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詩集『刻(とき)』(抄)

もう いいじゃないですか

大地震と津波

全てを破壊し 飲み込んだ

未曾有の犠牲者

まだ 行方不明の方

現代文明の中に居ても見つからないでいる

遺族の心境 他人は語ることができない

局地的な大雨

土石流が発生

また 犠牲者が出た

 

御嶽山の噴火 火山灰が降り積もる

また 犠牲者が出た

 

今までの歩みを反省しています

使い捨て 浪費癖

もったいないという精神 地球温暖化への配慮

怠っていました

自然破壊 最小限にすべきだったと

 

日本人 心を入れ替えます

ですから もう

天罰を与えないでください

私たちは 天災を

どうすることもできないのです

逃げるしかないのです

命を守るために訓練もしています

地域の一人として お互い助け合っています

 

一心に

愛する日本

そこに住む家族 守らなければならない

ただそれだけだ

 

七十年後 百年後に

そんな若者がいた

知ってもらわなくてもよい

平和であれば

 

危倶することがある

殺人事件や自死

死体遺棄や死体の切断

そこまでやるのか 今の日本人

 

戦死した若者たち どんな思いだろう

今の日本の情勢

情けないと

 

逆境の中

もがき苦しみながらも

一筋の光を求めた

側に居たのは

近所の人 肉親 友人であった

 

戦争を風化してはいけない

天災を風化してはいけない

与えられた命 閉じるまで

一生懸命に 精進し努力し

生かされなければ

戦死された方々

申し訳ない

 

生き切る

語りかける知らぬ人に

気分を害さないように 勇気を持てるように

言葉を紡ぐ

 

老若男女 老少不定

明日 どんな風が吹いても 強烈な天災が起きても

大事故が連続しても言葉を紡ぐ

 

前向きに プラス思考で

まだ見ぬ人のためにも

末期ガン患者のためにも

言葉を紡ぐ

 

できることは 今やるしかない

後はない

そんな決心で 感情を吐露する

言葉での伝言

 

ふつふつと

風呂に入った時 「けっこうやよ」

車を運転している時 〇〇ちゃんの家やよ

墓参りに行った時 横の墓が〇〇家のがよ

 

一年一年と 体力が低下していった

話をしなくなり

寝ていることが多くなった

まさか これが現実だとは思いもつかなかった

 

人は老化する

病気になり 死んでいく

自然なのだが 心情は起伏が激しい

思い出の場所 発した言葉

身振り手振り

ゆっくりステージが活動する

ああ そうだったな

今なら理解できるな

これで良かったのかな

とめどなく 映像が流れてくる

淋しさからの脱却か

なかなか消えていかない

 

 

日本ペンクラブ 電子文藝館編輯室
This page was created on 2018/09/03

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道元 隆

ミチモト タカシ
みちもと たかし 詩人。富山県生まれ。主な著作は詩集『Rルート156』(北國新聞社)。

掲載作は詩集『刻』(2015年10月、土曜美術社出版販売刊)よりの著者自身による抄録である。

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