じゃないよ。困るじゃないか。まあ、いやだねえ。変なお爺さんなんか連れて来て」

 御老公は確かに汚い。が、顔などしかめたら後でどんなお咎めがあるかしれません。

「おめえもわからねえ女だな。俺が床を延べろって言ってるんだ。いいから黙って布団を敷きな」

「何か揉め事のようじゃが、わしはこの辺でおいとまを」

「いえいえ、いけませんや、御隠居さん」

 仕方がないので、わたくしが床を延べまして、御老公を無理やり寝かせ、女房をそっと部屋の隅へ呼び寄せました。

「おめえ、あの爺さんをどう思う」

「どう思うったって、言っちゃ悪いが、随分汚いお爺さん」

「しいっ、声が高い」

「ふん、病人ならなおさら気味が悪い。コロリだったらどうする気だい」

「ちぇっ、女子と小人は養いがたしとはこのことだな。汚いなりはしているが、あのお方こそ、畏れ多くも天下の副将軍、御三家水戸の御老公様だ」

「何言ってるんだい、しっかりおし。おまえさん、悪いもんでも食ったのかい」

「馬鹿野郎。昨日、を組の頭が来て、御老公捜しを頼まれたんだ。運のいいことにすぐ見つかった。頭の言ってた人相と寸分の狂いもねえ。俺はこれから頭んとこへ知らせに行くから、おめえ、粗相(そそう)のないように、御老公様のお世話をしろいっ」

「じゃ、ほんとに御老公様なのかい」

「嘘や冗談でこんなことが言えるか」

「ひええ、どうしよう。あたしゃ、汚いお爺さんだなんて言っちまった。後でお手討ちにならないかねえ」

「そんな心配はしなくていいや。それより、ひとっ走り、頭のとこまで行って来るからな」

「ちょいとお待ちよ」

「なんでえ」

「頭に知らせたら、どうなるんだい」

「そりゃ、すぐに水戸様からお迎えが飛んで来て、礼金ぐれえ、たんまりありつけるだろうな」

「おまえさん、頭に知らせるのは、少しお待ち」

「馬鹿なこと言うない。先様はどんなに気を揉んでらっしゃるか。一刻も早くお知らせするのが親切てもんだ」

「あたしゃ、何も知らせるなとは言ってないよ。今、お疲れでお休みの御様子だ。頭に知らせて、すぐにお迎えが来れば、確かに水戸様から礼金は貰えるだろうが、それだけの話じゃないか。あたしにいい思案が浮かんだんだ」

「いい思案だと」

「そうだよ。ね、お目覚めになったら、ここでおいしいもんでも召し上がっていただこうよ」

「まあな。御老公様だって腹は減るだろうからな」

「おまえさんが御身分に気づいたこと、あちらは御存じなのかい」

「いや、人目があるから、俺は空とぼけて、病人を介抱するように見せかけ、ここへ連れて来たんだ」

「そりゃ、よかった。このまま素知らぬ顔をしてるんだ」

「なんで」

「考えてもごらんな。水戸の御老公様と知った上で親切にするのは、これは当たり前だ。誰だってそうするよ。

 ところが、見ず知らずの薄汚い年寄りを親身に世話する。なまなかじゃできない話だよ。

 旅のお大師(だいし)様を手厚くもてなしたら、その見返りにたんまり福が授かったてな話、おまえさん、聞いたことないかい。とぼけたまんま御老公様に恩を売る。町人にも似合わぬ見事な真心。ああ、世の中まだまだ捨てたもんじゃないと思わせればしめたもんさ。それから、頭に知らせたって遅くはない。

 後日、この家の前に黒塗りの御駕籠(かご)が止まるよ。すうっと戸が開くと目の覚めるような錦の筒袖をまとった御老公様。いつぞやは大儀であったとお声がかかり、御褒美の小判がざっくざっく、うまくすればおまえさん、士分に取り立てていただいて、お扶持(ふち)がいただけるかもしれないじゃないか」

