最初へ

微苦笑

基地の中から歯をむいた赤ずきん

 

君が代の他は聞こえてこぬ音痴

 

おかしいぞ女房明日から家にいる

 

シュレッダーに首を差し出す民主主義

 

三党が同居危ない雑居ビル

 

ふところは無限テレサの長い道

 

永田町迷彩服がよく似合う

 

コンドーム持参で歌う海征かば

 

プリクラでヌードを写す人はない

 

グリムより恐ろしい政界の童話

 

懇親会見飽きた顔とまた出会い

 

漱石に下駄を預けて風は死ぬ

 

閻魔さまの話首相は信じない

 

下手な字が相田みつをと間違われ

 

チャップリンが主演しそうな全自動

 

リストラになって足向く泉岳寺

 

ぼけてると言ってもうなずいてはならぬ

 

古墳から発掘されたポリグラフ

 

卒業式に配る予定の猿ぐつわ

 

試供品だけで治った軽い風邪

 

馬鹿でない証拠の風邪を自慢する

 

大鳥居くぐると歩調とっている

 

口数が少なくなって抱く殺意

 

アメリカの首輪を嫌う自爆テロ

 

リストラの鞄で眠る『幸福論』

 

レンジさえあれば女房など要らぬ

 

真珠湾の形状記憶ニュ−ヨーク

 

単身赴任妻よアコムをしてますか

 

ケイタイが歩くと私語も落ちている

 

ネコを抱く要領で孫を抱き

 

日替わりの上司の機嫌皿に盛る

 

アメリカへ餅つきに行く軽い乗り

 

五線譜に乗らぬ痛みを歌わせる

 

ライバルの花輪に喪章つけておく

 

報復も匍匐もごめん戦中派

 

割り箸を割ったとたんにもう忘れ

 

長生きをするため猫を飼い始め

 

難民に指定されそうぼけ進み

 

形状記憶彼の愛撫は型通り

 

お祭りへ恋の予感の女下駄

 

若ぶった顔で目やにを拭いている

 

九州より安いハワイの旅へ飛び

 

米百俵盗む気でいる反主流

 

削除キーまだ見つからぬ雇用危機

 

マニュアルをはずれたママの迷子札

 

流しソーメンついでに入れ歯洗っとく

 

急ぐから特急にして乗り過ごし

 

切取線のあたりを歩く民主党

 

妻の留守ネコと枕を共にする

 

ど忘れの妻を叱るのを忘れ

 

悲しくて嬉しい古書の値が下がり

 

八月の記憶に残る生返事

 

散歩する時は頭を置いて出る

 

戒名に使う金なら飲んでおく

 

虫けらのように殺され祀られる

 

沢庵だけ褒めて女房に睨まれる

 

白昼に闇を干してる永田町

 

気の毒な婿どの外務省勤務

 

赤ん坊のヌードは微笑誘うだけ

 

司会者に頭の中を覗かれる

 

死ぬために病院に行くーいいのかな

 

ハニホヘトだった戦時中の戯画

 

九条を真ん中に置くアリと象

 

著者自身忘れています著書多数

 

ハンセン病ぼくも共犯者の一人

 

ご無沙汰はしないメールの二十五時

 

生前葬してから生気取り戻す

 

リカちゃんの離婚も視野に入れておく

 

健康のために入れ歯と遊ぶ胡麻

 

大江戸線どこで降りても排気ガス

 

組合も消えアジビラも壁に褪せ

 

首都美化のポスターちぎれ街に舞い

 

ハローワークに落ちていたコロンボのコート

 

喜んで糾弾される非国民

 

ポイ捨ての中に夫も入ってた

 

常識の寝首を非常識が掻く

 

ひょっとして今は戦前かもしれぬ

 

婦人科はもしや男女の差別では

 

留学の土産は青い目のベビー

 

一本の藁踏み砕く装甲車

 

パソコンの裏切りに逢う締め切り日

 

喧嘩するために夫婦は対話する

 

マラソンゲート足は大地と対話する

 

日に三度食える自分だけの平和

 

他人から余生と言ってほしくない

 

通じないんだな説教の四文字語

 

外人が来ると無口な英文科

 

捨てる技術妻に応用できまいか

 

遺言を風の余白に書いておく

 

蹴飛ばしてから沖縄の頭なぜ

 

敗戦の日のときめきはなんだろう

 

ラーメンで勝負メニューは置いてない

 

無駄にするために掛けてる癌保険

 

料亭で並ぶ目刺しは羽織着る

 

復讐のように床蹴るフラメンコ

 

あてつけで閉めた障子で手をはさみ

 

回転寿司胃酸の皿もついてくる

 

タイタニック映画で見れば面白い

 

政権の授受家政婦も見ていない

 

公害のリストにクサヤ見つからず

日本ペンクラブ 電子文藝館編輯室
This page was created on 2002/03/04

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速川 美竹

ハヤカワ ミタケ
はやかわ みたけ 川柳家 1928年 兵庫県神戸市に生まれる。

掲載句は電子文藝館のために自撰。

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