 わが女房ながら、いやになりました。女というものはなんと浅ましく欲の深いものでしょうか。

「そうだな。じゃ、鰻でも(あつら)えろ」

「相手は御老公様だよ。鰻なんぞ食い飽きていなさるんじゃ」

「なら、鰯のぬた」

「そんな下々のもの、召し上がるかねえ」

「なんだっていいやな。うまいもんをそろえて、いい酒を用意するんだ」

 そうこうするうちに御老公、お目覚めになりまして、女房のお富は掌を返したように、用意した御馳走でもてなします。

「親分、いますか」

 聞き覚えのある声がしましたので、出てみると、伊之吉(いのきち)という四角い顔の下駄屋が立っております。

 普段は顔を看板に下駄売りですが、御用の時は仙太同様わたくしの手下を務める男です。

「おう、伊之か。どうした」

「連れて来ました」

「連れて来たって、誰を」

「さっ、こちらへどうぞ」

 伊之吉が声をかけると、ひとりのぼおっとした年寄りが杖を頼りによたよたと入って来ました。

「どなただい」

「いえね、親分。実は仙太兄いに頼まれて、水戸の御隠居を捜し回ってたんですが、この通り見つけたんで、お連れしました」

「なんだと」

 仙太の野郎、あれほど他言無用と念を押しておいたのに、伊之吉に(しゃべ)ったらしい。

「このお方が、水戸の御隠居様です」

 見れば薄っぺらい野良着で白い髭、髪も真っ白、腰の曲がり具合は還暦どころか、どう見ても喜寿という見当。

「本当にこのお方が御老公様なのか」

「いえね、お忍びだから、御本人はそうとはおっしゃらねえが、あっしの睨んだところじゃ、ほぼ間違いありませんや。動かぬ証拠が、ほれ、この白い天神髭」

 伊之吉はそう言い張るが、わたくしにはとてもそうは見えません。本人に聞くのが一番手っ取り早いでしょう。

「おめえさん、ひょっとして、水戸のお方ですかい」

「ひええ、あっしいのことでやすかなあ。うんにゃあ、いっこうわけえわかんねえだあ。こっちのあにさあが、ちょっくらこうちゅうでえ、むげえにことわるのもわるかんべえとお、ひかれるまんまあにい、めえったようなわけがらでえ、はあ、あんでやすかやあ」

「おい、伊之、いけねえよ。何を言ってるのか、さっぱりわからねえ。人違いだよ。どうもとんだ失礼をいたしました」

 年寄りはぶつぶつ言いながら帰って行きます。本物の御老公は家の中でわたくしの女房を相手に鰻で一杯、御酩酊の御様子。本物が家にいらっしゃる以上、誰が来たって人違いに決まっております。

「伊之、いくら野良着で白い髭だといっても、あれは何だよ。姿形はどこぞの田舎親爺だが、言葉はまるで黒船の異人じゃねえか」

「いえね、あっしもおかしいなとは思ったんですが、お大名の言葉なんてじかに聞いたことありませんから、あんなもんかと」

「第一、年を取り過ぎてら。お目当てのお方はもう見つかってるんだ」

「へえ、もう。さすがは親分だ。手が早え」

「おかしな言い方するない。それより、おめえ、仙太から聞いたと言ったが、御老公の一件、他に漏らしゃしめえな」

「ええ、それなら心配ありません。梅の野郎にしか伝えちゃいませんから」

「おめえ、梅にしゃべったのか」

 仙太ひとりに打ち明けた話が伊之吉に漏れ、伊之吉から梅太郎(うめたろう)に漏れているらしい。梅太郎というのはわたくしの子分の中でもとりわけ口の軽い男です。

「言っちまったものは仕方ねえが、おめえ、すぐに仙太と梅太郎を取っ捕まえて、連れて来い」

 伊之吉は大慌てで駆け出して行きました。御謹慎中の御老公がお屋敷を脱け出したなんて噂が広まっちゃ一大事、御公儀から水戸様にどんなお咎めがあるかしれません。こうなったら、御老公にすべてを打ち明け、一刻も早くお屋敷へ帰っていただくのが一番です。

 家の中から女房の笑い声が響きました。

 

「おい、御機嫌だな」

「御隠居様ったら、ほんとにさばけたお方なんだよ」

「こんな鰻じゃお口に合いますまいが」

「いやいや、さすがは江戸前の鰻やのう。京の鰻もなかなかのもんやが、これはまた格別の味わいじゃ」

 やはり、お大名などは、贅沢な京の料理を食べ慣れておられると見えます。

「それはそうと、今、表で声がしたようなが、どなたか見えられましたかな」

「いいえ、どうってことねえんです」

「なら、よいのやが、見ず知らずのお方にこないに親切にしていただくやなんて。心に(おご)りを知らず、人に尽くして世を渡る。ああ、尊い、尊い。わしも久しぶりで気が晴れました。あなたさん、さぞや名のあるお方とお見受けいたします」

「とんでもねえ。あたしなんぞ、ただの御用聞でございます」

「御用聞とおっしゃると」

「うちの人、お上の十手をお預かりしておりましてね」

「なんじゃと」

「これでも、今まで数え切れないほどの手柄を立てているんです。生半可なお侍より、よほど腕だって立つんでございますよ」

「こら、お富、よさねえか。余計なことを」

「すると、何ですかいな。こちらは名のある親分さんで」

「そんな、親分だなんてもったいねえ。実を申せば、鉄砲の弥八というけちな野郎でさ」

「ひええっ、鉄砲の弥八とな。それではあの、血達磨(ちだるま)太郎兵衛(たろべえ)藪蛇(やぶへび)民蔵(たみぞう)脳天(のうてん)安五郎(やすごろう)をお縄にした」

 驚きました。確かにそれらの盗賊どもを召し捕った手柄は世間の評判になりましたが、水戸の御老公様が下々の盗人の名前にまで詳しく通じておられるとは。

「御隠居、盗人どもの名前をよく御存じで」

「いやあ、そういうわけやないが」

「まあ、御隠居様。うちの人が召し捕ったのは、それだけじゃございません。あの大泥棒、鼠小僧(ねずみこぞう)次郎吉(じろきち)、あれを捕らえたのがうちの人なんです」

「ひええっ、鼠小僧」

「こらっ、御隠居にそんな不浄の賊徒の名前なんかお聞かせするんじゃねえ」

 御老公、鼠小僧と聞いて、急に気分を損ねられた様子。顔色が紙のようです。

「てめえが余計なことを言うから、ほら、見ろ。御隠居様の具合が悪くなったらどうするんだ」

「いやいや、大事ない。そうじゃ。わしは用を思い出した。ここらでおいとまさせていただきまひょ」

「駄目ですよ。そんな青い顔なすって。もうしばらく」

「いいや、もう行かんならんのや」

「いいじゃございませんか。ねえ、おまえさん。いいだろう。こんなにお酒も残ってるんだからさあ」

「馬鹿、ほどほどにしろ。あんまりお引き止めしても御迷惑だ。しばらくお休みいただいたら、俺がそこまでお供しよう」

「道なら承知しております。親分さんのお手を煩わせては」

 ひとりでふらふらと出て行かれて、また行方知れずになられては元も子もないので、ここはひとつ、わたくし自身、辰五郎のところへ送っていくしかありません。

「親分、あっしです」

 表で仙太の声です。

「来やがったな、片口鰯め」

 仙太は面目なさそうに首筋を撫でております。

「おめえ、ひとりか。伊之はどうした」

「梅太郎を捜しに行きました」

「そうか。それにしても、何だって、伊之の野郎に漏らしたりしたんだ」

「それがね、親分。両国まで行く途中、バッタリ伊之に出くわしましてね。何を急いでるんだて聞きやがるから、親分の言いつけだと言ったら、野郎、おとなしく鼻緒でもすげてりゃいいのに、手伝わせろって言うんです。こればっかりは固く口止めされてるから駄目だって突っぱねたんですが、水くせえとか何とか抜かしやがるんで、ついぽろっと」

「しょうがねえなあ。おめえが余計なこと言うから、伊之が梅太郎に漏らしちまったじゃねえか」

「そうですってねえ。よりによって梅の野郎に漏らすなんて、とんでもねえ。あいつはお披露目の梅太郎てぐれえ、口の軽い男なんですから」

「おめえとどっこい、いい勝負だ」

「勘弁してくださいな。それより、例のお方、もう見つかってこちらにおいでとか」

「障子の隙間から拝んで見ろ」

「あれえ、小汚え爺さんだなあ。あれがひょっとして」

「そうとも。天下の副将軍、前の中納言、水戸の御老公様だ」

「へええ、確かに髭は白いが、人は見かけによらねえもんだ。ところで、親分、今、表通りの上総屋(かずさや)で何かごたごたしてますぜ」

「何かあったのか」

「どうやら、旦那が亡くなったらしいんで」

「馬鹿言え。上総屋の旦那なら、一昨日、道で会って挨拶したが、ぴんぴんしてなさった」

「どうも、コロリらしいんですよ。朝ぴんぴんしてた人が夜はコロリと死んでるなんて話はざらですから」

 とうとうコロリがこの近所までやって来たか。上総屋は大店(おおだな)の米屋で、わたくしには大事な出入り先ですから、旦那が亡くなったと聞いては、知らん顔はできません。

「おい、お富、上総屋の旦那がいけないそうだ。ちょっと様子を見て来るから、御隠居のお相手、粗相のないように頼んだぜ」

「お取り込みなら、わしもここらでおいとまを」

「いいえ、御隠居様、あたしはすぐに戻って来ます。そしたらどちらへでもお送り申し上げますから、今しばらくの間、お待ちになって」

「いえいえ、そうもしてはおられんのじゃ」

「そうおっしゃらず、おい、お富、何してんだよ。ぼやっとしてねえで、早く御隠居様にお酒をお()ぎしねえか」

「気がつきませんで。さ、御隠居様、どうぞおひとつ」

「おっとっとっと。お内儀は勧め上手、昼間から、ええ機嫌になってしもうた」

「じゃ、ちょっと行ってくらあ」

御老公がひとりで脱け出さないよう仙太に見張りを言いつけまして、わたくし、取るものも取りあえず、上総屋へまいりますと、さすが大店だけに大層な人です。

 

「これは親分、お忙しいところ、どうも」

 顔見知りの番頭がわたくしを見つけ頭を下げます。

「ええ、このたびは、どうも。驚きました。旦那とは一昨日、道で声をかけていただいて、お元気そうな姿を拝見しておりましたのに。今夜、お通夜ですか。その時はまたお手伝いに参上しますが、ともかくお線香を」

 紋切り型の挨拶を交わしておりますと、ぎゃあという悲鳴が奥から聞こえました。

「番頭さん、大変です。裏庭で」

 小僧が血相変えて番頭を呼びに来た。わたくしも商売柄、放っておくわけにも行かず、番頭の後に続いて裏庭に走り出ました。

「どうしたんだ」

「あっ、これはこれは親分さん。ちょうどいいところへ」

 薪ざっぽうを手にして肩を震わせているのは、下働きの婆さんです。見れば、その横に汚い身なりの男がひとり、頭を抱えて倒れております。

「婆さん、おめえがそいつで殴り倒したのか」

「ええ。今日はお(とむら)いの準備で家の中はごたついてます。

 あたしもまだまだ若いもんには負けちゃいません。ご飯を炊く薪が切れたので、柴小屋まで取りに来たんですよ。薪を手に戻ろうとしたら、米俵の上に何やら汚いものが置いてある。あたしゃ、ちょいと目が遠いもんだから、何だろうと思って近づいてみると、汚い爺ィが俵の上に腰を下ろしているじゃありませんか。

 お米は天下のお宝、そこへ汚い尻を乗せるとは何事かと、思わず手にした薪でゴツンと」

 なんとも乱暴な話です。

「おいおい、女だてらに、そんな危ない真似をしちゃいけねえや。打ちどころが悪いと、おめえ、後ろに手がまわるよ。で、この爺さん、いったい誰だい」

「さあ、見たこともない爺ィですね」

 倒れているのは薄汚い野良着を羽織った六十前後の百姓親爺です。

「おめえ、さっき、米は天下のお宝と言ったな」

「ええ、その天下のお宝に汚い尻を乗せていたから、あたしゃ、ついカッとなって。それにしたって、親分、米俵に腰を下ろすお百姓なんて、聞いたことがありません」

「この爺さん。百姓親爺に見せちゃいるが、ただの鼠じゃねえな」

「へえ、そうですか」

「考えてもみろ。本物のお百姓なら、丹精込めて作った米、それの詰まった俵の上に、腰なんぞかけるわけがねえ」

「そりゃそうですけど」

「葬いの準備でごたついている家へ、野菜売りの百姓を装って入り込み、金目のものを狙ってやがったに違えねえや」

「じゃ、泥棒ですか。それにしても小汚い泥棒ですねえ」

「見咎められても、この格好じゃ、迷い込んだ田舎もんがまごついてるようにしか見えねえだろうが」

「なるほど、考えやがったな」

 そうなると、この田舎親爺、巧妙な手口から見て、その正体は近頃江戸を荒らしまわっているという上方の盗賊、冥土の藤兵衛に違いありません。

「婆さん、大手柄だぜ。後で御褒美が出るかもしれねえ」

「うーん。ここはどこじゃ」

 冥土の藤兵衛、ようやく気がつきました。

「てめえのような悪党をのさばらせちゃ、江戸っ子の名折れだ」

「わからん。わしはどうなったのじゃ」

 打ちどころが悪かったのか、冥土の藤兵衛、しばらくぼんやりとしておりましたが、薪を手にした婆さんの姿を目にするや、よほど怖かったのでしょう。わっと叫んでいきなり駆け出しました。逃がしてなるものか。

「こいつ、神妙にしやがれ」

 わたくし、懐の炒り豆を、藤兵衛の頭に力いっぱい投げつけました。

「こりゃたまらぬ。ややっ、つぶてと思えば、なんと堅豆。打物わざにてかなうまじ」

世迷(よま)(ごと)もいい加減にしねえか」

 蹴倒し、ぎゅうっと縛り上げ、店の外へと引っ立てました。

「親分、大変だあ」

 仙太が駆けて来ます。

「どうした、仙太。こいつを見ろ。上方の大泥棒、冥土の藤兵衛をお縄にしたんだ」

「そいつはお手柄でしたねえ。だけど、親分、それどころじゃありませんぜ。御老公が御乱心なすって、おかみさんに包丁突きつけて」

「なんだと」

 わたくし、藤兵衛を引っくくった縄尻を仙太に預け、一目散に家へと駆け戻りました。家の周りは人だかりができております。

「あ、弥八さん、御老公様が大変だよ」

 近所のおかみさんがわたくしの袖を引っ張ります。

「なんだって。お竹さん、おまえ、御老公のことを誰から聞いたんだ」

「みんな知ってるよ。今朝、お富さんが鰻屋で喋ってたから」

「けっ、あいつ。それより、この騒ぎは」

「あたしもよくは知らないが、御老公が暴れているとか」

 下手に飛び込んで女房の身にもしものことがあっては大変ですから、わたくし、そっと障子の破れ目から中を覗き込み、お富に声をかけました。

「おい、大丈夫か」

「おまえさんかい。何をぐずぐずしてんのさ」

 さっと障子が開いて、包丁を手にしたお富が顔を見せました。部屋の隅では御老公がうずくまり、青い顔をしてぶるぶる震えております。

「いったい、何があったんだ」

「おまえさんが上総屋さんに出かけてすぐ、御老公がどうしてもここにはいられない、出て行くとおっしゃるんだよ。おまえさんの留守にいなくなったんじゃ、せっかくの思案が水の泡じゃないか。行く、行かせないで押し問答していると、外が何やら騒がしいのさ。家の周りに人だかり。どこでどう聞き込んだのか、御老公様を一目拝もうと、近所の連中が押しかけて来たらしい」

「おめえが鰻屋で言い触らしたんじゃねえか」

「ちょいと口が滑っただけだよ。で、あたしも腹をくくり、御老公様に、どうやら正体がばれたようですよ。そう言ったとたんに、御老公、かあっと目を見開いて、台所に出してあった包丁を手に暴れるから、何すんだい、この爺ィってんで、腕をねじふせ、包丁を取り上げたところへ、おまえさんが帰って来たのさ」

「馬鹿野郎。おめえの体はどうでもいいや。御老公にもしものことがあったら、俺たちゃ、三尺高いところへ首を(さら)さなきゃならねえんだぞ」

「ええっ、そうだったね。はははあ、御無礼の段、何とも恐れ入りたてまつりました。この上は御憐憫(ごれんびん)をもちまして」

 包丁を投げ捨て、女房は額を畳にこすりつけて、ひれ伏しました。

「親分、大丈夫ですか」

 仙太の声がします。

「この爺ィ、もたつきやがって、足のとろい泥テキだよ、まったく」

「おい、仙太、駄目じゃねえか。そんな汚らわしい縄付きを御老公の御前近くに連れて来ちゃ」

「あ、すいません。あたしもあんまり慌てたもんだから、つい引きずって来ちまいました。すぐに番屋に預けてきます」

 その時、表で威勢のいい大声があがりました。

「弥八つぁん。いるかい。水戸の御老公が見つかったそうだが、本当か」

 を組の辰五郎、若い火消しを大勢引き連れまして家の前に立っております。

「さすが、弥八つぁん。大手柄だ。これはこれは、水戸の御隠居様、はははあ」

 入って来るなり、辰五郎、何を思ったか、土間に突っ立たせておいた冥土の藤兵衛の前に這いつくばりました。

「いやですよ、頭。御老公様はあちらですよ」

 部屋の隅を辰五郎はちらりと見ましたが、やはり、盗人藤兵衛の前に這いつくばったまま。

「何言ってるんだ。自分で見つけておいて、あちらもこちらもねえや。それにしても、やり過ぎだぜ。御老公様に縄を打つやつがあるかよ。また逃げ出されちゃ、日本国の大事だてえ気持ちはわかるが」

「え、それじゃ、こちらが御老公様。すると、あっちの爺ィは誰だろう」

「しっかりしろ。このお方こそ、天下の副将軍、(さき)の中納言様にあらせられる。おめえたち、()が高い。控えろ、控えろ、控えおろう」

「へへへえ」

 水戸斉昭公の前で、辰五郎をはじめとして、を組の火消したち、町内のかみさんたち、縄尻をつかんだままの仙太までがいっせいにひれ伏しました。

「おい、おめえらも控えねえか」

 ぽかんとしている女房と爺さんを土間に引きずりおろして、わたくしもまた、土に額がすりむけるまでこすりつけました。

 

「大泥棒冥土の藤兵衛と思い込み、米屋で捕縛したお方こそ、誰あろう、水戸の御老公その人だったのです。

 弥八一生の不覚でした。

 逃げようとした御老公に豆鉄砲までぶつけたのですから、後でどんなお咎めがあるかと案じておりましたが、薪で力いっぱい頭を殴られたためか、縄を打たれた前後のことは御老公自身、まるっきり御放念らしく、かえって無事に見つけ出してくれたと、水戸様から過分の御褒賞を賜りました」

「そうでしたか。どうなることかと手に汗握りましたが、水戸烈公、無事で何よりでしたね。それにしても、野良着姿でお忍びとは、随分と人騒がせな御老公だな」

「そのことにつきましては、後に辰五郎を通じて詳しい事情がわかりました。本当のところ、御老公はお忍びではなかったのです」

「と言うと」

「御老公は畑仕事がお好きで、お庭に野菜を育てておられました。お側付の御家来がちょいと目を離した隙に、下肥(しもごえ)を汲みに行かれたのですが、これをたまたま新参の中間(ちゅうげん)見咎(みとが)めまして、葛西(かさい)あたりの百姓がお屋敷に紛れ込んだと勘違いし、どやしつけ、外へ叩き出してしまったというのです」

「御老公をですか」

「御老公は御自分は水戸の隠居だ、前の中納言だとおっしゃったが、有無を言わさず裏門から放り出されてしまわれました。表門に回ったが、顔を見知っている門番があいにく不在で、そこでもまた追っ払われた。

 しばらく外をうろうろされたが、日は暮れるし、腹は減るし、小石川のお上屋敷まで行けばなんとかなるかと歩いて行かれたが、上屋敷だけに門番の顔が人一倍いかつく、気後(きおく)れしてしまって近づけない。

 腹が減ったからといって、銭などもとよりお持ちになったことのない御身分、寒い時節じゃありませんから、橋の下で夜明しされて、三日の間、飲まず食わずで町をほっつき歩き、米屋の裏口から煮しめの匂いが漂っているのに誘われ、開いている戸口からふらふら入って、落ちている米粒を拾い集め、米俵の上に腰掛けてかじっているところを、婆さんに見つかって薪で頭をどやされたというわけでございます」

「それじゃ、下手をすると、御老公こそ行き倒れ寸前だったのですね」

「本当に御無事で見つかってようございました」

「行き倒れといえば、例の御老公と野良着から白っぽい髭まで寸分変わらぬ老人はどうなりました」

「気の強い女房に包丁を突きつけられたその上に、水府御前と紛らわしいのは太い爺ィだというんで、火消しの連中に(ののし)られ、ほうほうの(てい)で逃げて行きました。気の毒な気もいたしますが、極上の鰻を食わせてやったんだから、よしといたしましょう」

「なるほど。ああ、そうだ。例の盗賊、冥土の藤兵衛は捕まったのですか」

「わたくしが睨みをきかせていたからかどうか、とうとう尻尾を出しませんでした。あれだけ猛烈な勢いで江戸を襲ったコロリの方も、冬が来ると下火になり、葬いもだんだんと少なくなりましたので、いずれ江戸を去ったものと思われます。

 名のある盗人だけに、ぜひ、このわたくしの手でお縄にしたかった。取り逃がしたのは何としても残念でございます」

「御老公の頭の傷は、その後」

「すぐに御回復なさったと聞いております。ただ、野良着姿で出歩かれたという噂は相当に大きく広がりました。

 わたくしの子分の仙太が喋る。伊之吉が喋る。お披露目の梅太郎が喋る。女房のお富が喋る。近所の者が喋る。コロリじゃありませんが、あっという間に江戸市中、隈なく知れわたっておりました。

 事情はどうあれ御謹慎の身でお屋敷の外を出歩かれたのは紛れもない事実。それがために、お国元での永蟄居(ながちっきょ)という厳しい御沙汰となり、翌安政六年、江戸から三十里も離れた水戸へとお発ちになりました。

 その次の年、犬猿の仲だった井伊掃部頭様が桜田門で斬られなすったので、御老公もいよいよお戻りかと思っておりましたが、間もなく掃部頭様の後を追うように、あちらで大往生を遂げられたと聞いております。

 これらの噂がやがて講釈師の耳に入り、尾鰭がついて作られましたのが、御承知の『水戸黄門漫遊記』一席でございます」

 

 

日本ペンクラブ 電子文藝館編輯室
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飯島 一次

イイジマ カズツグ
いいじま かずつぐ 作家。1953年大阪府生まれ。著書に『阿弥陀小僧七変化』シリーズ等。

掲載作は短編小説集『ふたり鼠 鉄砲の弥八捕物帳』(2010年、KKベストセラーズ刊)より著者自選。

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